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自然エネルギーは、政策によって普及のための前提条件を整えることで多様なステークホルダーが市場に参入し、導入が加速します。目標値の設定、固定価格買取制度をはじめとする規制、税制措置、情報キャンペーンといったさまざまな政策手法を組み合わせ、国・地方自治体・地域コミュニティのそれぞれで取り組みを進めていくことが必要です。ISEPは、国内外の研究者、実務家と共に自然エネルギー政策の研究・提言を進めています。

エネルギー基本計画への意見 −「エネルギーコンセプト」の抜本的転換を

当研究所は、現在見直し中のエネルギー基本計画について、日本のエネルギー政策における「エネルギーコンセプト」の抜本的な転換が必要だと考える意見を以下に提示いたします。


私たち環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、日本のエネルギー政策における「エネルギーコンセプト」の抜本的な転換が必要だと考える。

指数関数的に拡大する太陽光発電や風力発電を筆頭とする分散型再生可能エネルギーの急速な本流化に加えて、電気自動車(EV化)を含めたエネルギーの分散化・人工知能(AI)化・デジタル化へのグローバルなエネルギー大転換は、ますます加速している。原発・石炭を軸とする旧来のエネルギーコンセプトにしがみついたままでの小手先の対応では、このエネルギー大変革の波にまったく対応できない。

2014年に閣議決定されたエネルギー基本計画の3年毎の見直しの時期を迎え、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会ではエネルギー基本計画の見直しの審議が行われている。一方、2016年11月に発効したパリ協定に基づき、日本からも2030年までの温室効果ガス削減目標(NDC)が国連に提出されているが、エネルギーについては2015年に策定された経産省の「長期エネルギー需給見通し」がベースになっている。さらに2020年までのなるべく早期に今世紀半ば(2050年頃)までの気候変動対策に係る長期戦略を提出する必要があり、環境省が長期低炭素ビジョンを2017年に取りまとめた。経産省でも長期地球温暖化対策プラットフォームにおいて取りまとめが行われており、引き続きエネルギー情勢懇談会において、長期的なエネルギー政策の方向性が議論されている。しかし、これらの審議会では、福島第一原発事故の教訓から学んでないばかりか、グローバルに進みつつあるエネルギーの歴史的な大転換に対して逆行しているかのような議論が進んでいる。

そこで、日本が目指すべき持続可能なエネルギーに向けた新しい「エネルギーコンセプト」への抜本的な転換のあり方をあらためて提言し、エネルギー基本計画への意見として提示する。

要旨

  1. 自然エネルギー・省エネルギー・地域主導を「三本柱」へ
  2. 省エネルギーの深掘りとトリプル・デカップリング(切り離し戦略)を
  3. 自然エネルギーを基幹エネルギーに位置づけインフラ整備を
  4. 地域主導・分散ネットワーク型エネルギーとデジタル化への大転換へ
  5. 「3.11福島第一原発事故」の教訓を踏まえた現実的な脱原発を
  6. パリ協定に基づき自然エネルギー100%への転換を目指すべき
  7. 情報公開と国民参加の開かれた議論の場が必要

1. 自然エネルギー・省エネルギー・地域主導を「三本柱」へ

グローバルに進みつつあるエネルギーの歴史的な大転換の「3本柱」は、第1に人類史「第4の革命」と呼ばれる自然エネルギーの飛躍的成長であり、第2に環境・エネルギー・経済のトリプル・デカップリング(切り離し戦略)を実現しつつあるエネルギー効率化であり、そして第3に大規模集中独占型から地域主導・分散ネットワーク型へのパラダイムシフトである。世界経済の成長にかかわらず2014年以降の3年間、世界のCO2排出量は増えておらず、自然エネルギーの飛躍的な普及により世界的な環境と経済のデカップリングが進んでいる[1]。さらに、自然エネルギーの発電コストは太陽光を中心に急速に低下しており、2016年の世界の自然エネルギーへの設備投資額は20%以上も減少したにも関わらず、年間導入量は過去最高を記録している[2]。エネルギー政策の基本的視点とされている「S+3E(安全性+環境・経済・安全保障)」の実現のためにも、巨大リスクを抱える原発への固執を止め原発ゼロを政策決定すると共に、自然エネルギーとエネルギー利用効率化を重視する地域分散型のエネルギーシステムへ転換すべきである。

2. 省エネルギーの深掘りとトリプル・デカップリング(切り離し戦略)を

3.11後の節電・省エネルギーの実績を踏まえた省エネルギーのさらなる深堀りが必要である。経産省の「長期エネルギー需給見通し」では2030年度の電力需要は2013年度の実績よりも増加しているが、意欲的な目標を伴うスマートかつ徹底した省エネにより3割以上の削減が可能であり、化石燃料の削減や省エネ投資による大きな経済効果も見込むことができる。2011年以降、毎年夏の最大電力需要時の10%以上の節電を達成しており、年間の電力需要量も5%程度削減している[3]。こうした成功を踏まえ、今後は「経済成長にはエネルギー消費量の増大が避けられない」という「神話」(ドグマ)から脱却する必要がある。

日本国内の建物の省エネルギーではさらなる規制強化が必要であり、すでにEUで実施されているような新築建物への省エネ基準適合の全面義務化、全ての建物への客観的な「エネルギー性能ラベリング」義務化、新築公共施設のゼロエネルギー化の早期義務化、既存建物の断熱改修の促進、自然エネルギー熱利用の義務化などの規制が必要である。

さらに、すでにEU各国だけではなく中国でも導入が進められている総量規制型の排出量取引制度(キャップ&トレード)や有効な環境税の導入(温暖化対策税の税率引き上げ)などのカーボンプライシングもデカップリングのためには重要である。

成熟社会の日本としては、環境・エネルギー・経済のトリプル・デカップリング(切り離し戦略)を目指すべきである。環境エネルギー政策で先行するドイツやデンマークなどの欧州各国では、1990年代以降、「エネルギー成長と環境負荷のデカップリング」「経済成長とエネルギー成長のデカップリング」「「豊かさ」と経済成長のデカップリング」というトリプル・デカップリング(切り離し戦略)の傾向がはっきりと見て取れる。

3. 自然エネルギーを基幹エネルギーに位置づけインフラ整備を

「純国産エネルギー」である自然エネルギーを基幹エネルギーに位置付け、発電量比率で2030年までに自然エネルギー50%以上とする意欲的な導入目標を定めるべきである。トリプル・デカップリングを前提に省エネルギーにより2030年までに約3割の電力需要の削減を行うとともに、自然エネルギーの発電量を3,500億kWh以上とすれば十分に可能な目標値である[4]。経産省の「エネルギーミックス」では2030年の自然エネルギーの導入見込量が太陽光の従前からの電力系統への接続可能量等の制約条件から6,400万kW相当という現在の設備認定量よりも低い設備容量となっている。しかし、JPEA等が提言しているように1億kWは十分に可能であり、長期的には2億kW以上を目指すべきである。風力発電については、1,000万kWという非常に低い導入量が設定されているが、すでに1,500万kWを超える事業の計画が東北地方を中心にある。膨大な導入ポテンシャルや将来のコスト低減を前提とすれば2030年までにJWPA等が提言しているように3,600万kWを超える目標を設定すべきであり、長期的には1億kW以上を目指すべきである。

これらの目標値を実現するためには、電力系統などのインフラ整備や規制改革など様々な課題を克服する必要があり、そのための新規の設備投資を必要とする。しかし、さまざまな恩恵のある自然エネルギーの導入「コスト」は、持続可能な未来を実現するためにインフラ投資として欠かせないと捉えるべきであるだけでなく、長期的な視点に考えれば、自然エネルギーが純国産でもっとも安いエネルギー源である。

系統接続問題に端を発して定められた太陽光発電や風力発電の「接続可能量」は、自然エネルギーを封じ込めるための「トリック」であり、撤廃すべきである。さらに、昨今の電力系統の「空き容量ゼロ」や高額な「工事負担金」は、従来の電力会社の系統運用ルールがベースになっており、大幅な見直しをした上で自然エネルギーを優先した大量導入を可能とし、長期的な電力系統の整備を進める必要がある。

さらに日本国内では、熱利用や運輸交通に関する自然エネルギーの導入が大幅に遅れており、そのための目標設定やインセンティブを与える政策(環境税などのカーボンプライシング等)、さらに熱供給や運輸での自然エネルギー利用のためのインフラ整備も重要である。

4. 地域主導・分散ネットワーク型エネルギーとデジタル化への大転換へ

世界全体で各地域のステークホルダーが関わる自然エネルギーによる地域主導・分散ネットワーク型エネルギー体制(ご当地エネルギー、コミュニティパワー)への大転換が進んでおり、日本でも会津電力(喜多方市)やほうとくエネルギー(小田原市)などそうした取り組みが全国各地で次々と広がってきている。2016年11月に福島県福島市で開催された「第1回世界ご当地エネルギー会議」[5]での「ふくしま宣言」や、2017年9月に長野県長野市で開催された「地域再生可能エネルギー国際会議2017」[6]での「長野宣言」では、地域主導のエネルギーへの取組み(ご当地エネルギー)の重要性が謳われている。その中で、コミュニティパワーとエネルギー自治の重要性[7]、地域の経済・雇用効果への大きな効果が期待されている。地方の創生のためにも、現状の集中独占型から地域主導・分散ネットワーク型への転換は避けて通れない。

また同時並行的に進展する電気自動車(EV)、とくに小型バッテリーの技術学習効果による急速な低コスト化や、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ブロックチェーン、ビッグデータ等を活用した「エネルギーのデジタル化」を考慮して、旧来の「大規模集中・独占型」のエネルギー産業構造からの構造転換を視野に入れることが欠かせない。

5.「3.11福島第一原発事故」の教訓を踏まえた現実的な脱原発を

3.11福島第一原発事故の教訓を踏まえた原子力政策の根底からの見直しが大前提となる。原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた国のエネルギー基本計画は、3.11以前の「原発神話」をそのまま復活させたものでしかない。

今なお混沌とした状況の続く福島第一原発事故の処理は、半永久的に続くおそれが大きい。また、事実上の倒産会社である東京電力も、今からでも破たん処理されるべきであり、経営者および規制当局の責任が追求されなければならない。さらに本来必要な水準の原子力損害賠償措置への見直しを踏まえれば、脱原発こそがもっとも経済的で現実的な選択肢であることは明らかである。

福島第一原発事故の被害とその根本原因を見据え、事故の実態や後始末の困難さや原子力規制の実態を深刻に考慮すれば、脱原発を前提とした原発ゼロ社会を目指すべきである[8]。そのための具体的な政策として「原発ゼロ基本法案」[9]を国会においてその実現に向けて真剣に議論すべきである。

さらに脱原発を前提に、廃炉や核のゴミ、実質的に破たんしている核燃料サイクルの後始末など原発が直面している難題に向き合って、国民的な対話で合意と改善を目指す必要がある。

6. パリ協定に基づき自然エネルギー100%への転換を目指すべき

2016年に発効したパリ協定では、今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする必要がある。世界では自然エネルギー100%を目指す動きが様々なレベルで加速している[10]。省エネ余地の大きい多くのエネルギーを消費している産業部門や業務部門の省エネ対策を根本的に見直す必要がある。それにより2030年までには電力需要の3割削減(2010年比)を目指し、熱や燃料需要についても根本的な削減を目指す必要がある。加えて、自然エネルギーを電力需要の50%まで導入することで、2030年における温室効果ガス削減目標は40%以上(1990年比)を目指すべきである[11]。長期的には自然エネルギー100%を目指す目標を国、地方自治体、企業が定めることが求められる。もちろん、世界全体で2度以下を目指す気候変動対策の努力を無視した、無責任な石炭火力建設ラッシュを緊急に差し止める必要がある。

企業においても自然エネルギー100%に向けた取り組みが世界的に加速しており、世界的な大企業がすでに自然エネルギー100%を達成することを目標にし始めている。グローバルなサプライチェーンの中でも自然エネルギーの利用が求められており、日本国内の企業も無視が出来ない状況であるが、日本国内では自然エネルギーの電気を企業が調達することは容易ではない。日本国内では非化石価値取引市場が2018年度から始まるが、トレーサビリティが無く需要家への価値移転が出来ない中途半端は仕組みであり、自然エネルギーの発電源証明の制度や自然エネルギー価値(グリーン電力など)の取引市場などを国際的な基準で整備する必要がある。

7. 情報公開と国民参加の開かれた議論の場が必要

そもそも2014年のエネルギー基本計画で示された「原発は重要なベースロード電源」自体が、3.11以前の「原発神話」(安全、安価、安定)をそのまま復活させたナンセンスなものであった[12]。さらに、原発比率をむき出しで議論することを避けるために、「ベースロード電源」という「包装紙」で原発を包み込んでその比率を定め、そこから逆算するかたちで一定比率の原発を維持が必要という論理を押し通そうとしていた。なお、欧州などでは「ベースロード電源」という概念が消えつつあり、今回の「国の論理」が時代遅れといえる。こうして振り返ると、国は不透明・不誠実な議論のプロセスを重ねてきており、国民参加や透明性ある議論とは対極にあり、今日の熟議民主主義の時代における政治や政府の姿勢とはかけ離れている。

福島第一原発事故を始め、様々なエネルギー政策の硬直化を招いた一因として政府や独占的な地位にあるエネルギー関連企業による情報の秘匿が考えられる。また、エネルギー政策のような重要な基本政策は、最終的に国民や様々な主体が関与して合意すべき問題であることから、政府や関連企業は情報を公開する義務を負っているはずであり、政策決定プロセスにおいても多くの国民の意見が反映される適正なプロセスが担保される必要がある(環境問題においては市民参加を担保するオーフス条約の批准なども必要)。そのためには、国民の代表者から構成される国会上での手続き(熟議)をエネルギー政策の決定プロセスに盛り込む必要がある。

エネルギーの選択は、国の専管事項でもなければ産業界の要望だけで決められるべきものでもない。地域分散型自然エネルギーが急速に進み、気候変動問題の大きなリスクに直面し、そして3.11福島第一原発事故を経験した私たち日本に住むすべての人々が参加し、議論し、合意を重ねて選び取るべきものである。

参考資料

[1] IEA “ IEA finds CO2 emissions flat for third straight year even as global economy grew in 2016”, March, 2017

[2] REN21「自然エネルギー世界白書2017」2017年6月 https://www.isep.or.jp/archives/library/10572

[3] ISEPブリーフィングペーパー「定着した原発ゼロの電力需給」(2015年6月) https://www.isep.or.jp/library/7712

[4] 環境省「平成26年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討委託業務報告書」(2015年3月) http://www.env.go.jp/earth/report/h27-01/

[5] 第1回世界ご当地エネルギー会議 http://www.wcpc2016.jp/ 2016年11月

[6] 「地域再生可能エネルギー国際会議2017」 http://local-renewables-conference.org/nagano2017/japan/ 2017年9月

[7] 全国ご当地エネルギー協会ホームページ http://www.communitypower.jp/

[8] 原子力市民委員会「原発ゼロ社会への道2017~脱原子力政策の実現のために」2017年12月 http://www.ccnejapan.com/?page_id=8000

[9] 原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」 http://genjiren.com/

[10] ISEP「自然エネルギーが『パリの希望の灯』となった」2015年12月 https://www.isep.or.jp/archives/library/8812

[11] CAN-Japan 「新しい日本の気候目標への提言(改訂)」(2015年3月) http://www.can-japan.org/advocacy/1795

[12] ISEPプレスリリース「エネルギー基本計画の「5つの大罪」~白紙撤回し、ゼロから出直せ~」(2014年4月) https://www.isep.or.jp/library/6159

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