トピックス 3

ソーラーシェアリングの普及と進化

ソーラーシェアリングを巡る情勢

2012年7月に再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)が導入されて以降、国内で太陽光発電が急速な伸びを見せる中で、「営農型発電」あるいは「営農継続型発電」と呼ばれる、農地で営農の継続を前提とした自然エネルギー発電設備が広まりつつある。特に、営農型太陽光発電、ソーラーシェアリングと呼ばれる農地に支柱を立てて営農を継続するタイプの太陽光発電設備は、一定の社会的認知を獲得しつつある。

現在、農地を転用して設置する方式の太陽光発電設備は、農水省資料では2015年度時点で既に28,818件、5,464.4haとなっており、多くの農地が発電事業のために雑種地などへ用途転用されてしまっている実態が明らかとなった。エネルギー自給率の向上と同様に、食糧自給率の向上も求められる我が国において、食料生産基盤である農地を完全転用しての太陽光発電設備の設置の是非については、今後議論すべき余地があると考えられる。ソーラーシェアリングは、一定の条件を満たせば原則として農地の用途転用が認められない甲種・第1種農地でも太陽光発電設備の設置が可能となることから、国内に450万haある耕作地を自然エネルギー事業にも活用する道を拓く画期的な仕組みである。

写真 水田におけるソーラーシェアリングの例|出所:井川町営農型太陽光発電設備初号機〔秋田県南秋田郡井川町〕筆者撮影

適応作物の拡大

国内で少なくとも1,000件近くのソーラーシェアリング導入事例がある中で、水田・畑・果樹園・牧草地と幅広い農地で実績が積み重ねられ、発電設備の下で栽培される作物も多様化しつつある。米、麦、大豆などの穀物類のほか、葉物野菜や根菜、みかんやブルーベリーなどの果樹にも適用が広がってきており、それぞれ農業者による創意工夫がなされていて、作物によっては品質の向上や収穫量の増加といった効果も上がっている。

営農に適した発電設備の設計と耐久性

2015年夏に発生した九州における台風被害で、太陽光発電設備におけるパネルの飛散といった損壊事故が多発したことを受けて、太陽光発電設備の設計に関するJIS 規格の見直しが行われたほか、2017年度に施工された改正FIT 法の中で設備の設計に関する事業者の責任がより明確化された。ソーラーシェアリングの場合は、架台の高さが通常の野立ての太陽光発電設備よりも高くなり、また設備下部での営農のために筋交い構造にも留意する必要がある架台構造も、従来はソーラーシェアリング発案者である長島彬氏の推奨による、単管パイプを利用したものが主流であったが、野立て用の設備で一般的に使われているアルミやスチールを使用した事例も増えつつあり、特に高圧連系以上の大型のものについては電気保安の観点からも十分な耐久性を備えた設計が要求されている。

写真 小型トラクターによる農作業の様子|出所 : 匝瑳市飯塚地区〔千葉県〕筆者撮影

自然エネルギーと農業の新しい関係を築く

農林水産省は、2013年度から自然エネルギーの活用による農山漁村振興を図るための施策を打ち出してきており、ソーラーシェアリングもその一類型と見ることができる。地域で農業者が積極的に関与する形での自然エネルギー事業を普及させようとする取り組みがあるものの、例えば同法では荒廃農地を野立ての太陽光発電事業用地として利用し、その収益から他の農地における農業振興を図るといったスキームが想定されており、太陽光発電以外にも風力発電や小水力発電にも活用できる。農業者自身が自然エネルギー事業に取り組むことによって所得の向上を図り、安定した収益を得ながら新しい農業手法の模索や作物の多品種化、農業後継者や新規就農者へのバトンタッチといった動きを取ることも期待される。究極的には、自然エネルギーによって農村地域がエネルギーと食料の供給地となっていくことも可能であり、コミュニティパワーの新しいモデルとしても期待される。

(千葉エコ・エネルギー株式会社 馬上丈司)