1.4 自治体の自然エネルギー政策の課題

分散型の自然エネルギーが普及し、自治体新電力が次々と増える中、地方自治体にとってエネルギー部門での役割・責務が拡大している一方で、人員やノウハウの不足は否めない。かつては多くの地方自治体にとって、電力や再エネを対象とした施策は、温暖化防止のための普及啓発活動や太陽光パネル・太陽熱利用システムへの補助金が中心であり、環境部署の担当でできることが中心であったが、自治体が自然エネルギーを扱える範囲は大幅に拡大しており、それに伴い課題も増えている。

全国市区町村再生可能エネルギー政策アンケート[1]において、再生可能エネルギーの利用に関する課題(問4「あなたの自治体で、再生可能エネルギーの利用の課題となっていることは何ですか。」)を尋ねた。ここでは2014年の前回調査の結果と比較して示す。

図1.31 自然エネルギーの利用の課題についての自治体の回答(前回調査との比較)

2017年調査で最も多い回答は「必要となるノウハウや経験が不足している」(今回29% ←前回30%)であった。FIT 法の施行後に地上設置型の太陽光発電が急速に拡大する一方で買取価格が低下したため、今後の展開にはノウハウや経験が重要であり、地域主体による新規参入はなおさら難しい。地域主体による小水力やソーラーシェアリングなどの新たな取り組みが増えているが、ノウハウや経験を持った主体は少ないため、継続的に課題として認識されていると考えられる。

2014年調査で最も多かった「事業の資金調達が難しい」(24% ←32%)は低下した。地域金融機関の融資増加やクラウドファンディングを含め、自然エネルギーへの資金調達手法が多様化してきたことの反映と見られる。一方、実務的には系統制約の問題から新規事業への資金調達が難しくなる地域が今後も増える恐れもある。

今回の調査で大きく増加した回答として、前回と文言は若干異なるが「事業者と周辺住民とのトラブルが発生する恐れがある」(24% ←12%)や「地域の景観に悪影響を与える恐れがある」(22% ←15%)が挙げられる。別項で紹介しているようにメガソーラーをはじめとして自然エネルギーと地域のトラブルの報道が増えていることが大きく影響していると考えられる。また「現在の固定価格買取制度の買取価格が低いこと」(10% ←5%)も倍増しており、太陽光を中心に買取価格が下がっていることは広く認識されている。

今回の調査で減少した回答として、「農地転用をはじめとした許認可手続きが煩雑なこと」(8% ←19%)も挙げられる。ソーラーシェアリングの増加に伴い、課題としての認識が薄らいだと考えられる。

同じく減少した項目として「系統(送電線網)への接続が難しい」(17% ←22%)があるが、2014年より系統制約が厳しくなっていることを踏まえると、基礎自治体での認識が不十分である可能性が高い。

全国市区町村再生可能エネルギー政策アンケートでは地域内での自然エネルギーの普及を念頭に置いた選択肢となっているが、今後自治体で考えるべきトピックはさらに拡大していくであろう。別項で書いたように、自治体新電力により住民や地域事業者に自然エネルギー割合が高い電気を供給することも新しい政策手法の候補となっている。さらに、パリ協定の発効により、中長期的に自治体のCO2排出もゼロを目指すことになるため、公共建築物での省エネと自然エネルギーの導入は前提として、それでも必要な電力や熱は自然エネルギーを外部から購入することが有効となる。また省エネルギーや自然エネルギーの選択を促す普及啓発分野でも、環境省から発表されたナッジ事業 (行動経済学に基づく行動変容を促す情報発信)が成果をあげれば、新しい手法が適用される可能性もある。

こうした様々な進展が同時並行で起こる一方で、自然エネルギーを含む環境担当部署と他の部署間での縦割りの問題などは依然として存在しており、複数の分野にまたがる総合的な解決策の立案・実行には多くの困難が控えている。地方自治体と地域のエネルギー主体との連携も限られたままである。

自治体のエネルギー政策の確立に向けて課題は多いものの、可能性も大幅に拡大している。

(ISEP 山下紀明)


[1] 一橋大学自然資源経済論プロジェクト・法政大学持続性学研究会・ISEP・朝日新聞社による全国市区町村再生可能エネルギー政策アンケート(1382 団体が回答、回収率79%)