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定着した原発ゼロの電力需給(研究報告)

当研究所は、2016年夏のピーク電力需給について検証を行い、下記の通り研究報告をまとめました。検証の結果、原発稼動ゼロを前提とする電力需給が全国的に定着しており、原発稼動ゼロでも、関西電力・四国電力・九州電力をはじめとする全ての電力会社で2016年夏のピーク需要時の電気は十分に足りることが明らかになりました。

要旨

再稼働は無用

福島第一原発事故から6年目の夏を迎えるが、原発稼動ゼロを前提とする電力需給が全国的に定着しており、原発稼動ゼロでも、関西電力・四国電力・九州電力をはじめとする全ての電力会社で2016年夏のピーク需要時の電気は十分に足りると評価される。電力需給の観点からは、川内原発も高浜・伊方・玄海原発もいずれも再稼働を急ぐ必要はない。

太陽光発電がピーク時7%・1300万kW以上を担う

昨(2015)年夏は、約2600万kWの太陽光発電がピーク時に7%・約1000万kWを担ったと推計された。今(2016)年夏にはおよそ3500万kWの太陽光発電が導入される見通しから、およそ1300万kWものピーク削減効果を期待できる。

供給の過小評価・需要の過大評価を続ける国

経産省の電力需給検証小委員会での2016年夏の電力需給検証は、これまでの考え方を前提にピーク需要を過大に評価し、揚水発電や再生可能エネルギー等の供給力を過小に評価している。しかし、九州電力の川内原発以外の原発の再稼動は想定していなくてもピーク需要時の供給予備力は十分に確保されることが示されており、ピーク時でも電力需給を十分に確保することができる。

節電政策・需要側管理をサボタージュする国

政府からの節電要請は行われていない。拡大してきた太陽光発電に加え、定着してきた節電効果をさらに強化するために、経産省や各電力会社がこれまで取り組んでいない「現実的な対策」や節電政策により、いっそうの深掘りができるはずだが、国はサボタージュしている。

原発稼働停止は化石燃料輸入費増大の真因ではない

経産省の電力需給検証では、原発稼働停止に伴う電力会社の化石燃料費用の増大を過度に強調している。化石燃料費用の増加分の7割は円安や化石燃料価格の上昇によるものであり、昨年までの減少傾向は、原油価格の下落による影響が大きい。経産省や電力会社が経済や経営への影響を懸念して原発の再稼動に固執し、原発に依存しないエネルギー政策や電力システム改革を迅速に進めてこなかったことが、化石燃料費用の追加負担が継続している真因である。

国は原発・環境エネルギー政策の方向転換を!

政府は時代錯誤のエネルギー基本計画や2030年のエネルギーミックスではなく、東京電力福島第一原発事故の教訓に真摯に学び、世界的な気候変動問題や原発の限界を踏まえて、自然エネルギー・エネルギー効率化・地域分散型を「3本柱」とする統合的なエネルギー政策を目指すべきである。

キーワード:原発ゼロ, 電力需給, ピーク需要, 太陽光発電