文字サイズ
標準
拡大

REN21「自然エネルギー世界白書2021」公表

国際的な自然エネルギー政策ネットワーク組織 REN21(本部:フランス、パリ)は、2021年6月15日「自然エネルギー世界白書 2021」を公表しました。

「あらゆる経済活動の重要業績評価指標に自然エネルギーを含めよう」と提言し、目標と行動との乖離に警鐘を鳴らしている

  • G20のうち15ヵ国が全分野を対象とした2020年の自然エネルギー目標を定めていない
  • この10年間、エネルギー消費に占める化石燃料のシェアは減少しなかった
  • 自然エネルギー電力は既存の石炭火力発電を打ちまかしている

2020年は大きな変革期となるかもしれない。世界経済はコロナ禍によって壊滅的な打撃を被った。一次エネルギー需要は4%減少した。しかし、この歴史的な減少にも関わらず、地球最大の汚染主体であるG20は、自ら設定した野心的とは言えない自然エネルギー目標をなんとか達成したか、未達成という結果に終わった。しかし、自然エネルギーによる健康、気候変動、雇用創出といった便益に議論の余地はない。REN21が本日公表した「自然エネルギー世界白書2021」(以下、本白書)は、クリーンでより健康的でより公平なエネルギーの未来に向けて必要となるパラダイムシフトから、まだ私たちは程遠いことを示している。

エネルギー全体に占める化石燃料の割合は10年前と同様に高い水準にあり(当時80.3%、現在80.2%)、自然エネルギーの割合は若干上昇した程度である。昨年のエネルギー消費の歴史的な減少にも関わらず、2020年の自然エネルギー目標を設定していたG20のうち5ヵ国は、目標達成に苦労していた。他の15ヵ国は目標すら設定していない[1]。ラナ・アディブ(Rana Adib)REN21事務局長は「直近10年の気候政策に関する約束は空疎な言葉でしかなかったという不都合な真実に気づきつつある。最終エネルギー消費において化石燃料の占める割合は1インチも動かなかった」と指摘する。「化石燃料から脱却し自然エネルギーを新しい標準にすることは、私たちが取りうる最も有効な取り組みである」。

自然エネルギーへの転換は、必要かつ可能であるだけでなく、ビジネスでも合理的である。化石燃料は気候変動の原因であり、生物多様性の損失や汚染に大きく加担している。化石燃料から自然エネルギーへの転換は必要なステップであり、自然エネルギーを新しい標準に据えることはコストや技術の問題ではない。

電力分野はすでに大きな進歩を遂げている。今日、ほぼすべての新しい発電容量は自然エネルギーのものである[2]。2020年に世界で256GW以上が追加され、前年比約30%増を記録している。現在では、中国、EU、インド、米国を含むより多くの地域において、既存の石炭火力発電を運転するよりも、風力発電や太陽光発電を新設する方が低コストである。この状況は他の部門においても再現可能であるし、再現されるべきである。

サム・キミンス(Sam Kimmins)RE100代表は「自然エネルギーへの転換は、ビジネス面でも環境面でも理にかなっているため、加速している。自然エネルギー電力はすでに数百万もの雇用を生み、ビジネス資金の節約にもなり、数百万の人々がエネルギーにアクセスできるようになった。しかし、政府とビジネス界は、環境のためだけでなく、自然エネルギー電力によって賄われる21世紀の経済で競争力を維持するために、より速いペースで転換を推し進めていく必要がある。」と指摘する。

復興政策は自然エネルギーの便益を無視して化石燃料依存経済に資金を拠出する

2020年には、気候災害に対するより強い取り組みを約束する傾向があったと本報告書は指摘している。ここには中国、日本、韓国による炭素排出量正味ゼロ目標も含んでいる。グリーン経済復興への資金提供の発表とともに、第二次世界大戦後のマーシャルプラン[3]よりも公的支出を大きくすることで、2020年を世界全体で気候経済と自然エネルギーのためのリセットボタンを押す年にするはずであった。しかし、転換を推進する代わりに、復興パッケージは、自然エネルギーの6倍の資金を化石燃料に提供している。

本白書は根源的な問題を提起している。コロナ禍を転換の機会とすることから世界を遠ざけているものは何か?ステファン・ジンガー(Stephan Singer)博士 CAN International 上級アドバイザーは「コロナ禍は炭素による汚染を減らし化石燃料業界からの抵抗を打ち破るまたとない機会だったが、残念なことに多くの政府はそれを活用しなかった。政府には企業の利益が重要であり、気候変動でも人々の健康でもないという苦い教訓を私たちは得たのだ。」と指摘する。

あらゆる経済活動のKPIに自然エネルギーを含めよう

本白書は、政府があらゆる分野で自然エネルギーをもっと促進しなければならないと明確に示している。簡単なことではないが、その努力を大幅に増やさなければ、機会の窓は閉ざされる。ラナ・アディブ(Rana Adib)REN21事務局長「政府は、自然エネルギーを支援するだけでなく化石燃料設備の大幅な縮小も推進するべきだ。こうした前進をより加速するためには、自然エネルギーの利用をあらゆる経済活動、あらゆる予算、あらゆる公共調達における重要業績評価指標(KPI)とする必要がある。すなわち、すべての省庁は自然エネルギーへの転換のための短期目標と長期目標と計画を設定する必要があり、それらは化石燃料の明確な廃止期限とセットであるべきだ」と結論付ける。

本白書では日本の2020年のトピックスとして下記の点を明らかにしている:

  • 日本の2020年の太陽光発電の新設は、4年間の減少の後、前年比16%増の8.2GWの容量を追加しました。また風力発電は、2020年に前年の導入量の2倍となる約0.6GWの容量を追加し、記録的な量となりました。日本は、浮体式風力発電所を含む、初めての洋上風力発電の入札を開始しました。
  • 洋上風力発電を2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000〜4,500万kWを導入するという「洋上風力産業ビジョン」を発表しました。
  • 日本は、2020年に10MWの太陽光発電由来の水素製造施設を用いて自然エネルギーによる水素製造の最高記録を達成しました。この施設は、2011年に発災した東京電力福島第一原子力発電所事故の現場から近い福島県に設置されています。
  • 日本は、自然エネルギー由来の電力で充電することを条件に、電気自動車への補助金を増額する計画を発表し、オーストリア、ドイツと並び、こうした政策を持つ3カ国のうちの1つとなりました。
  • 日本は世界でも有数のヒートポンプの市場です。空気熱源ヒートポンプが圧倒的に多く、2020年のヒートポンプ販売台数は若干減少しました。また、日本は給湯用ヒートポンプの重要な市場であり、2020年の販売台数は50万台以上で、2015年から30%増加しています。
  • 日本の「RE-Users」プラットホームでは、企業のエネルギー利用者が情報やベストプラクティスを共有することで、国内での自然エネルギー調達の加速を促しており、サミットも毎年開催しています。

自然エネルギーの割合と目標:G20での日本の位置

日本は、カーボンニュートラルの実現に向けて、2050年までに自然エネルギーによる発電電力量を50〜60%にするという参考値を示した。2019年の日本の最終エネルギー消費量(TFEC)に占める自然エネルギーの割合は約8%でした。

日本は、長期的なゴールは設定したものの、最終エネルギー消費量に対する2020年の具体的な自然エネルギー目標を、幾つかの主要経済国とは異なり、設定していませんでした。実際、最終エネルギー消費量に占める自然エネルギーの割合の目標を設定しているのは、EU-27、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの5カ国のみでした。

温室効果ガス排出量実質ゼロの目標[4]や自然エネルギー割合目標は、実際に自然エネルギーの導入につながるのでしょうか?目標は、各国に責任を負わせることができる拘束力のある目標であるため、必要です。実質ゼロ目標を設定するだけでは、自然エネルギーへの関心が高まるとも、自然エネルギーの目標達成に成功するとも限りません。どのような目標であっても、その目標を確実に達成するためには、しっかりとした政策や規制が必要です。


[1] G20は、需要部門(電力・運輸・冷暖房・産業)全てを含む全最終需要量(TFEC)における自然エネルギー目標を定めていない。本プレスリリース最後のG20図を参照のこと。
[2] 2020年に増えた新規発電容量(正味)の83%を自然エネルギーが占めている。
[3] マーシャルプラン(正式には欧州復興計画、ERP)は1948年に承認された米国のイニシアチブであり、西ヨーロッパに国外からの援助を行うものである。米国は第二次世界大戦後の西ヨーロッパ諸国に対し、経済復興計画として130億ドル以上(2020年では1300億ドル相当)を拠出した。
[4] REN21による実質ゼロ目標の概要はこちらからご覧いただけます。ren21.net/net-zero-basics/


REN21と自然エネルギー世界白書について

REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)は科学者、学術機関、政府、NGO、産業団体などの自然エネルギーの専門家による唯一の国際的なコミュニティです。REN21は政策決定者に対して技術、政策、市場の世界的な進展に関する最新の事実や情報、査読済みの分析を提供します。REN21は、政策決定者に自然エネルギーへの移行を促し、実現させることを目的としています。

年刊の発行物である自然エネルギー世界白書は自然エネルギーに関するおそらく世界で最も包括的かつ多数の著者によるオンラインの報告書です。2021年版の世界白書は200人以上の共同著者により作成されています。


レポート本文、インフォグラフィック、図、国および地域のファクトシートはREN21のWebサイトからダウンロードできます(英語)

REN 21 自然エネルギー世界白書 – ren21.net/gsr


環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、本白書の日本関連データの取りまとめを行うと共に、飯田哲也所長がREN21の理事を務め、エリック・マーティノー(シニア・リサーチフェロー)が、この「自然エネルギー世界白書」の2005年の発行から中心的な役割を担ってきました。

さらに2013年1月にはREN21と共同で「世界自然エネルギー未来白書」を編纂し、発行しています。自然エネルギー世界白書」特集ページからもダウンロードできます。ISEPによる日本語翻訳版もあります。

日本国内の自然エネルギー関連の情報についてはISEPが2010年から毎年発行している「自然エネルギー白書」および「自然エネルギー・データ集」をご覧ください。

このプレスリリースに関するお問い合わせ

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
担当:松原、山下
お問い合わせフォーム: isep.or.jp/about/contact
TEL: 03-3355-2200 FAX:03-3355-2205

ライブラリ: 自然エネルギー世界白書 過去の記事一覧