3.3 小水力発電

FIT制度

2017年4月より、改正FIT法が施行されたことで、中小水力発電は、従来の200kW、1,000kWに加えて、5,000kWを境に、新たな買取区分が生じた。また、表3.1に示すように2017~2019年度にかけての買取価格が、あらかじめ決定されており、特に、中小水力発電等リードタイムの長い再生可能エネルギーについては、事業計画が立てやすい仕組みとなった。

表3.1 中小水力発電におけるFIT調達価格

年度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
水力 24円(1,000kW以上30,000kW未満) 20円(5,000kW以上30,000kW未満)
27円(1,000kW以上5,000kW未満)
29円(200kW以上1,000kW未満)  29円(200kW以上1,000kW未満) 
34円(200kW未満) 34円(200kW未満)
水力(既設導水路活用型) 14円(1,000kW以上30,000kW未満) 12円(5,000kW以上30,000kW未満)
15円(1,000kW以上5,000kW未満)
21円(200kW以上1,000kW未満)  21円(200kW以上1,000kW未満) 
25円(200kW未満) 25円(200kW未満)

出典:経済産業省「中小水力発電を巡る現状と課題」より筆者作成

規制・制度改革

しかし、他の再生可能エネルギーと同様、系統連系問題により、中小水力発電の事業化を断念した事例が増えている。その対策の一例として、「想定潮流導入」および「コネクト&マネージ」の導入等が検討されており、現在議論がなされている。

そのほか、中小水力発電においては、具体的な開発促進のための取り組みとして、以下の取り組みを進めるべきだと経済産業省は述べている。

1. 初期リスクの低減に向けた、流量データの開示等の支援
2. 地域主体の開発や地域理解の促進
3. 経済的な課題の解決のため、コスト低減に向けた技術開発、実態に合わせた支援制度の構築

開発や事業の動向

2017年3月末現在、FITの認定を受けた中小水力発電所の数は、200kW未満が343施設、出力が3万594kW、200kW以上1,000kW未満が132施設、出力が7万5,502kW、1,000kW以上30,000kW未満は123施設、出力が101万2,209kWであり、合計で598施設、出力111万8,305kWである。一方、FIT施行後の新規の導入件数および導入容量については、200kW未満が195施設、出力が1万5,178kW、200kW以上1,000kW未満が56施設、出力が3万663kW、1,000kW以上30,000kW未満は34施設、出力が19万3,591kWであり、合計で285施設、出力23万9,432kWである。全体で、FIT施行後に認定された容量のうち、約21.4%の発電所が運転を開始したことがわかる。

表 3.2 2017年3月末現在のFIT認定設備数・認定出力(合計)

出力 認定設備数 認定出力(合計)
新規 全体 新規 全体
水力(200kW未満) 195 343 15,178 kW 30,594 kW
水力(200~1,000kW) 56 132 30, 663 kW 75,502 kW 
水力(1,000~30,000kW) 34 123 193,591 kW 1,012,209 kW 
合計 285 598 239,432 kW 1,118,305 kW

出典:経済産業省「固定価格買取制度情報公表用ウェブサイト」より筆者作成

図3.4 2017年3月末現在の中小水力発電におけるFIT認定容量ならびに導入容量の推移|出典:経済産業省「固定価格買取制度情報公表用ウェブサイト」より筆者作成

産業

出力1,000~1万kWにおける中小水力発電設備の手持受注残から見える産業動向は以下のとおり。重電機器シェアの2016年版および2015年版のデータを編集し、出力1,000~1万kWにおける2015年8月末現在、2014年8月末現在、それぞれの水車および水車発電機の国内向け手持受注残を算出したところ、表3.3の通りであった。水車は昨年に比べ、台数では4台(8.3%)、延べ容量では1万5,294 kW(8.1%)伸びた。水車発電機においても、台数では4台(8.0%)、延べ容量で2万11 kVA(9.6%)の伸びであった。

表3.3 国内における出力1,000~1万kWの中小水力発電設備の手持受注残

年月 水車 水車発電機
台数(台) 延べ容量(kW) 台数(台) 延べ容量(kVA)
2015年8月末現在 52 204,994 54 227,701
2014年8月末現在 48 189,700 50 207,690

注:2015年8月末現在の水車ならびに水車発電機、2014年8月末現在の水車発電機の台数および延べ容量は、4社合計の数値である。同様に、2014年現在8月末の水車の台数および延べ容量は、3社合計の数値である。

(全国小水力利用推進協議会 佐藤)