文字サイズ
標準
拡大

FIT制度抜本見直しに向けた提言(パブコメ意見)

当研究所は、FIT制度の抜本見直しについて、中長期的な視点で地域からの脱炭素化・自然エネルギー100%の実現に向けた提言を行いました。パブコメ「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会 中間取りまとめ(案)」に対する意見として提出をしました(1/23追記)。

提言

  1. 「拙速かつ普及を抑制する見直し」ではなく「自然エネルギーの主力電源化」に向けて
    「飛躍的な普及拡大」を実現できる段階的で統合的な制度改革を
  2. 地域での合意形成や地域の活性化を重視し、真の「地域活用電源」を目指す
  3. 「競争電源」の対象およびFIP制度・入札制度などのあり方を見直す
  4. 電力系統への優先接続・優先給電を保証し負担ルールを見直す
  5. 太陽光発電設備の廃棄費用は合理的な措置が必要
  6. 非化石証書など環境価値の扱いをシンプルで統一的かつ国際的に共通なものに
  7. さらなる電力市場改革で自然エネルギー100%を目指す

背景

2012年7月にスタートした再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT制度)により、太陽光発電を中心に国内での自然エネルギーの導入が進み、発電量の割合で17.5%(2018年度速報値)となったが、その過程で多くの課題に直面してきている。太陽光発電の割合は6.7%とFIT制度導入前の約12倍以上に増加しているが、風力発電の発電量の割合は0.7%に留まっている(図1)。

図1. 日本国内での自然エネルギーおよび原子力の発電量の割合のトレンド/出所:資源エネルギー庁の電力調査統計などからISEP作成

太陽光と風力を合わせたVRE(変動する自然エネルギー)は7.4%になり、約8倍に増加しており、九州本土では、2018年10月に太陽光発電の出力抑制が初めて実施された。優先給電や出力制御のルール、接続可能量(30日等出力制御枠)の制度、グリッドコードの制定、電力系統の調整力など電力システムの課題が浮き彫りになってきている。すでに指定電気事業者制度で接続可能量を定めている九州以外の一般送配電事業者でも出力抑制量の予測値が公表され、出力抑制の準備が始まっている。一般送配電事業者エリア毎の自然エネルギーの系統接続の状況(2019年9月末)を見ると、ほとんどのエリアで接続済の自然エネルギーの設備容量が最小需要を上回っている(図2)。さらに接続申込・承諾済の設備を含めると最大需要を超えるエリアもあり、自然エネルギーの大量導入を前提とした電力システムの整備が求められている。

図2. 系統へ接続済および接続申込・承諾済の自然エネルギー設備 (2019年9月末)/出所:一般送配電事業者のデータよりISEP作成

第5次エネルギー基本計画がベースとしている日本国内での自然エネルギーの2030年の導入目標は24%(発電量ベース)と低く、パリ協定長期戦略(2019年7月)でも長期的な導入目標も明確にはなっていない。一方、パリ協定に基づく長期的な脱炭素の達成のために、自然エネルギー100%を目指す動きが企業や自治体を中心に日本国内でも広がりつつある。2019年12月にスペインのマドリードで開催されたCOP25に向けては自治体の首長による「実質ゼロ表明」が相次いで行われ、東京都や大阪府を含む28の自治体で約4500万人(全人口の約3分の1)をカバーしている。

FIT制度による市町村や都道府県毎の2019年6月末までの認定および導入状況によると、事業認定された設備は約9800万kWだが、実際に運転を開始している設備は約5800万kWとなり、事業認定の約59%になっている(図3)。一方、未稼働の認定設備はいまだに約4000万kWあるが、事業認定の約41%に減少した。未稼働の太陽光発電の中にはすでに認定から6年以上経過している設備もあり、認定取得後に長期にわたり運転が開始されない場合には、認定の失効などの法的措置を講じて系統容量が適切に開放されるような検討がされている。未稼働案件の約65%が事業用太陽光であり、約45%は1MW以上のメガソーラーである。その他、風力発電が約15%の約600万kW、バイオマス発電が17%の約680万kWある。風力発電については、環境アセスメントの手続き中の案件が洋上風力を含めて1000万kW以上あり、手続きが進んで電力系統の接続契約を結んだ案件から事業認定が行われている。一方、バイオマス発電については、主に輸入バイオマスを燃料とする一般木材の区分で760万kWが事業認定されており、そのうちすでに110万が運転を開始しているが、残りの650万kWが未稼働である。輸入するパーム油やPKS、木質ペレットには持続可能性の懸念があり、持続可能性基準の適用が検討されている。

図3. FIT制度により認定され運転を開始した設備および未稼働設備の累積容量/出所:資源エネルギー庁データより作成

電力システム改革による電力市場の自由化と整備が2020年の発送電分離(法的分離)で新たな段階を迎える中で、FIT制度の抜本見直しが2020年度末までに行われる。その方向性については、総合資源エネルギー調査会の「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」で検討されてきたが、2019年8月に公表された中間整理(第3次)に基づき「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」(以下、小委員会)でさらに審議され、2019年12月に「中間取りまとめ(案)」が公表されてパブコメが行われている。

提言内容

この自然エネルギーの主力電源化に向けたFIT制度の抜本見直し等の論点について、中長期的な視点で地域からの脱炭素化・自然エネルギー100%の実現に向けて以下の提言をする。

1. 「拙速かつ普及を抑制する見直し」ではなく「自然エネルギーの主力電源化」に向けて「飛躍的な普及拡大」を実現できる段階的で統合的な制度改革を

国際的に見ると、これまでの10年で風力発電のコストが70%減、太陽光発電が90%減となり、世界の多くの国・地域で最も安い電源となった[1]。同時に風力発電が昨年55GW増・累積650GW、太陽光発電が昨年120GW増・累積630GWと非化石エネルギー源の中でも普及の中心となっており、今後もこの傾向は加速すると見られている[2]

[1]  Lazard Levelized Cost of Energy Analysis (LCOE 13.0), Nov.2019

[2]  REN21”Global Status Report 2019” June 2019などをベースに当研究所で推計

また、パリ協定で要請されているプラス1.5℃以内を達成するため、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)[3]やドイツ・エネルギーウォッチグループ[4]などが提示している中長期の見通しでは、この風力発電と太陽光発電が2050年で9割前後を占めるべく、普及の一層の加速化が要請されている。

[3]  IRENA “Future of solar photovoltaic Deployment, investment, technology, grid integration and socio-economic aspects” (Nov. 2019)

[4]  Ram M.,et al., Global Energy System Based on 100% Renewables. Power, Heat, Transport and Desalination SectorsLUT University & Energy Watch Group. Lappeenranta. Berlin. April 2019.

加えて、同じ小規模分散型のエネルギー技術である蓄電池が過去10年でコストが80%減し、その裏返しとして自動車の電動化が加速度的に進んでいる[5]。これらの3つの技術が、原発や化石燃料に取って代わるこれからのエネルギーの主役になる傾向ははっきりとしている。

[5]  R. Bucher etal.,” Live test results of the joint operation of a 12.5 MW battery and a pumped-hydro plant” HYDRO2018  conference paper (Oct.2018)

これからも急速に低コスト化し普及拡大してゆく風力発電・太陽光発電・蓄電池の恩恵を、電力分野だけでなく、輸送交通エネルギーや温熱エネルギーのエネルギー源としても活用するための「セクターカップリング」や「グリーンガス」「グリーン水素」などを視野に入れた、統合的なアプローチが求められている。

ところが日本では、「自然エネルギーの主力電源化」という方向性は掲げているものの、個々の施策は、FIT導入後に急増した太陽光発電が露呈させた初期政策の不備への弥縫策的な対応(太陽光発電の接続可能量と出力抑制、未稼働案件への規制など)と、やはり急増した国民負担の抑制に力点が入っており、到底、「自然エネルギーの主力電源化」に向けて、速やかな普及に繋がる施策や統合的なアプローチとはいえない。

今回の見直しの目玉は、再エネの市場統合であり、FITからFIP(フィードインプレミアム)への移行であるが、当日市場やアグリゲーターなどが整っていない日本の電力市場の整備はまだ不十分であり、太陽光発電や風力発電の比率もまだ低い日本の現状を踏まえると拙速であろう。

やはり、「自然エネルギーの主力電源化」を大前提として、以下のような段階的・統合的なアプローチが必要であると考える。

  1. 普及に向けて最大の障害となっている送電系統ルールを抜本的に見直すこと。とくに優先接続や優先給電の確立、コネクト&マネージの原則、一般負担原則、発電側基本料金の撤回など。
  2. 再生可能エネルギーの統合に向けて、電力市場の見直しと整備を行う。
  3. 拙速なFIP導入を避けて、現行のFITと入札制度を丁寧に作り込み、海外に比べてコストの高い太陽光発電・風力発電の開発の成熟を促す。 

2. 地域での合意形成や地域の活性化を重視し、真の「地域活用電源」を目指す

地域に豊富に存在する資源を活かして自然エネルギーの主力電源化を目指すには、地域主体のエネルギー事業や社会的合意形成を重視した真の「地域活用電源」の普及を目指すべきである。「地域活用電源」(小規模事業用太陽光、小水力、地熱、バイオマス)については、地域活用要件を定めた上で、一定条件のもとFIT制度を継続することが検討されている。しかし、この「地域活用要件」においては地域へのアウトプットと地域からのインプットというエネルギー需給に関する自家消費・地域一体型の要件が付加され、とくに低圧(50kW未満)の太陽光発電は、前倒しして30%の自家消費が義務づけられるため、実質的にFITが終了することを意味する。

これに対して、地域主体のエネルギー事業に関する「コミュニティパワーの三原則」や社会的合意形成[6]などの要件などは含まれていない。地域活用要件として定めようとしている自家消費の要件については、一律に自家消費率を定めるのではなく、全量売電も含めてタイプ別に柔軟に対応する必要がある。防災機能の要件についてもそのニーズは地域により多様であることから一律ではなく様々な選択肢を設けるべきである。

[6] 「持続可能な社会と自然エネルギーコンセンサス

一部の地域で見られる大規模な太陽光発電事業の開発でのトラブル等[7]を未然に回避するため、発電事業計画の認定要件(第9条第3項関係)において、地域での合意形成プロセスをしっかりと盛り込み、積極的な情報公開と地域のステークホルダーの参画を推奨すべきである(「持続可能な社会と自然エネルギーコンセンサス」参照)。さらに、1MW未満の地域分散型の小規模な設備に対して現状の課題を把握し、地域主体の取り組みについては買取価格以外にも各種の手続きや人材育成、資金調達など十分な支援を行うべきである。

[7] ISEP研究報告「メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について」(平成28年3月1日)

3. 「競争電源」の対象およびFIP制度・入札制度などのあり方を見直す

現状では改正FIT法の中で入札制度が始まり、2017年度以降は、事業用太陽光のうち2MW以上が入札対象となり、2019年度からは500kW以上の太陽光に対して入札対象となった。2020年度以降にはさらに100kW以上が入札対象になる方向で検討されている。

大規模な事業用太陽光や風力などの「競争電源」については、これまでのFIT制度に代わってFIP制度の導入および市場への統合が検討されている。しかし、入札制度を前提としてFIP制度への移行や市場への統合を拙速に行うことは、これまで拡大してきた太陽光発電市場に大きなブレーキとなる可能性あり、特に海外と比べて大きく立ち遅れている風力発電市場にとっては致命的な影響を及ぼす可能性がある。風力発電についは2030年以降の導入目標を大幅に引き上げた上で現状のFIT制度の改善をしつつFIP制度の導入は市場の拡大の筋道が十分に見えてからにすべきである。

現状の太陽光発電の入札制度は、欠陥が多いと言わざるを得ない。2019年度には500kW未満の事業用太陽光に対象が広げられたが、拙速に入札の対象を広げるよりも入札制度の見直しが必要である。その中で、地域ベースで地産地消を目指すご当地電力系の事業者は、応札すらできない状況にあった。この状況では、入札制度よりも、むしろ前項で提案した規模別等のきめ細かい買取価格の改善を行う方が望ましい。

現状の入札制度では、入札制度への参加には巨額の開発資金や系統接続などへのリスク対応が必要となり、大資本をもつ事業者しか参加できず、地域主体のご当地エネルギーの事業者が排除されるという根本的な問題がある。加えて、こうした外資や地域外の大手資本による巨大ソーラー開発が、地域との対立を招いている事例が頻発していることにも留意する必要がある。ドイツでは、入札にあたり社会的合意形成などの観点から地域での所有(オーナーシップ)や利益配当などを重視した「ご当地性(Community Power)」を参加条件にしている場合もあり、日本においてもそのような一定の「ご当地」枠を設けて、設備の認定や系統接続などを優先的に行うべきである。

FIT制度の改善には、規模別やタイプ別の買取価格の設定をきめ細かく設定する必要がある。土地利用のなどの面で持続可能性に様々な課題がある地上置きの太陽光に対して、営農型太陽光(ソーラーシェアリング)や屋根置きの太陽光の普及を進めるため、タイプ別の買取価格の区分も設けるべきである。事業用太陽光では、出力規模や事業形態により発電のコスト構造が明らかに異なるため、一定規模(例えば2MW)未満の「地域活用電源」については入札の対象外として新たな調達価格の区分を設けるべきである。

風力発電について、2020年度の買取価格が将来的なシステム費用の低減を前提に示されたことは一定の評価ができたが、FIT制度の見直しや入札制度の導入を前提に2021年度以降の買取価格が定められないことは事業者の予見性の観点から問題である。2021年度以降についても、買取価格は深刻化する電力系統の制約や長期化している環境アセスメント手続きなど様々な課題を考慮した買取価格や運転開始期限の設定を行う必要がある。実際の導入があまり進まない中で、システム費用は未だ買取価格を算定する際の想定を上回る状況が続いており、将来に渡り予見可能な適切な買取価格の設定が引き続き求められているが、新設と共にリプレースについてもタイプ別や地域ごとの実情を考慮する必要がある。

洋上風力については、着床式と浮体式に分けられて、着床式について2020年度の買取価格の設定が定められず、将来の一般海域での洋上風車の入札を視野に入れていることは、本来、大きな導入ポテンシャル(着床式で9100万kW、JWPA調べ[8])を持つ洋上風力に対して高い目標を持たずにFIT制度を運用しているためと考えられる。洋上風力については、積極的に導入を進めるためにも陸上風力と共に高い目標を掲げて、稚拙な「入札制度」ではなく、むしろFIT制度の買取価格の改善で対応すべきである。

[8] JWPA 「洋上風力発電の導入推進に向けて」2018年2月22日改訂

風力発電への環境アセスメント(法アセス)の審査手続きがすでに1800万kW以上(2018年12月末現在、JWPA調べ)に達しているが、風力発電の設備認定(移行認定を含まず)が2019年3月末で約800万kWに達したものの、実際の運転開始は設備認定の約14%に相当する112万kW程度に留まっている(国内の累積導入量は2018年度末にようやく360万kWに達した)。風力発電の設備認定や運転開始のペースは環境アセスメントなどの準備期間の長さにより太陽光発電に比べるとまだまだ遅い状況であるため、環境アセスメント手続きの期間短縮や対象規模の見直し、アセス情報の共有化、ゾーニングの制度化などを引き続き行う必要がある。

4. 電力系統への優先接続・優先給電を保証し負担ルールを見直す

東北や北海道で深刻な電力系統への接続制約などの立地条件、環境アセスメントなど調達価格以外の事業へのハードルが高い。指定電気事業者の指定を受けた電力会社毎に「接続可能量」が設定され、それを超えた風力発電設備については無制限・無保証の出力抑制が求められているが、この様な「接続可能量」を定める制度を廃止し、出力抑制分を補償するなど制度の見直しが必要である。さらに、電力系統への接続費用についても、全て発電事業者の負担としている制度を見直し、欧州並みの自然エネルギーの「優先接続」を実現するために、他の自然エネルギーを含めてできるだけ一般送配電事業者による「一般負担」とし、自然エネルギーの本格的な導入に対応できる電力系統の整備を進める必要がある。その意味で、導入が検討されている系統接続費用の「発電側基本料金」制度は、設備容量に対して一律の基本料金を発電事業者が新たに負担することになり、設備利用率が比較的低い太陽光や風力の事業が既存の化石燃料の発電設備よりもより不利になる可能性があり、その設定を見直す必要がある。

自然エネルギーの本格的な普及には電力系統への「優先接続」が欠かせないが、現状、接続契約は各送配電事業者による裁量手続きに委ねられているにも関わらず、FIT制度の認定手続きの大前提となっている。そのため、地域の電力系統の状況(空き容量)や送配電事業者の対応(接続可能量、工事負担金など)により接続契約が困難な地域が多く、改正FIT法が前提とする「自然エネルギーの最大限導入」の大きな障害となっている。オープンアクセスとして法制化されている「接続義務」の系統接続ルールが電力会社によって骨抜きされるなど、根拠が不透明な「接続可能量」や過大な「工事負担金」、既存電源や電力会社の計画を優先した「空き容量ゼロ回答」などによって実質的に接続が拒否されている。送配電事業者を行う接続契約手続きをしっかりと規制し、持続可能性を考慮した自然エネルギーを最優先かつ最大限導入できるよう、FIT制度の運用を行うべきである。

2018年10月から九州電力で始まった太陽光発電などの出力抑制は、見直しが必要である。現状の優先給電ルールから見ても、石炭火力や揚水発電、関門連系線に余裕がある段階で、太陽光発電等の抑制が行われることは、予測精度の問題や石炭火力抑制の深掘りなど改善の余地は大きい。純国産エネルギー源かつ限界費用が最も安い太陽光発電等が最優先されるよう、現状の優先給電ルール自体も見直しが必要である。

また、連系負担金については、一般負担を原則とするよう見直すとともに、太陽光発電や風力発電に不利な発電側基本料金は廃止し、託送料金の中で回収すべきである。

5. 太陽光発電設備の廃棄費用は合理的な措置が必要

太陽光発電設備の廃棄等費用の確保にあたり、積立てを担保する制度が検討されている。しかし、100万件単位の膨大な事業者の廃棄費用積立を取り扱うことは、徴収は容易でもその後の管理は銀行を一つ作る手間・行政コストが掛かると考えられる。検討されている外部組織への積立案の場合、金利や機会損失の扱いは不明である。仮に費用にならず拠出者の資金のまま外部積立なら、事業者にとって金利など機会損失につながる。そもそも、掛け捨て保険の方が圧倒的に少ない費用負担で、規模も小さく、対応も容易と考えられる。

6. 非化石証書など環境価値の扱いをシンプル・統一的かつ国際的に共通なものに

2030年の非化石電源44%というあいまいな目標に留まらず、中長期的な自然エネルギーの明確な導入目標やロードマップをさだめた上で脱炭素化・自然エネルギー100%を目指した電力システムや電力市場を構築していく必要がある。さらに現状の非化石証書制度を超えて自然エネルギーの多面的な価値を評価することができる新たな制度(発電源証明、持続可能性証明など)を導入し、様々なユーザーや需要家と共に地域の多様なステークホルダーが協働して自然エネルギー100%を目指す仕組みづくりが求められる。

7. さらなる電力市場改革で自然エネルギー100%を目指す

2020年度に電力エリア毎に実施される発送電分離(法的分離)はあくまで過渡的な姿であり、分散型エネルギーシステムへの転換には、所有権分離による発送電分離と各地域の配電網の分離(配送電分離)へと進める必要がある。日本国内での持続可能な自然エネルギーへの転換は、3.11を契機にその途上にあり、様々な課題を克服しつつ自然エネルギーの主力電源化を目指しているものの、長期的な目標やビジョンは国レベルではいまだ定まっていない。しかし、各地域での課題解決のためには地域の様々な資源を活用した分散型エネルギーシステムへの転換は避けては通れない。いまこそ、国レベルの長期的な自然エネルギー100%に向けた仕組みづくりや、そのための熱部門や交通部門も含む長期的な視点でのエネルギーインフラの整備、各地域の特性に応じた地域主体の持続可能な取り組みが求められている。

以上