
自然エネルギーは、政策によって普及のための前提条件を整えることで多様なステークホルダーが市場に参入し、導入が加速します。目標値の設定、固定価格買取制度をはじめとする規制、税制措置、情報キャンペーンといったさまざまな政策手法を組み合わせ、国・地方自治体・地域コミュニティのそれぞれで取り組みを進めていくことが必要です。ISEPは、国内外の研究者、実務家と共に自然エネルギー政策の研究・提言を進めています。
【共同声明】日本政府に対して太陽光パネルのリサイクル義務化を求めます
共同声明:日本政府に対して太陽光パネルのリサイクル義務化を求めます
2025年8月29日
原子力資料情報室
国際環境NGO 350.org Japan
自然エネルギー100%プラットフォーム
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国際環境NGO FoE Japan
WWFジャパン
気候ネットワーク
環境エネルギー政策研究所
市民電力連絡会
8月29日、浅尾環境大臣は、政府がこれまで検討してきた内容での太陽光パネルのリサイクル義務化を断念したと発表しました。政府は制度案の見直しを視野に入れて再検討するとしています。
検討されていた法律案では、太陽光パネルのリサイクルを義務化し、太陽光パネル製造業者(海外製造分は輸入業者)が、新設分のみならず拡大生産者責任(EPR)の考え方から既設分も製造量に応じて費用負担することになっていました。しかし、内閣法制局から、太陽光パネルのリサイクル費用を製造業者らが負担するという方針が他のリサイクル関連法と齟齬する、との指摘があったと報じられています。
太陽光パネルの廃棄量は、2040年頃には年間40万トン規模に達する可能性が指摘されており、早ければ、FIT制度初期の買取期間が終わる2030年代前半には急増することが見込まれるため、既設分の対応を含めたリサイクルの義務化は急務の課題です。石破総理大臣も、昨年12月の循環経済に関する関係閣僚会議において、「再生材利用の拡大や、環境配慮設計の推進、太陽光パネルリサイクルの促進のための法整備について、国会提出に向けた作業を加速」するよう求めているとおり、早期の国会での成立が求められています。また、今年2月に閣議決定されたばかりの第7次エネルギー基本計画でも、義務的リサイクルの検討を進める方針が示されています。「他のリサイクル関連法と齟齬する」との指摘ですが、拡大生産者責任の重要性が増す時代に合わせて新法で制度的枠組を刷新することは何ら問題がないはずです。
代替案として、リサイクルについての報告義務化や努力義務化などが検討されていると報道されています。しかし、リサイクル義務化と比べてどこまで実効性が担保されるかは不明です。また、現状でも太陽光パネルのリサイクル実施は可能ですが、製造者にリサイクルを義務付けることで、太陽光パネルをリサイクルしやすい形で設計することが期待できます。義務化され、大規模にリサイクルが行われるようになれば、これに掛かるコストの低減が期待されます。逆に言えば、義務化しなければリサイクル費用は高いままとなり、リサイクルがほとんど行われないことが懸念されます。
すでに使用済み太陽光パネルの放置問題は地域トラブルの大きな原因となっています。気候危機が深刻化する中、化石燃料でもなく、始末に負えない核のごみを生み出す原子力でもなく、持続可能で公正な再エネこそ導入の加速が必須です。太陽光パネルのリサイクル義務化が遅れることは、廃棄物問題への懸念を深めることになり、再エネ導入拡大の大きな阻害要因となります。私たちは、政府に次期臨時国会での拡大生産者責任を前提とした太陽光パネルのリサイクル義務化法案の提出を求めます。
以上
参考資料:
中央環境審議会 循環型社会部会 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 合同会議とりまとめ「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について」
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