4.5 地熱発電

図4.19および表4.6に示すとおり、2000年以降新しい発電所が建設されず、2012年9月には北海道の森地熱発電所の認可出力がそれまでの5万kWから2.5万kWに変更となり、認可出力が2012年度に2.5万kW減少した。

2014年3月末の時点で、我が国の地熱発電所は17ヶ所、総発電設容量は約55万kW(認可出力51.5万kW)だったが、FIT制度により2014年10月頃から小規模な数百kW規模の地熱発電所の運転が開始され、2017年3月までに新たに29か所(約1.5万kW)の小規模な地熱発電所が運転を開始し、認可出力の合計は約53万kWとなっている。

図4.19 国内の地熱発電の累積導入出力と単年度導入量|ISEP作成

表4.6 日本国内の地熱発電の認可出力と年間発電量の推移

年度 認可出力 [万kW] 年間発電量 [GWh] 設備利用率 [%]
1975 5.2 379 83.9%
1980 16.1 1,091 77.6%
1985 21.4 1,493 79.8%
1990 27.0 1,724 72.9%
1995 50.4 3,109 70.5%
2000 53.3 3,349 71.7%
2005 53.4 3,228 69.0%
2010 54.0 2,652 56.1%
2011 54.0 2,689 56.8%
2012 51.5 2,609 57.8%
2013 51.5 2,570 57.0%
2014 52.0 2,591 56.9%
2015 52.5 2,567 55.8%
2016 53.0 2,250 48.5%

ISEP調べ

さらに、図4.20に示す様に2004年度以降、発電電力量が次第に減少している。発電電力量のピークは1997年度にあり、この時、年間電力量は約38億kWhであり、その後、低下したが、2001年度からは回復し、2003年度には約35億kWhまで回復した。しかし、再び低下を始め、2007年度には30億635万kWhとなり、さらに2016年度には22億500万kWhまで減少している。すなわち、2016年度には、最大時に比べ、約41%の低下となっている。これを設備利用率という観点からみると、1997年度には70%を超えていたものが、2007年度には70%を切り、さらに2012年度には74%とほとんど回復していなかったが、2016年度には50%を下回るレベルまで低下している。

図4.20 国内の地熱発電の年間発電量および設備利用率の推移|ISEP作成

このような中で、八丁原2号機、滝上、大霧の各発電所では90%以上の極めて高い利用率を示しているが、上述した発電電力量および利用率の低下は、他の再生可能エネルギーと比較した場合、ベースロードあるいは24時間安定発電が大きな長所としている地熱発電にとって、見過ごすことのできない問題である。

その原因としては、各地熱発電所において、地熱貯留層そのものの能力が落ちてきているということではなく、個々の生産井がスケール付着あるいは生産井ごく近傍の圧力が低下することによって生産量が減少してきている中で、その対策が技術的に十分でなかったことや、適切な時期に補充のための生産井の掘削が行われてこなかったことに起因していると考えられる。この背景には、発電設備に応じた発電を維持することが、必ずしも高い経済性につながらないという社会経済的事情があったことも考えられる。このような問題は、地熱発電に対し環境価値が付加される等の政策的支援があれば、ある程度は解決される問題と考えられる。

(ISEP 松原)