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【プレスリリース】エネルギーシナリオ市民評価パネル−報告書「エネルギー・環境のシナリオの論点」発表

【エネルギーシナリオ市民評価パネル】
報告書「エネルギー・環境のシナリオの論点」発表

「エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)」について
各種エネルギーシナリオや、関連論文・情報について評価・分析をおこない、エネルギー・シフトを進める観点からその成果をとりまとめ、発信する市民パネル。エネルギーに関わる主なNGO(環境エネルギー政策研究所、気候ネットワーク、WWFジャパン、FoE Japan、グリーンピース・ジャパン、環境自治体会議環境政策研究所、原子力資料情報室、原水爆禁止日本国民会議、CASA等)のメンバーが参加し、共同作業を行う。

「エネルギー・環境のシナリオの論点」の主な内容
政府のエネルギー・地球温暖化政策の複数の選択肢が、国民に示されようとしている。報告書では、2012年夏に決定予定のエネルギーと地球温暖化対策のあり方を考える上で、重要な論点について検討し、注意してみるべき経済や産業のあり方、社会の選択肢とその意味を示している。さらに、各NGO提案のシナリオに共通するビジョンとその実現可能性を検討している

○要約(抜粋)
・21世紀に生きる私たちは、さまざまな深刻な課題に直面している。原発事故を経験したことによる、環境・社会的諸課題も深刻である。原発、気候変動、化石燃料の限界と制約を無視して、未来をバラ色に自由に選ぶ選択肢は私たちには残されていない。

・日本の政策議論では、今もなお経済成長とともにエネルギーが増えると認識されている。2030年の産業の生産量や貨物輸送量、家庭や業務の活動量を右肩上がりで過大に想定した上で、「省エネは難しい」と議論することは問題である。今後は、資源・環境制約を前提に、エネルギー・CO2を減らすことで環境負荷を減らしながら、経済を発展させ雇用を増やすビジョンを描くことが必須である。

・同じ負担でも、国内で循環する再生可能エネルギーへのお金、海外へ流出するだけの化石燃料へのお金、エネルギーコスト低減効果が期待できる省エネへのお金それぞれで意味が異なる。再生可能エネルギーへの投資は高騰する化石燃料負担の抑制効果がある。また、現世代の負担を軽くすることは、将来世代に負担を先送りすることを意味する。

・原発立地地域の経済に関しては、地域住民に帰属するメリットには他地域と特段の差が見られない。福井県の場合、原発を停止する代わりに県内での他の分野の生産比率を向上させれば、同じだけの雇用効果が得られる。また原発運転存続より、廃炉事業の方が県内の経済効果が期待できる。

・エネルギー社会の未来像は、大きく「原発温存社会」・「化石燃料使い切り社会」・「省エネ・自然エネルギー切り替え社会」の3つが想定できる。原発温存社会は、原発関連ビジネスには将来性がなく、経済合理性もない中でこれを選ぶことは、事故後日本が何も決断しない社会に等しい。「化石燃料使い切り社会」は、環境破壊の道であり、今後の経済優位性の低下、供給リスクなど、不安定な社会となる。「省エネ・自然エネ切り替え社会」は、最も持続可能な選択肢である。

・電力システムに関しては、従来の「大規模集約」型から「地域分散」型へのシフトをどう進めるかは私たちの選択でなる。電力会社の地域独占によって発電から送配電、小売りまでを一括管理するシステムは、再生可能エネルギーの普及を阻害してきた最大の要因でもある。地域に分散する再生可能エネルギーを増やすために、広域に送電を統合して中央制御を行うシステム、発送電分離、再生可能エネルギーの系統への優先接続、需要マネジメントシステムなどの整備が必要となる。

・環境NGO5団体が出したシナリオと、政府系のシナリオとの違いは、①原発を廃止することを前提としていること、②より大きな省エネの可能性を示しており、なかでも産業部門の削減率が大きいこと、③将来の再生可能エネルギー中心の社会を想定し、再生可能エネルギーの大幅普及を見込んでいること、④CO2削減として、2020年に90年比25%を達成し、2030年には46~58%の削減を見込んでいること、などに顕著にみられる。

・省エネ・温室効果ガス排出削減の実現可能性は十分にあるが、過小評価されている。原発とCO2はトレードオフではなく、省エネの強化で原発を減らしながらCO2を減らすことができる。大幅な省エネの実現には、エネルギー消費の多い、発電部門・産業部門の熱利用、効率向上、リサイクル割合の増加、オーバースペックの解消、石炭から天然ガスへのシフト等に余地がある。キャップ&トレード型の排出量取引制度、より効果的な炭素税の導入、石炭規制、住宅・建築物対策などの政策の導入も求められる。

・再生可能エネルギーについて、国内の導入ポテンシャルは非常に大きい。指摘されるさまざまな課題は、将来に向けて解決が可能である。割高な発電コストは、むしろ、化石燃料依存・原発依存のコストに予測される大幅な上昇に比べ、近い将来は安くなる。電力システムの課題は、広域での系統運用を実現し、出力調整、需要側のマネジメントシステムを組み合わせれば、蓄電池などコストがかかる方法に頼らず解決が可能である。雇用効果は大規模集約型発電システムの場合よりも大きいとされる。

○勧告
・原発、気候変動、化石燃料の限界と制約を踏まえれば、私たちには、「省エネ・自然エネ切り替え社会」を選ぶしか道はない。これからの日本では、2030年には確実に原発ゼロとなっている社会をめざし、具体的なタイムスケジュール、工程表を策定すること

・脱原発社会は、気候変動問題を犠牲にすることでも、経済を犠牲にすることでもないことを、本報告書で明らかにした。電力システムを改革し、産業構造を転換し、新たな経済・産業を興していくことで、日本を再生する方針を明確に示すこと

・明確な方針の下、脱原発とともに、省エネ目標、再生可能エネルギー導入目標、温室効果ガス排出削減目標を、本報告書の市民団体のシナリオに基づき野心的に設定すること

・上記目標を達成するために、具体的な政策・措置の導入、既存の政策の見直しを速やかに実施し、今後もその見直し・強化を取っていくことが可能なプロセスを構築すること

・選択肢の決定の際には、民意を限りなく公正に反映するべく、国民的議論をおこない、民主的に日本のこれからのあり方について決定すること

■ このプレスリリースに関するお問い合わせ

エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)
Tel: 03-3263-9210(気候ネットワーク内) tokyo@kikonet.org

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