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2016年度の電力会社エリア毎の系統電力需給にみる自然エネルギーの割合(研究レポート)

当研究所は、下記の通り、2016年度の電力会社エリア毎の系統電力需給にみる自然エネルギーの割合について分析を行いました。

【研究レポート】2016年度の電力会社エリア毎の系統電力需給にみる自然エネルギーの割合 0.00 KB

【研究レポート】2016年度の電力会社エリア毎の系統電力需給にみる自然エネルギーの割合 ...

概要

  • 2016年度の系統電力需要に占める自然エネルギーの割合は全国平均で13.8%(前期15.6%、後期12.0%)だった(水力8.1%、太陽光4.4%、風力0.6%、バイオマス0.3%、地熱0.2%)。
  • 2016年度の電力会社エリア別の自然エネルギーの割合は北陸電力エリアの平均が27.4%で最大で、北海道と東北電力エリアが約23%となった一方、東京電力エリアは最小の7.8%にとどまる。
  • 月別では2016年5月の自然エネルギーの割合が20%で最大となる一方、1月が11%で最小。
  • 1時間のピーク値では2016年5月4日12時台に全国の系統電力需要に対する自然エネルギーの割合が約46%で最大になり、VRE(変動する自然エネルギー)の割合も最大31%に達した。
  • 四国電力エリアの自然エネルギーの割合はピーク値(2016年5月4日11時台)で最大79%に達した。九州電力エリアでは最大77%で、VREの割合が最大64%に達した(太陽光が最大62%)
  • 全国の太陽光発電の設備容量が、2016年度末に3800万kWに達したのに対し、ピーク時(2016年5月18日11時台)の供給量は2500万kW(約65%)だった。一方、風力発電の設備容量は330万kWにとどまり、ピーク時(2016年12月23日2時台)の供給量は200万kWだった。

本文

2016年4月より一般送配電事業者(旧一般電気事業者)から法令に基づき公開された電力会社エリア毎の系統電力需給の実績データ(電源種別、1時間値)[1]によると、2016年度(2016年4月~2017年3月)において日本全体の電力需要に対する自然エネルギーの割合の平均値は13.8%だった(内訳は水力8.1%、太陽光4.4%、風力0.6%、バイオマス0.3%、地熱0.2%)。一方で、原子力発電の割合の平均値は2.0%だった。月単位の平均では需要が小さく水力や太陽光の発電量の大きい2016年5月に約20%に達しているが、電力需要が最も大きく水力や太陽光の発電量が比較的小さい2017年1月には約11%と割合が小さくなっている(図1)。その結果、2016年度前期(4月~9月)の平均値は15.6%に達したが、後期(10月~3月)は12.0%となっている。太陽光発電は2016年5月に6.3%と最も大きな割合になっており、風力発電合わせた変動する自然エネルギー(VRE)の割合も5月に約7%に達している(表1)。

2016年度の中で1日間の電力需要に対する自然エネルギーの割合は、2016年5月4日に27.4%に達し、太陽光と風力を合わせたVREの割合も11.2%と最大となった。1日間の太陽光発電の割合は5月22日に最大の9.9%に達し、風力発電は12月23日の1.8%が最大だった。

1時間毎の自然エネルギーの割合は、2016年5月4日12時頃に年間(2016年度)を通じて最大の45.7%に達し、太陽光発電の割合もこの時間に29.7%と最大になり、VREの比率も31.3%となっている(図2)。昼間の太陽光発電の割合が高い時間帯には揚水発電による蓄電が行われ、需要がピークとなる夜間に蓄電した電気が使われている。揚水発電による年間を通じた蓄電量はまだ需要量の0.7%程度、供給量も0.8%程度であるが、ピーク時の蓄電量は需要量の約19%、供給量は約7%に達している。

[1] 電力広域的運営推進機関(OCCTO) 系統情報サービス「需給関連情報・供給区域別の供給実績」 https://www.occto.or.jp/keitoujouhou/index.html

図1:2016年度の月別の自然エネルギーの割合
(出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成)

図2:日本全体の1日の系統電力需給(2016年5月4日)
出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成

表1:2016年度の月別の自然エネルギーの割合
(出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成)

電力会社エリア別では、表2および図3に示すとおり2016年度の1年間の平均値で再生可能エネルギー比率について、北陸電力エリアが27.4%に達しており、北海道電力エリアは22.9%、東北電力エリアも22.8%に達している。ただし、このうち太陽光や風力などの変動する再生可能エネルギー(VRE)が占める割合は北陸では3%程度と低く、北海道や東北でも6%程度である。一方、中西日本の四国電力や九州電力ではVREの割合が高く、平均で約9%に達している。

図4には、2016年度末までに導入されている太陽光発電および風力発電の設備容量と2016年度の最大供給量の比較を示す。導入されている太陽光発電設備は、2016年度末の時点で日本全体で3800万kWに達する。東京電力エリアが最も多く、970万kWに達するが、九州電力エリアが700万kWでそれに続く。実際の太陽光による電力供給のピーク値としては東京電力エリアで790万kW近くとなり、設備容量に対して80%程度の比率となっているが、全国平均は65%程度にとどまる。風力発電については、日本全体の設備容量が330万kWで、東北電力エリアの100万kWが最も大きい。風力発電による電力供給のピーク値は、東北電力の75万kWで設備容量の約70%となっている。一方、東京電力エリアの風力発電の供給量はピーク時に33万kWに達し、設備容量の18万kWを大幅に超えている。これは、東北地方に導入された一部の風力発電の電気が直接、東京電力エリアに供給されているためと考えられる。

表4に示す通り、四国電力では、電力需要に対する自然エネルギー割合が、2016年5月4日11時台のピーク時(1時間値)には79%に達しており全国で最も高く(図6)、同日11時台には九州電力でも自然エネルギー割合が最大77%に達している(図7)。東日本でも、北海道電力エリアでピーク時に約71%に達し(図8)、東北電力も約62%に達している(図9)。電力需要が比較的大きい中部電力でも、5月4日11時台のピーク時に自然エネルギー割合が55%に達している(図10)。このピーク時のVRE(変動する自然エネルギー)の割合では、九州電力エリアが最も高く、5月4日11時台に64%(太陽光61%、風力3%)に達している。東北電力エリアや北海道電力エリアでは、太陽光のピークは29%程度だが、風力発電の割合がピーク時に8%~10%近くに達している。一方、東京電力エリアおよび関西電力エリアでは、ピーク時のVREの割合は20~25%程度にとどまる。

表2 地域毎の自然エネルギー割合の平均およびピーク時の最大値(2016年度)
出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成

※VRE:変動する自然エネルギー(Variable Renewable Energy)太陽光および風力発電

図3 電力会社エリア毎の再生可能エネルギー比率(2016年度)
出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成

表3 地域毎の自然エネルギー種別に対するピーク時の最大値(2016年度)
出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成

図4:系統電力需要に対する自然エネルギー割合の時間ピーク値(2016年度)
出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成

図5:太陽光と風力の設備容量(2016年度末)と最大供給量(2016年度)の比較
出所:資源エネルギー庁・各電力会社が公表する系統電力需給実績よりISEP作成

図6:四国電力エリアの1日の系統電力需給の実績(2016年5月4日)
出所:四国電力が公表する系統電力需給実績からISEP作成

図7:九州電力エリアの1日の系統電力需給の実績(2016年5月4日)
出所:九州電力が公表する系統電力需給実績からISEP作成

図8:北海道電力エリアの1日の系統電力需給の実績(2016年5月8日)
出所:北海道電力が公表する系統電力需給実績からISEP作成

図9:東北電力エリアの1日の系統電力需給の実績(2016年5月8日)
出所:東北電力が公表する系統電力需給実績からISEP作成

図10 中部電力エリアの1日の系統電力需給の実績(2016年5月4日)
出所:各電力会社が公表する系統電力需給実績からISEP作成

以上

【この研究レポートに関するお問い合わせ】
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
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担当:松原