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【プレスリリース】「革新的エネルギー・環境戦略」の決定に対して

「革新的エネルギー・環境戦略」の決定に対して
〜 より明確に「原発ゼロ」の実現時期と道筋を示し、核燃料サイクルを断念して、
再生可能エネルギー・省エネルギー・気候変動対策の中長期目標の深堀を 〜

国民の「少なくとも過半」(意見聴取会やパブコメ等では7~9割)が原発に依存しない「原発ゼロ」の社会を強く望んでいることが国民的議論により明らかになり、まさにその実現に向けた革新的エネルギー・環境戦略の策定が求められている。9月14日に開催されたエネルギー・環境会議(第14回)において示された「革新的エネルギー・環境戦略」で、第一の柱の「原発に依存しない社会の一日も早い実現」において「2030年代に原発稼働ゼロが可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と宣言したことは、これまでの原発依存のエネルギー政策からの方向転換として一定の評価ができる一方、核燃料サイクルの議論を先送りしたまま、明確に「原発ゼロ」の社会の実現時期やその実現方法を示していないことには大きな問題がある。

1. 事実上の原発ゼロである「現在」を出発点として、政治的・財務的・経済的・国民合意的に現実的な措置を出発点とする「道筋」を具体的に示す工程と法制度の策定により、原発のリスクを最小化することを目指すべきである

  • 官邸前デモやパブリックコメントに代表される、大多数の国民が「原発ゼロ」を望む声と政府に対する不信を受け止めて、いったん2年程度の全原発停止(再稼働モラトリアム)を行うこと
  • その間に、原発の安全性に関する抜本的な見直しと国民の信頼回復を行うこと
  • 脱原発についてのルール化と国民的な熟議と合意を行うこと。とくに使用済み核燃料の総量規制と中長期(50〜100年程度)の乾式中間貯蔵の立地場所の合意
    • その「総量規制と乾式中間貯蔵の立地場所の合意」を前提に、次の「最終処分に関する合意」のステップに移る。
    • 5〜10年で国民的熟議を重ねて「最終処分に関する国民的合意」を得る
  • 電力需給に問題なかったことを前提に、この2年程度の財務・経済面からの必要な措置を行うこと
    • その間に廃炉すべき原発の仕分けと国有化(時価での引き取り)。原発廃炉による債務超過に陥る電力会社から送配電網を国が時価で購入する
    • 電力会社による徹底的な経費節減努力を前提とする燃料費の国による補填(いったん貸し付けて中長期的に託送料などで回収)により、電力の安定供給維持と電気料金の過大な値上げを回避する
    • 国有化した東京電力は早期に3分割(送電、発売電、国直轄の福島事故原発)
  • 2年後を目途に、発送電所有分離を含む新しい電力市場の創設

2. 特に「原子力に依存しない社会の実現に向けた3原則」は、いずれも原発のリスクを最小化する最低限の条件であるが、まったく不十分である。少なくとも以下の4つは必須といえる

  • 原子力ムラから独立した原子力規制委員会人事の見直し
  • 3つの事故調査委員会の答申や最新の知見を反映した安全基準の見直しとその再適用(バックフィット)
  • 原子力事業者責任を前提とする原子力損害賠償制度の抜本的な見直し
  • 「被害地元」の概念を具体化した広域自治体を巻き込んだ安全監視と緊急時対応の具体化と実質化

3. また、「原子力に依存しない社会の実現に向けた5つの政策」についても、すでに破綻している核燃料サイクル(高速原型炉もんじゅと六ヶ所再処理工場)を即時放棄し、使用済み核燃料の全量直接処分を前提とする「中長期の乾式中間貯蔵」へ大きく方向転換した上で、使用済み核燃料の総量抑制とその中長期の貯蔵場所について国民的な熟議を進めるべきである

 

その上で、第二の柱「グリーンエネルギー革命の実現」を省エネルギー・再生可能エネルギーの本格導入により加速化し、エネルギーシステムの抜本改革により第三の柱「エネルギーの安定供給」を着実に実現すべきである。

この時、もっとも重要なことは、過去失敗を重ねてきたエネルギー行政を抜本的に改廃し、意欲と専門性と経験のある人材を集めた「環境エネルギー庁」を環境省のもとに設置する。さらに、省エネルギーや再生可能エネルギーに対してはさらに深堀した政策目標を定め、気候変動対策目標についても中長期的に国際的な責務を果たすことにより、中長期的ビジョンに基づく持続可能な社会の実現を目指すべきである。

上記に基づき、「革新的エネルギー環境戦略」に関するISEPからの提言も示す。