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2024年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)

【速報】2024年(暦年)の自然エネルギー電力の割合

~国内の変動性自然エネルギーが12%に、急がれる自然エネルギーのさらなる拡大~

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所
2025年6月30日

要旨

(1)  2024年 (暦年)の日本国内の全発電電力量(自家消費含む)に占める自然エネルギーの割合は26.7%(速報値)となり、前年の25.7%から1ポイント上昇したと推計されたが、さらなる拡大のための政策が求められる。

(2)  2024年(暦年)の太陽光発電の年間の発電電力量の割合は11.4%となり、前年の11.2%からわずかな増加に留まり、変動性自然エネルギーVRE(太陽光および風力)の割合は12.6%となった。

(3)  バイオマス発電の割合は5.9%で、前年の5.7%からわずかに増加した。風力発電は1.13%で前年から微増、地熱発電も0.33%で前年から微増した。水力発電は前年から0.4ポイント増加して7.9%だった。

(4)  化石燃料による火力発電の年間の発電電力量の割合は65.1%で、前年の66.6%からさらに減少した。LNGは29.1%で前年の29.0%からほぼ横ばい、石炭も28.2%で前年の28.3%から横ばいだった。原子力発電は8.2%となり、前年の7.7%から増加した。

(5)  欧州では、2024年には、自然エネルギーの年間発電電力量の割合が50%を超える国が多くあり、EU27か国全体の平均でも47.5%に達しており、ウクライナ危機などの影響で化石燃料による発電電力量の割合は29.1%まで減少している(天然ガス15.7%、石炭9.8%)。VREの割合もデンマークの69%を筆頭にポルトガル、ドイツ、スペインなど40%を超える国が多くあり、EU27か国全体の平均値も28.6%となっている。

(6)  太陽光発電の導入と共に定置用蓄電池の導入が各国で進んでいる。特に太陽光発電の導入量が大きい中国、米国、EUの中でもドイツやイタリアでの導入が進んでいるが、日本でもすでに需要側(特に家庭用)を中心に10GWh以上が導入され、世界的には揚水発電に匹敵する容量が導入されている。

(7)  中国では、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進み、2024年には風力発電の年間発電電力量の割合が9.8%、太陽光発電が8.3%で原発(4.4%)を大きく上回り、水力も含めた自然エネルギーの割合は33.6%に達する。VRE比率も18.1%に達している 。

(8)  日本国内の2024年(暦年)の電力需給データにおいて、電力需要量に対する自然エネルギーの割合は平均で22.8%だった。1時間の最大値では100%以上に達する時間帯があるエリアは、4エリア(北海道、東北、北陸、四国)あったが、VREの割合が100%を超えることはなかった。VREの出力抑制が北海道(0.04%)、東北(1.29%)、北陸(1.20%)、中部(0.33%)、関西(0.15%)、四国(1.75%)、中国(3.64%)、九州(8.35%)で実施され、九州以外のエリアで抑制率は前年から増加している。全国平均の割合も1.9%と前年の1.7%から増加した。

国内の発電電力量に対する自然エネルギーの割合

電力調査統計[1]や全国の電力需給データなどより2024年の日本国内の全発電電力量(自家消費を含む)の電源別割合を推計した[2]。その結果、2024年(暦年)の日本国内の自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は26.7%となった(表1、図1)。

2016年には約15%だった自然エネルギーの割合が、2021年までに毎年1ポイント以上増加して22%に達したが、2024年は前年(2023年)から1ポイント増加して26.7%に達した(図2)。その中で、太陽光発電の発電電力量は11.4%に達して、前年の11.2%からわずかに増加しており、エネルギー基本計画が2030年度の電源構成で想定している導入割合(15%)に徐々に近づいている。風力発電の割合1.13%と合わせると、VRE(変動性自然エネルギー)の割合は12.6%となり、前年(2023年)の12.3%からわずかな増加に留まった。太陽光発電以外の自然エネルギーについては、バイオマス発電の発電電力量の割合は5.9%で、前年の5.7%からほぼ横ばいだった。風力発電も1.13%で前年の1.07%からわずかに増加し、地熱発電も0.33%で前年からわずかに増加した。水力は前年の7.5%から増加して7.9%だった。月別にみると2024年5月の自然エネルギーの発電電力量の割合が最も高く、34.7%に達している(図3)。この5月には太陽光の割合が15.8%と高くなり、変動性自然エネルギー(VRE)の割合も17.1%に達している。

風力発電の発電電力量データについては、電力調査統計のデータ(電気事業者送電量と受電電力量)ではなく、電力会社が公表している電力需給データによる送電量を用いている。また、太陽光発電の発電電力量データについては、電力調査統計のデータを採用しているが、電力需給データと比較すると年間送電量で1割程度大きいため太陽光発電の割合については推計の幅があることに留意が必要である。具体的には、電力調査統計からの推計では、太陽光発電の年間発電電力量は114.6TWhだったが、電力需給データによる送電量では93.4TWhだった。住宅用太陽光(10kW未満)の推計値が3.2TWhのため、それと合わせて96.6TWhとなり、1割以上小さいため、太陽光発電の割合は9.6%となる。電力調査統計からの発電電力量の推計値は、電気事業者(小売電気事業者および一定規模以上の発電事業者)からの発電実績の報告と、電気事業者以外の事業者からの受電電力量を合計した数値のため、ダブルカウントなどにより大きめの数字になっている可能性はある。

火力発電の発電電力量は減少傾向にあり、2024年には65.1%と、前年の66.6%から減少し、2016年からは約18ポイント以上減少したが依然として高いレベルである。石炭火力については、2016年の30.2%から2024年には28.2%に減少した。LNGについては2016年の38.9%から2024年の29.1%までほぼ一貫して減少傾向にある。一方、原子力発電は、2014年にゼロになってから、2019年には発電電力量が6.5%まで増加し、2022年には4.8%まで減少したが、2024年は8.2%に増加した。

表1: 日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電源調査統計などよりISEP作成)

電源 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 備考
水力 7.6% 7.6% 7.8% 7.4% 7.9% 7.8% 7.1% 7.5% 7.9% 大規模含む
バイオマス 1.9% 2.0% 2.2% 2.7% 3,2% 4.1% 4.6% 5.7% 5.9% 自家消費含む
地熱 0.22% 0.21% 0.22% 0.24% 0.25% 0.25% 0.25% 0.28% 0.33%
風力 0.54% 0.61% 0.69% 0.76% 0.86% 0.88% 0.85% 1.07% 1.13% 電力需給データ
太陽光 4.4% 5.7% 6.5% 7.4% 8.5% 9.3% 9.9% 11.2% 11.4% 自家消費含む
再エネ 14.7% 16.4% 17.4% 18.5% 20.8% 22.4% 22.7% 25.7% 26.7%
VRE 5.0% 6.3% 7.2% 8.2% 9.4% 10.2% 10.8% 12.2% 12.6%
火力 83.6% 80.8% 77.9% 75.0% 74.9% 71.7% 72.4% 66.6% 65.1% 石炭、LNG、石油ほか
石炭 30.2% 30.2% 28.2% 27.8% 27.6% 26.5% 27.8% 28.3% 28.2%
LNG 38.9% 38.4% 37.4% 36.0% 35.4% 31.7% 29.9% 29.0% 29.1%
原子力 1.7% 2.8% 4.7% 6.5% 4.3% 5.9% 4.8% 7.7% 8.2%

図1:日本全体の電源構成(2024年速報) 出所:電力調査統計などよりISEP作成

図2:日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

図3:日本国内の全発電電力量に占める月別の自然エネルギーの割合(2023年速報)
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

図4: 日本国内の年間発電電力量と電源構成の推移
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

海外各国との自然エネルギー導入割合の比較

自然エネルギーの電力分野の導入では、1990年代以降、EU(欧州連合)での取り組みが世界的に先行して進んでおり、EU全体での発電電力量の割合も2024年にはEU27か国で47.5%に達し、化石燃料による発電の割合29.1%を大きく上回っている。これは日本国内の自然エネルギー電力の割合の2倍近くに相当する。太陽光発電および風力発電といった変動性自然エネルギー(VRE)の割合も欧州全体で28.6%と、日本国内の約12%の2倍以上に達している。

主要な欧州各国、アメリカおよび中国そして日本の自然エネルギーによる2024年の年間発電電力量の割合の内訳を図5に示す。この図はイギリスのシンクタンクEmberが推計した世界各国の電力部門に関する2024年の最新データ[3]に基づいている。変動性自然エネルギー(風力および太陽光)VREの割合がすでに69%に達しているデンマークでは年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合が88%に達しており、風力だけで58%ある。オーストリアでは、水力発電の割合が57%あり、風力12%や太陽光11%と合わせて自然エネルギーの割合が86.7%に達している。ポルトガルでは85.2%、スウェーデンでは69.5%、に達し、すでにドイツ(57.4%)、スペイン(57.2%)、イギリス (51.5%)においても自然エネルギーの割合が50%以上に達して、欧州全体の平均を上回っている。VREの割合はEU全体でも28.6%に達しているが、スペインやドイツでも43%に達している。一方、原発の比率が68%を超えるフランスでは自然エネルギーの割合は26%に留まる。

図5:欧州各国およびアメリカ・中国・日本の発電電力量に占める自然エネルギー等の割合の比較(2024年)
出所:EmberのデータよりISEP作成

1990年代から2023年までの欧州各国と日本の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移を比べてみると、欧州各国では2020年に向けて1990年代から着実に自然エネルギーの割合を増やしてきたことがわかる(図6)。デンマークでは、2000年の時点ですでに17%だったが、2010年の時点で30%を超え、2023年には87%に達しており、2030年までには自然エネルギー電力が100%を超えることを目指している[4]。デンマークでは、電力システムにおける2000年以降の20年間にわたる経験から、風力および太陽光の変動性自然エネルギーVREで電力の50%以上を賄うための統合ソリューションが電力システムや電力市場において実現している。

図6: 欧州各国および日本の自然エネルギー電力の導入実績・政策目標
出所:EU統計局、EmberデータなどからISEP作成

ドイツでは自然エネルギー電力の割合が2000年には7%程度だったが、その後、2010年には20%近くにまで増加し、2020年には45%に達し、2024年には57%に達している(図7)。ウクライナ危機により、ロシアへの天然ガス依存からの脱却を実現するため、2022年の新たなEEG法案(再生可能エネルギー法)では、再生可能エネルギー電力を2030年には80%以上、2035年には100%を目指すとしている。一方で、原発は2023年末までにゼロとなっており、2000年の29%から2024年には0%となっている。原発全廃と定められた2022年末に向けて着実に減少してきたが、天然ガスの供給懸念により、廃止を予定していた原発を2023年4月まで温存する措置がとられた。ドイツ国内で産出される褐炭を含む石炭の割合は、2000年には50%を占めていたが、2024年には22%まで減少しており、風力発電の割合よりも小さくなっている。さらに、2024年の太陽光発電の年間導入量が15GWに達して、日本の年間導入量2.5GWの約6倍になり、累積導入量も日本と同規模の約90GWになった(図8)。ドイツでは、2030年までの太陽光導入目標が215GW(日本の約2倍)となっており、年間導入目標も現状の9GWから22GWに増える。特に小規模太陽光については、税制優遇や手続きの簡素化が進んでおり、住宅など屋根上での導入を重点的に支援した制度により、年間導入量の約2/3を占めている。

図7: ドイツ国内での自然エネルギーの発電電力量と全発電電力量に占める比率の推移
出典:AGEB[5]、EmberデータよりISEP作成

図8:世界各国の太陽光発電設備の導入設備容量(2024年末) 出所:IRENAデータ

日本を含む世界各国が2023年12月のCOP28で合意したUAEコンセンサスでは、2030年までに自然エネルギー発電設備の容量を2022年と比べて世界全体で3倍にし、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍にすることを目指している。この2030年までに必要な自然エネルギー導入量は、IEA(国際エネルギー機関)[6]やIRENA(国際自然エネルギー機関)[7]のシナリオやレポート等ですでに示されており、2030年までに再エネの設備容量を2022年の3.4TWから3倍以上の11TWまで増やすことが必要となる。そして、その実現には年間1TW(1000GW)の新規導入が必要になる[8]。これに対して、2024年は世界全体で太陽光発電は450GW、風力発電は100GW以上が導入され、年間500GW(0.5TW)以上の再生可能エネルギー設備が導入されている(図9)。

図9: 世界の太陽光発電、風力発電および原子力発電の導入量の推移
出所:IRENA、IAEAなどのデータより作成

一方、太陽光発電を設置した需要側の蓄電池や電力系統の柔軟性向上のための系統蓄電池など定置用蓄電池の導入が各国で進んでいる。アゼルバイジャンで2024年11月に開催されたCOP29でも日本を含む60カ国以上が2030年までに蓄電池容量を6倍にする誓約に賛同している[9]。最も蓄電池の導入が進んでいるのは太陽光発電や風力発電の導入が世界第1位の中国であり、EUと米国がそれに続く(図10)。EUの中では太陽光発電の導入量が大きいドイツやイタリアで蓄電池の導入量が大きく、日本国内の導入量も同程度となっている。日本国内でも、蓄電容量で10GWh以上の定置用蓄電池が導入されており、これは国内の揚水発電の蓄電容量の1/10程度に相当する。世界的には、これまで電力システムの柔軟性を担ってきた揚水発電に匹敵する容量の蓄電池が導入されてきている。

図10: 世界各国の定置用蓄電池の累積導入量(2024年末)
出所:European Market Outlook for Battery Storage2025-2029、経産省資料などから作成

中国では、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進んだ。2024年には年間で風力発電の割合が9.8%、太陽光発電が8.3%でVRE(変動性自然エネルギー)の割合は18.1%に達している(図11)。水力も含めた自然エネルギーによる発電電力量の割合は33.6%に達している。一方、原発の割合は4.4%で、2019年以降ほぼ横ばいだったため、太陽光発電が原発の電力量を大幅に上回った。2024年の中国国内の年間発電電力量の規模(10,073TWh)は、EU(27か国)全体の約2744TWhの3.7倍あり、日本国内の1022TWhの10倍以上である。欧州および日本の発電電力量は横ばいか減少傾向にあるが、中国では経済成長と共に増加を続けており、この10年間で2倍以上になっている。

図11: 中国の自然エネルギーおよび原発の電力量の推移
出所:China Energy Portal およびEmberデータより作成

日本国内の電力需給における自然エネルギーの割合

日本全国のエリア毎に一般送配電事業者10社により毎月公開されている電力需給データに基づき系統電力需要に対する自然エネルギーの割合などを中心に2024年(暦年)の一年間のデータを集計した。日本国内の電力需給データについてはISEPのEnergy Chartでは公表されたデータから様々なグラフでインタラクティブに分かり易くデータを分析できる[10]

日本全体の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合は2024年(暦年)の平均値では23.2%となり、2023年の年平均22.5%から増加した(図12)。内訳としては太陽光発電の割合が10.6% となり、風力発電の1.3%と合わせて変動性自然エネルギーVREの割合は11.9%となった。太陽光は2023年の10.8%から減少しているが、水力発電の8.2%より割合が大きくなっている。バイオマス発電は前年の2.3%から2.8%に増えている。一方、2024年の原発の割合は9.8%となり、前年の9.0%から増加した。


図12: 月別の日本全国の電力需給における自然エネルギーおよび原発の割合(2024年)
出所:一般送配電事業社の電力需給データより作成

日本全体の自然エネルギーの電力需要に占める割合の月別の平均値では、2024年5月が32.2%と最も高くなっており、前年の32.5%から減少している。このときVRE(変動性自然エネルギー)の割合も最大で16.9%となり、前年5月の16.5%よりも高い。その内訳は、太陽光発電が15.4%、風力発電が1.5%となっている。1日の平均値では2024年5月3日に43.7%に達しており、VREについても同日の25.7%が最大だった。自然エネルギー割合の1時間値では同じ5月3日11時台の80.1% が1年間のピークで、太陽光が63.7%に達しており、風力発電の2.0%と合わせてVREのピーク値は65.7%になっている。ちなみに風力発電のピーク値は2024年10月20日未明の5.3%だった。

電力会社(一般送配電事業者)のエリア別では、2024年(暦年)の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合の平均値が最も高かったのは東北エリアの41.5%だった(図13)。太陽光が13.5%、風力が5.8%になり、VRE割合は19.3%となっているが、バイオマス発電は6.7%、地熱発電は1.5%で全国で最も高く、水力発電も14.0%と大きな割合を占めている。北海道エリアの自然エネルギー割合は40.1%で第2位だったが、風力発電の割合が9.7%と全国で最も高くなっており、VRE割合も20.3%で全国で最も高くなっている。2024年の東日本全体の平均では自然エネルギーの割合が22.2%と全国平均の22.8%を下回っている。これは東京エリアが14.9%に留まっていることが大きな要因となっている。一方で、VREの割合は12.0%となり、全国平均11.8%を上回っている。これは、風力発電の割合が2.1%で、全国平均の1.3%を上回っていることが要因になっている。

図13: エリア別の電力需給における自然エネルギーの割合(2024年)
出所:一般送配電事業社の電力需給データより作成

2024年の中西日本全体の自然エネルギーの割合は、24.0%と全国平均の23.2%を上回っているが、太陽光11.1%と風力0.6%を合わせてVREの割合は11.7%となっている。一方、東日本では稼働がほぼゼロ(0.1%)の原発が、中西日本では関西エリア、九州エリアおよび四国エリアで稼働しており、その割合はVREを大幅に上回る17.7%で、前年の10.7%からかなり増加している。自然エネルギーの割合が第3位の北陸電力エリアでは、2024年には37.1%に達しているが、太陽光は5.8%、風力の割合は0.5%でVRE割合は6.3%と比較的低い一方、水力発電の割合が28.5%と全国の中で最も高くなっている。自然エネルギーの割合が第4位の四国エリアでは、35.0%となり2023年の34.4%から増加したが、原発の割合は前年の21.7%から横ばいで21.9%だった。四国エリアでは、太陽光が16.2%で九州エリアと共に全国で最も割合が高く、風力2.0%を合わせたVREの割合が18.2%と北海道エリア(20.3%)や東北エリア(19.3%)に次いで全国の中で高いレベルになっている。九州エリアでは自然エネルギーの割合は29.9%で、VREの割合は17.1%だった。このうち太陽光は16.2%で、前年の15.8%より増加しており、風力は0.9%だった。一方で、原発の割合が34.5%に達して関西電力と共に全国で最も高くなっている。

2024年には1時間値で自然エネルギーが電力需要の100%を超えるエリアが、北海道、東北、北陸、四国、中国の5エリアになった(図10)。この中で、東北エリアでは、2024年4月21日11時台に自然エネルギーの電力需要に対する割合が131.5%に達した。このピーク時に太陽光が92.4%、風力が5.5%でVREの割合が97.9%だった。さらに、水力の24.9%、バイオマス6.6%を合わせて131.5%となっている。中国エリアで、自然エネルギーの割合が最大115.4%に達して、VREの割合も104.7%となっている(太陽光103.1%、風力4.1%)。出力抑制の割合が最も高い九州エリアでは、1時間値で太陽光の割合がピーク時に最大94.8%だった。VRE比率も最大83.7%に留まっている。一方、九州エリアでは、出力抑制前のVRE比率は、最大で113.9%に達しており、VREの出力抑制によりVRE比率は54%まで抑制されている(出力抑制率46%)。

九州エリアではVRE(太陽光および風力)の出力抑制が2018年から全国のエリアの中で実施されているが、2024年の1年間を通じたVREの出力抑制率は4.4%となり、2023年度の8.9%から大幅に減少した。九州エリアには約400万kWの原発があり、2024年は原発の電力量の割合は34.5%と前年並みだった。2023年4月頃までに東京エリアを除く他のエリアでもVREの出力抑制が始まっている。原発が稼働する四国エリアではVRE出力抑制の割合が2.9%、関西エリアが2.1%だったが、原発が稼働しないエリアとしては、北海道エリアが0.04%、北陸エリアが1.2%、中部エリアが0.33%、沖縄エリアが0.18%と低く抑えられている一方で、中国エリアが2.36%とVRE出力抑制の割合が高くなっている。これまでVREの出力抑制ルールの見直しが行われ、VREのオンライン制御の活用が進みつつあるが、ルールが複雑化し電力システム全体ではまだ最適化されていない状況にある。九州エリアでは地域間連系線は有効に活用されるようになってきているが、四国エリアや中国エリア、そして関西エリアを含めた広域での需給調整が十分に行われていない状況のため、他のエリアを含めてさらなる連系線の運用の改善と連系線の増強が求められる。揚水発電が十分に活用されている九州エリアとまだ十分に活用されていないエリアがあり、まずはVREのオンライン制御の促進および最適化、火力発電の最低出力の見直し、今後は蓄電池の活用、DR(デマンドレスポンス), VPP(バーチャルパワープラント)などの活用が求められる。

参考:

[1] 電力調査統計 http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/

[2] 推計では2021年10月以降の自家発、家庭用太陽光の自家消費量推計については前年値を用いているが、影響は小さいと考えられる。

[3] Ember(2025) “Global Electricity Review 2025”, https://ember-energy.org/latest-insights/global-electricity-review-2025/

[4] デンマーク・エネルギー庁「デンマークの電力システムにおける柔軟性の発展とその役割」https://www.isep.or.jp/archives/library/13612

[5] AGEB “STORMMIX 1990-2023” https://ag-energiebilanzen.de/

[6] IEA(2023) “Net Zero Roadmap”

[7] IRENA(2023) “World Energy Transitions Outlook 2023: 1.5°C Pathway”

[8] IRENA(2024) “Delivering on the UAE Consensus: Tracking progress toward tripling renewable energy capacity and doubling energy efficiency by 2030”

[9] COP29 Global Energy Storage and Grids Pledge https://cop29.az/en/pages/cop29-global-energy-storage-and-grids-pledge

[10] ISEP Energy Chart http://www.isep.or.jp/chart/