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定着した原発ゼロの電力需給~原発ゼロでの電力需給および経済的影響の評価~

当研究所は、福島第一原発事故後、5年目の夏を迎えるにあたり、原発ゼロでの電力需給およびその経済的影響の評価をおこなった。また、政府の検討するエネルギーミックスに対して、下記の通り政策を提言する。(本文PDF


【要旨と提言】

  • 福島第一原発事故後、5年目の夏を迎えて原発稼動ゼロを前提とする電力需給が定着しており、原発稼動ゼロでも、関西電力・九州電力をはじめとする全ての電力会社で2015年夏のピーク需要時の電気は十分に足りる。
  • 政府の2015年夏の電力需給検証は、旧来型の考え方によるもので、ピーク需要を過大に予測し、揚水発電や再生可能エネルギー等の供給力を過小に評価している。その政府試算でさえ一基の原発も再稼動せずに、ピーク需要時の供給予備力は確保されることが示されている。
  • ただし、政府が織り込んでいない「現実的な対策」(本来なら政府の役割)を行うことで、さらに余裕をもった電力需給を確保することができる。
  • 政府のエネルギー基本計画や電力需給検証では、原発停止に伴う化石燃料費用の増大を過度に強調し、意図的に誤解を与える説明をしている。正確には、以下のとおり。
    • 化石燃料購入費総額の増加分(3兆円超)の大半(7割)は円安や原油価格上昇による。
    • 2014年は減少傾向だったが、原油価格の一時的な下落によるもので楽観できない。
    • 政府や電力会社が原発再稼動に固執し、原発に依存しない電力改革を迅速に進めてこなかったことが、年間3兆円を超える経済的な追加負担が継続している真因である。
  • 政府は時代錯誤のエネルギーミックス案ではなく、福島第一原発事故の教訓に真摯に学び、自然エネルギー・エネルギー効率化・地域主導を「3本柱」とする「統合エネルギー政策」を目指すべきである。

1. はじめに

2011年3月の福島第一原発事故後、電力不足および大量エネルギー消費への反省もあり、2011年夏から2014年夏まで4年連続でピーク需要で2010年比11〜14%の節電を維持、日本全体で節電や省電力が定着、節電が進みつつある。2011年以降、全国の原発が相次ぎ停止し、2013年9月以来全ての原発が停止しているため、2014年は全く原発が動かない中で夏の需要ピークの時期を迎えた。原発依存度が高く、特に電力需給が厳しいとされている関西電力においても供給力に余裕があり、さらに周辺の中部・北陸・中国の各電力には電力の融通余力があった。

一方、政府(経産省)の電力需給検証小委員会において本(2015)年4月末に発表された報告書[1]では、2015年夏のピーク需要予測について、前年の節電の一部しか継続できないことを前提として4年続けて節電を過小評価した上で、節電を確実にする需要側の制度や政策の検討は極めて不十分なままであった。そのため、夏のピーク時も原発ゼロの想定をするものの、火力発電の故障リスク等の供給リスクによる電力需給の厳しさを関西電力などに対して強調している。しかし、結果的には経済的影響などに配慮して企業などになる節電目標の設定は見送られており、原発ゼロの電力需給はすっかり定着をしているように見える。一方で、政府や電力会社は原発停止に伴う化石燃料調達費用の増大をことさら強調しているが、本来、原発停止と無関係な円安や原油市場に連動した輸入価格の上昇を含み、原発の持つ巨額のリスク費用を軽視した試算を行っている。そもそも政府や経済界の原発への固執が、省エネや再エネ普及の先送りや電力システム改革の遅れにつながっており、年間3兆円を超える経済的な負担を結果的に招いていると言える。

本ペーパーでは、2015年夏の電力需要ピーク時に、日本全国の原発の再稼動が全くない原発ゼロの電力需給を前提に、政府の電力需給検証よりもさらに電力の需給について一定の余裕があることを各電力会社毎の詳細な分析により示す。さらに、安全性を大前提にしているため原発の再稼働は非常に困難な状況になっており、電力会社の原発再稼働への固執により2011年度以降の化石燃料調達費用の増大を結果的に招いていることを示す。

このように国民が負担する電気料金の上昇につながる原発代替のコストや、原発の維持コストや安全対策費用、巨額の災害リスク対応費用を考えれば、速やかに原発ゼロを前提としたエネルギー政策に移行することが望ましいと考えられる。これまでの実績や制約を踏まえれば、中長期的なエネルギーミックスや気候変動目標も原発ゼロを前提として策定されることが望ましい。よって、化石燃料の消費量を抑制する省エネルギー(節電を含む)やエネルギー効率化(熱利用の推進)、将来のメリットを見据えた再生可能エネルギーの本格的な導入こそが化石燃料調達費用の削減や地球温暖化対策につながるはずである。

2. 原発ゼロの電力需給の実績と予測

福島第一原発事故後、2011年夏には半分以上の原発が、2012〜2013年には関西電力の2基以外の原発が停止、2014年夏には全原発が停止したが、企業および家庭の節電への取組みが継続してあり、夏のピーク電力需要は全国で2010年度比10〜14%削減がみられた(図1)。今後、原発ゼロでも、賢い節電対策をもとに夏のピーク時の電力需給を満たせることは、2011年〜2014年夏の電力需給実績から立証され、原発ゼロの電力需要がすっかり定着している。

図1 9電力会社の最大電力の削減率(2010年夏比)

政府(経産省)の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力需給検証小委員会は、2015年夏季の電力需給見通しを含む「電力需給検証小委員会報告書」を2015年4月に公表した(以下、「政府予測」とする)。この政府予測の中では、2015年夏の電力需給見通しについて、昨年2014年夏の節電が「ある程度定着」し、全ての原発が稼働しないことを前提に、沖縄電力を除く全国9電力全体で7.0%の予備率(ピーク時の供給力から需要を引いたもの)が確保できるとした。中西日本6電力(中部、北陸、関西、中国、四国、九州の各電力)でも4.9%、原発停止により電力需給が厳しいと言われている関西電力や九州電力でも3.0%の予備率が確保できるとしている。つまり、政府予測による電力需給見通しでも、少なくとも電力需給の面から原発の再稼働はまったく必要ないことが立証されている。

福島第一原発事故以降の節電への取組みをさらに進めれば、2015年夏には、需要側の対策として、エネルギー管理の根本的見直しや投資回収可能な省エネ投資等など、節電をスマートな方法で実施したり、電力会社がピーク時に節電を促す各種のインセンティブのしくみを設けたり、アグリゲーターに委託することにより、ピーク時の電力需要をさらに抑えることが考えられる【注1】。また、発電設備の点検時期などを再検討して夏の工事時期をずらし【注2】、揚水発電所もフルに活用し【注3】、地域間連系線も活用し、供給力をさらに見直すことができる。

これらの追加対策により、2015年夏に全原発を停止させたままで、夏の電力需要ピーク時にもさらに余裕をもった電力需給にすることも可能である(図2、図3)。その結果、図4に示すように、手堅い想定でも全国で16%、東日本3社で17%、中西日本6社で16%の電力需給の余裕(予備率)を確保できると本ペーパーでは試算している【注4】

【政府予測が過大需要・過小供給となる要因】

一方、政府予測での電力需給見通しでは、電力会社から提出された報告徴収のデータを基礎にしているため、電力需要は大きく、電力供給は小さく試算されている。

(1)  省エネ・節電の無策

政府予測の電力需要では、前年実績分の中で節電の「定着」が何%程度あるかという想定に終始(今年は節電を継続するかのアンケート結果を採用)、前年実績より常に小さく予測されてきた。一方で、経済拡大、猛暑、など需要拡大要因は幅広く想定された。政府予測では、政策手法や電気料金制度などによって需要は大きく変わりうるという視点が欠けており、そうした実効的な省エネ・節電政策を具体化する検討も遅れている。例えば、需給調整契約のうち計画調整契約は、2014年の490万kWから2015年夏には464万kWへと減少しているとおり、すでに実施している需要抑制の対策さえ後退している。

表1 電力会社報告に基づく政府予測

(2) 太陽光や風力の過小評価

一方、供給側では、まず太陽光や風力の著しい過小評価がある。2014年夏は、およそ1600万kWの太陽光発電の設備容量に対して、政府は約17%にあたる268万kWの供給力を見込んでいたが、実績は政府見込みの2倍を超える633万kWの供給力があった。

本(2015)年夏には、全国の太陽光発電の設備容量は約2650万kWとなる見込みだが、政府は昨年と同程度となる2割弱の供給力(509万kW)しか見込んでおらず、過小評価といわざるを得ない。

(3)  揚水発電・火力定期検査等、他の供給力の過小評価

政府予測の電力供給では、揚水発電の供給力を昼間発電時間の長さから設備能力と比べて8割程度と想定しているほか、火力発電などの夏季の定期検査等の実施(7〜8月にかかるものは9社42基、7〜8月全休となるのは3基)、非常用電源の撤去(前年比9万kW減)、卸電力など他社受電減(自家発は昨年比増)など、いくつかの供給力を過小評価している点がある。

(4)  ISEP予測と政府予測との電力需給の差

ISEP予測(本ペーパー)と、政府予測との電力需給の差を予備率(供給力と需要の比率)で示したものが図4である。差の多くは、政府予測における需要の過大想定(節電対策の過小評価)、火力発電所による供給の過小予測(主に真夏の定期検査や工事による)、揚水発電の供給力の過小想定の3点である。追加的な対策などでこれらの想定を見直すことで図2でISEPが予測するような余裕をもった2015年夏季のピーク時の電力需給を実現できる。

さらに、再生可能エネルギー(太陽光など)の増加、卸電力や自家発の2014年なみの活用、需給調整契約のさらなる活用など表1に示された対策を最大限実施することにより、需要と供給の両面での追加対策が可能である。これらの対策により、このまま原発を再稼働しない原発ゼロを前提としても、2014年夏なみのスマートな節電で、全ての電力会社の管内で2015年夏のピーク時の電力需要を賄うことが可能である。

図2 9電力会社の最大電力の削減率(2010年夏比)

図3: 夏のピーク時の供給予備力および予備率の比較(政府予測およびISEP予測)

図4 政府予測とISEP予測との需給比較

3. 原発ゼロの経済的影響の評価

(1)  意図的に国民を誤解させる政府

政府のエネルギー基本計画や電力需給検証では、原発ゼロの経済的影響として2011年度以降の原発停止に伴う化石燃料費用の増大を過度に強調し、意図的に誤解を与える説明をしている。例えば、福島第一原発事故以前と同じように原発を利用した場合と比べて2014年度の燃料費は約3.4兆円増加したとしている。しかし、化石燃料購入費総額の増加分(3兆円超)の大半(7割)は円安や原油価格上昇によることは、過去のISEPペーパーで何度も指摘し、国会審議でも指摘にしているにもかかわらず、政府はその間違いを改めようとしない。

これは、政府が原発再稼動を実現するために、虚偽を押し通しても意図的に国民を誤解させようとしていると指弾せざるを得ない。

(2)  化石燃料費用増大の7割は円安と原油高

図5に示すように、2014年度は10電力会社の火力発電による化石燃料購入費は推定で総額6.8兆円、2010年度比3.6兆円増、2.1倍になったが、化石燃料使用量の増加は1.3倍に留まり、円安や原油価格上昇による化石燃料(特に原油やLNG)の購入単価(輸入価格から推計)の上昇が購入費増加の要因の約7割を占めている。仮に化石燃料の購入単価一定であったとすれば、化石燃料購入費は4.3兆円(すなわち原発停止に伴う燃料費の増加は1.1兆円)にとどまったと推定される。図6に示すように、3兆円超の化石燃料購入費総額増加の大半(2.5兆円・3分の2)は円安や原油価格上昇による購入単価の上昇によるものである。たとえ2010年度と同じ化石燃料使用量だとしても購入単価の上昇により化石燃料購入費は1.8兆円増加する。

(3)  2014年の化石燃料費用は下落したが一時的

2014年の化石燃料費用は減少したが、これは原油価格の一時的な下落によるものにすぎず、化石燃料価格は世界市場や為替相場に左右されるため、先行きは楽観はできない。化石燃料調達のための経済的な追加的な負担年間3兆円を超え、これまでの総額は累積10兆円以上に達している。政府や電力会社が原発再稼働に固執し、電力構造の転換を怠ってきたことが結果的に招いた真因である。原発ゼロの現状を踏まえたエネルギー政策を迅速に進めてこなかったことが、電気料金上昇や電力会社の経営問題などの経済的影響の大きな要因であり、それに円安や化石燃料価格の国際的な上昇が拍車をかける結果となっている。

図5 火力発電の燃料購入量と燃料購入費

図6 火力発電燃料購入費(単価変動と単価一定)

(4) 化石燃料輸入費用は原発依存が生んだ構造的な問題

福島第一原発事故の有無に関わらず、日本は、抜本的な省エネルギー・エネルギー効率の向上や再生可能エネルギー普及をエネルギー政策の中心に据えて行うべきであった。しかし、政府や電力会社は長年にわたって原発・化石燃料を中心に据え、省エネルギー・エネルギー効率の向上や再生可能エネルギー普及をを軽視して、大胆なエネルギーシフトを促す政策が先送り・後回しにしてきた。その帰結として、原発代替が石油火力と旧型LNG火力になった経緯がある。

すなわち、コストの高い石油火発再利用が増加した原因は過去の原発優先、および今日の原発の再稼働優先の電力会社の姿勢と、それを後押しする政府の愚策のツケにほかならない。今後も原発維持・再稼働優先を続け、省エネルギーや再生可能エネルギー普及を先送りし、それどころか原発枠確保のために再生可能エネルギーを制限するような政策を続ければ、これまでどおりの化石燃料依存も続き、この3〜4兆円のコスト負担が、将来にわたって化石燃料単価の高騰や円安でさらに膨らむ恐れがある。

(5)  原発に関する過剰な楽観

しかし、すでに福島第一原発の6基がすでに廃止され、さらに5基の廃炉が決まる中、残りの原発についても安全性の確保が再稼働の大前提であることから、安全について保証しない原子力規制委員会の判断だけでは再稼働は極めて難しい。そもそも原発を再稼働するには、新規制基準適合のための追加工事のため巨額の費用がかかる(政府試算でも1基平均601億円だが、浜岡原発は堤防建設だけでそれ以上)。その他に、電力会社がそのまま費用として負担しない社会的コストとして、原発事故・災害への備え、避難計画や体制整備などの巨額の行政コストがかかり、税金や電気料金につけ回しされる。

さらに、原発には福島第一原発の損害賠償で示されているように数十兆円規模の巨額の原子力災害リスクもあり、現状ではそれを共済方式で原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて9電力会社が長期に渡り負担することになっている。本来、民間保険にしてコストの「見える化」を図ると原発への保険料はkWhあたり最大8000円になるとの試算もある。「原発を停止するとコストがかかる」と言われるのは3.11以前の状況に戻ることを前提としており、現実には現在の原発ゼロの状況をベースラインと考えることが必要である。原子力の燃料費だけで安価に原発が再稼働できるというのは幻想である。

(6)  省エネルギー、再生可能エネルギーこそがもっとも経済的で持続的な選択

それに対して、省エネルギー、再生可能エネルギー普及を本格的にエネルギー政策の中心として進めれば、火力発電の発電量の減少で化石燃料費の大幅な削減となり、温暖化対策・エネルギー安全保障と共に、コスト削減を両立させることができる。新規制基準に適合するための安全対策で、仮に全部が再稼働を目指すと政府試算でも約2兆円の追加コストが必要になり、実際にはこの数倍になる可能性がある。再稼働優先政策は、原発追加工事コストおよび維持費と、再稼働待ちでつなぎに石油火力と旧型LNG火力を使う燃料費とのダブルの負担を強いるものでもある。しかし、原発ゼロをエネルギー政策として決定し、全ての原発を廃炉にすることにより、これらの維持費用や追加コストが不要となる。

省エネルギーに関しては、これまでの節電効果で控えめに見ても年間1兆円の化石燃料節約に貢献している。これをいっそう加速することで、輸入する化石燃料の総費用を継続的に削減できる。

再生可能エネルギーに関しては、短期的なコスト高を批判する声がある。そうした批判は、もっとも重要な2点を見逃している。一つは、再生可能エネルギーの費用は主に国内に投資されてGDPを改善し、GDPを直接マイナスにする化石燃料輸入とはお金の流れが真逆であることである。もう一つは、再エネの費用負担は一時的なもので、やがては(10〜20年スパンで)追加的な費用負担をせずに普及してゆき、原発ゼロはもちろん、化石燃料の輸入をどんどん削減してゆけることである。

4. 「3.11福島第一原発事故」の教訓を踏まえた現実的なエネルギー政策を

原発に依存する電力会社の経営問題、行き場のない使用済み核燃料、現実的な廃炉プログラムを踏まえた上で、省エネルギーや再生可能エネルギーを中心とした中長期的なエネルギーミックス、国際的な義務を果たし得る地球温暖化対策、待ったなしの電力システム改革を一体的に実現してゆく「統合エネルギー政策」が不可欠である。

総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し小委員会[2]では、2030年のエネルギーミックス(電源構成)として、「ベースロード電源」比率を6割以上とするほか、原発を20%以上維持しつつ自然エネルギーを24%未満に抑え込む「長期エネルギー需給見通し(案)」(経産省案)が2015年6月1日に提示され、パブコメが行われている[3]。この経産省案のエネルギーミックスは、福島第一原発事故の教訓からいっさい学んでないばかりか、グローバルに進みつつあるエネルギーの歴史的な大転換に対して完全に逆行している。これに対し、3.11直後から「エネルギーシフト」の国論をリードしてきた環境エネルギー政策研究所(ISEP)として、日本が目指すべきエネルギーシフトの方向性を以下の項目の様に提言している[4]

「歴史的な流れに従ったエネルギー大転換を」~エネルギーミックスへの政策提言

(1)    自然エネルギー・エネルギー効率化・地域主導を「3本柱」に

(2)    省エネ・効率化の深掘りとトリプル・デカップリング(切り離し戦略)

(3)    自然エネルギーを基幹エネルギーに位置づけるべき

(4)    地域主導・分散ネットワーク型エネルギーへの大転換

(5)    「3.11福島第一原発事故」の教訓を踏まえた現実的な脱原発政策を

(6)    気候変動問題への国際的な責任を果たすエネルギー転換を

(7)    国民参加の開かれた議論の場の必要性

(8) ISEPが提言する「エネルギーミックス」(自然エネルギー100%を目指す)

この中で、3.11福島第一原発事故の教訓を踏まえた原子力政策の根底からの見直しが、今後のエネルギー政策の大前提となるとして、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた国のエネルギー基本計画は、3.11以前の「原発神話」をそのまま復活させたものでしかない。今なお混沌とした状況の続く福島第一原発事故の処理は、半永久的に続くおそれが大きい。また、事実上の倒産会社である東京電力も、今からでも破たん処理されるべきであり、経営者および規制当局の責任が追求されなければならない。さらに本来必要な水準の原子力損害賠償措置への見直しを踏まえれば、原発ゼロこそがもっとも経済的で現実的な選択肢であることは明らかである。原発ゼロを前提に、廃炉や核のゴミ、実質的に破たんしている核燃料サイクルの後始末など原発が直面している難題に向き合って、国民的な対話で合意と改善を目指す必要がある。
以上

[1] 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 電力需給検証小委員会 報告書(2015年4月) http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_jukyu/report_004.html

[2] 総合資源エネルギー調査会 長期エネルギー需給見通し小委員会 http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/#mitoshi

[3] パブコメ「長期エネルギー需給見通し策定に向けた御意見の募集について」(2015年6月2日) http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0

[4] ISEP政策提言「歴史的な流れに従ったエネルギー大転換を」(2015年4月28日) https://www.isep.or.jp/library/7557

【注1】 需要は単なる「予測」ではなく政策の変数である。2013年は記録的猛暑でかつ政策も乏しかったので、平年なみに抑える対策・政策を前提にすればもっと削減することも可能である。

【注2】 夏に定期検査や工事を実施する火力発電所42機、揚水発電を含む水力発電10機が電力需給検証小委員会で示されている。工事を実施する電力会社側の理由も紹介されているが、一部を除き工事を夏季の7〜8月に実施しなければならない理由は示されていない。

【注3】 揚水発電は放水量をコントロールできるので、不足kWの小さい時間は放水も小さく、ピーク近くでは大きくすれば、極端に放水時間が長い事態でなければピー ク時には容量通りの発電が可能である。電力需給検証小委員会では、設備容量と供給力の差、すなわちあえて設備容量通りの供給力を見込まない電力会社側の理 由を紹介しているが、ピーク時に見込めない理由は示されていない。また、実際の対策は、デマンドレスポンス、ピーク料金、随時調整等を活用した需要減と揚 水発電活用等供給増を機動的にくみあわせればさらに余裕が増すことになる。

【注4】 他に、需給調整契約のうち随時調整契約(逼迫時の停止)、太陽光発電の供給力の過小評価などでさらに余裕をもたせることができる。