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自然エネルギーは、政策によって普及のための前提条件を整えることで多様なステークホルダーが市場に参入し、導入が加速します。目標値の設定、固定価格買取制度をはじめとする規制、税制措置、情報キャンペーンといったさまざまな政策手法を組み合わせ、国・地方自治体・地域コミュニティのそれぞれで取り組みを進めていくことが必要です。ISEPは、国内外の研究者、実務家と共に自然エネルギー政策の研究・提言を進めています。

【速報】日本国内の電力需給(2019年)における自然エネルギー割合

【速報】日本国内の電力需給(2019年)における自然エネルギー割合

認定NPO法人環境エネルギー政策研究所
2020年2月18日

今年2020年は日本でも電力自由化が進みつつある中で、全ての電力供給エリアで法的な発送電分離が行われ、発電や電力小売りを行う部門と一般送配電事業を行う部門が別会社になる。さらに環境価値などを扱う非化石価値市場や電力システムの調整力を担う需給調整市場などが整備されていくといわれている。その中で電力需給データ等の電力システムの情報開示を出来るだけ早くわかり易く行うことが求められており、ISEPのEnergy Chartでは公表されたデータから様々なグラフでインタラクティブに分かり易くデータを分析できる[1]。電力市場が整備されている欧州ではすでにTSO(送電事業者)がデータをほぼリアルタイムで公表し、それらのデータをわかりやすく見える化するWebサイトも数多くある[2]

日本全体の電力需給での自然エネルギー割合

2016年度より一般送配電事業者から法令に基づき電力会社エリア毎の電力需給の実績データ(電源種別、1時間値)[3]が1か月遅れで数値として毎月公表されており、今年2月上旬に2019年末までの電力需給データが公表された。そこで2019年一年間の日本国内の電力需給データを自然エネルギーを中心に整理してみる。ここでは公開された電力需給データに基づき日本国内での系統電力需要に対する自然エネルギーの割合などを整理している。これまで2016年度(2016年4月)から毎月のデータを電力供給エリア毎に集計してきたが、今回は2019年(暦年)の一年間のデータを集計してみた。その結果、日本全体の電力需要に対する自然エネルギーの割合は2019年(暦年)の平均値では17.1%となり、2018年(暦年)の年平均16.5%から増加した。内訳としては水力発電が7.6%で最も割合が大きいが、前年の8.4%から減少している。一方で太陽光発電は7.2%となり、前年の6.4%から増加している。バイオマス発電も前年の0.7%から1.2%に増加し、風力発電も0.8%から0.9%とわずかに増加した。ちなみに2016年度の時点では自然エネルギーの割合は13.8%で、太陽光発電はまだ4.4%程度だった。

日本全体の自然エネルギーの電力需要に対する割合の月別の平均値では、2019年5月が24.2%と最も高くなっているが、前年の24.4%からわずかに減少している。この中でVRE(変動する自然エネルギー:太陽光+風力)の割合は12.6%となり、前年の9.5%から大幅に増加した。1日の平均では2019年5月2日に31.1%に達したが、VREについては5月5日の17.8%が最大で、前年の最大値16.5%から増加した。1時間値では同じ5月4日11時から12時台の62.9%が最高で、太陽光が50.5%に達しており、風力の0.7%と合わせてVREの最大値は51.2%になっている。これは前年の太陽光の最大値44.6%から大幅に増加しており、太陽光だけで初めて全国の電力需要の50%を超えた。

エリア別の自然エネルギー割合

電力会社(一般送配電事業者)のエリア別では、2019年(暦年)の電力需要に対する自然エネルギーの割合の平均値が最も高かったのは東北電力エリアの32.5%だったが、前年の29.4%からかなり増加した(図1)。この中で水力発電が14.8%と比較的大きな割合を占めているが、太陽光が前年の6.7%から8.3%に増加している。風力の割合も3.4%と全国の中でも北海道と並んで比較的高くなっている。バイオマス発電の割合も4.9%と高く、地熱発電も1.0%ある。東北電力では、1時間値で自然エネルギーの割合が最大98.3%に達した(2019年5月2日13時台)。このとき太陽光が52.2%、風力が11.3%とVRE比率も63.4%に達している。なお、2019年は前年の四国電力エリアの様に1時間値で自然エネルギーが100%を超えるエリアはなかったが、VRE比率の最大は四国電力の89.2%だった(2019年5月5日12時台)。

図1

図1: 電力会社エリア別の自然エネルギー系統供給率の割合(2019年) 出所:各電力会社の電力需給データより作成

北海電力エリアでは太陽光の年間平均6.1%に対して、風力の割合が全国的にも最も高く3.5%に達している(自然エネルギー全体の割合は21.9%)。東日本全体の平均では自然エネルギーの割合が16.1%と全国平均を下回っているが、東京電力エリアが10.8%に留まっていることが大きな要因となっている。この東京電力エリアでは太陽光が5.7%と水力の4.3%を上回っているという特徴がある。

前年に最も自然エネルギーの割合が高かった北陸電力では、水力発電の減少により年間平均は32.2%に留まった。自然エネルギーの割合で第3位の四国電力では、24.8%と前年と同じレベルだったが、VREの割合は12.7%と高く、前年の11.2%から増加した。中西日本全体では、自然エネルギーの割合は17.8%に達して、東日本の割合16.1%よりもかなり高く、VREの割合も8.5%と東日本の7.5%より高くなっている。

九州電力エリアと出力抑制

太陽光の割合が全国でも最も高いエリアになっている九州電力では自然エネルギーの割合は23.0%となり、前年の19.9%から大幅に増加した。特に九州エリアでは水力5.5%に対して太陽光が12.2%に達しており、変動する自然エネルギー(VRE)の割合も風力の0.7%と合わせて13.0%と全国で最も高くなっている。九州電力のエリアでは2019年12月末の時点でFIT制度によりすでに924万kWの太陽光発電が電力系統に接続しており、さらに接続承諾済みの太陽光が417万kWに達している。一方でベースロード電源として優先給電ルールに基づき出力抑制を最後まで行わない原子力発電の比率も再稼働により高めてきている。基本的に4基の原発(合計出力約400万kW)が稼働しており、定期点検などで一定期間停止する原発もあるが、2019年(暦年)の年間平均では需要に対して約34%に達している。月別では需要に対する原発の発電量の割合は2019年4月に最大で47.2%に達している(図2)。その結果、九州本土エリアにおいて2018年10月以降、本格的な太陽光の出力抑制が断続的に実施され、2019年の1年間では61日を数えた。そのうち2019年4月には20日の出力抑制が実施され、出力抑制率が最大で11.8%に達しているが、2019年1年間を通じた出力抑制率は2.8%になった。その後、太陽光の予測誤差を考慮したルールの見直しがあり、オンライン制御を優先して活用するルールになったため、2019年10月以降、出力抑制の頻度は従来よりも低下する傾向にある。当研究所では、この九州電力エリアでの出力抑制を回避するための提言[4]を行っているが、本来的な優先給電ルールの見直し(原発の運用、火力発電の最低出力など)や地域間連系線や揚水発電の活用などに加えて積極的なオンライン制御の活用、さらにはデマンドサイドの制御(DR)などの経済的な手法も活用できる可能性がある。大量のVREの導入に伴い九州電力で実施されている出力抑制は今後、他のエリアでも実施される可能性が高まっており、電力システム改革に伴う様々な環境整備の中で地域資源である自然エネルギーを活かすよりスマートな方策が求められている。

図2

図2: 九州電力エリアのVRE出力抑制率と再エネおよび原子力の電力需要に対する比率の推移 出所:九州電力データより作成

[1] ISEP Energy Chart https://www.isep.or.jp/chart/

[2] Agora Energiewende “Recent Electricity Data” https://www.agora-energiewende.de/

[3] 電力広域的運営推進機関(OCCTO) 系統情報サービス「需給関連情報/供給区域別の供給実績」 https://www.occto.or.jp/keitoujouhou/index.html

[4] ISEPプレスリリース「九州電力が再エネ出力抑制の前にすべき6つのこと」https://www.isep.or.jp/archives/library/11321

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