4.1 自然エネルギー電力

4.1.1 概況

全体トレンド

日本国内の自然エネルギーの割合は2010年度までは約10%で推移してきたが、2012年7月からスタートしたFIT制度により太陽光を中心に導入が進んだ結果、2016年度の国内の全発電量(自家発電を含む)に占める自然エネルギー(大規模水力を含む)の割合は14.8%程度となった(図4.1)。

図4.1 日本国内の発電量の推移|出所:電気事業便覧、電力調査統計などよりISEP作成

図4.2および表4.1には、2010年度以降の各種の自然エネルギーおよび原子力発電による発電量の、全発電量に占める割合の推移を示す。2011年3月の東日本大震災および東京電力福島第一原発事故の影響により原子力発電の割合は2011年度には10%未満に低下し、自然エネルギーの割合を下回った。

図4.2 日本国内の自然エネルギー・原子力発電の比率の推移|出所:電気事業便覧、電力調査統計などよりISEP作成

表4.1 自然エネルギーの割合などの推移

項目 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度
太陽光 0.4% 0.5% 0.7% 1.4% 2.1% 3.3% 4.8%
風力 0.4% 0.4% 0.4% 0.5% 0.5% 0.5% 0.6%
地熱 0.2% 0.2% 0.2% 0.2% 0.2% 0.2% 0.2%
バイオマス 1.0% 1.1% 1.1% 1.1% 1.5% 1.6% 1.7%
小水力 1.5% 1.6% 1.6% 1.6% 1.7% 1.7% 1.7%
大規模水力 6.3% 6.7% 6.0% 6.2% 6.5% 7.1% 5.8%
自然エネルギー 9.8% 10.5% 10.1% 11.0% 12.5% 14.5% 14.8%
原子力 24.8% 9.1% 1.5% 0.9% 0.0% 0.9% 1.7%
CO2 100 104 107 108 104 101 100
GDP 100 99 99 102 104 107 108
全発電量 100 96 95 95 92 89 90
火力発電 100 118 128 128 124 115 115
原子力発電 100 35 6 3 0 3 6
自然エネルギー 100 103 98 106 116 132 136

出所:電力調査統計、環境省、統計局データよりISEP作成

FIT制度により自然エネルギーの割合は2013年度以降、太陽光を中心に増加し始めたことがわかる。原子力発電の発電量は、2014年度にはゼロとなり、2016年度も2%未満となっている。一方、化石燃料を燃料とする火力発電による発電量の割合は、2012年度以降90%を超えたが、日本全体の発電量が減少と自然エネルギーの増加により、火力発電の発電量は2013年度以降は減少傾向にあり、CO2の排出量も2014年度以降は減少している(図4.3、表4.1)。2013年度以降、GDPは少しずつ上昇しおり、経済成長に対して日本全体のCO2排出量や発電量などのデカップリングが進み始めていると考えられる。

図4.3 2010年度以降の発電量・CO2・GDPの推移|出所:電力調査統計、環境省、統計局データよりISEP作成

日本国内における自然エネルギーの導入状況について、電力分野のトレンドの推移を示す。図4.4に示すように2016年度末の自然エネルギー(大規模な1万kW超の水力発電は除く)による発電設備の累積設備容量の推計は約5050万kWに達しており、前年度比で約16%増加した。この国内の自然エネルギーの成長では2013年度以降、太陽光発電が中心になっており、2016年度末に約3900万kWに達して、前年度比で約20%の増加となっている。

FIT制度が始まる以前の2010年度と比較すると、自然エネルギー全体(大規模な水力発電を除く)の設備容量では約3.7倍に増加しているが、太陽光発電は約10倍にも増加している。太陽光発電以外では、風力発電が1.4倍になった他は、バイオマスが1.3倍、小水力が1.1倍、地熱は横ばいの状況になっている。

図4.4 日本国内の自然エネルギー発電設備の累積設備容量(ISEP調査)

1990年度から2016年度までの累積の設備容量から発電種別毎に設備利用率を仮定し、各年度の年間発電量を推計した結果を図4.5および表4.2に示す。発電設備の増加率が19%だった太陽光発電が、年間発電量で日本国内の全発電量の約4.8%を占め、自然エネルギーの中で大規模な水力発電に次いで大きな割合となった。小水力発電(1万kW以下)は、発電設備の増加率は2%程度に留まっているが、年間発電量は全発電量の約1.7%を占めている。バイオマス発電は、発電設備の増加率が9%あり、全発電量の約1.7%を占めている。風力発電は、発電設備の増加率が10%程度あったが、日本国内の全発電量に占める割合は、いまだ0.6%程度に留まっている。地熱発電は、発生蒸気量の減少などにより発電量が減少傾向にあり、2016年度は全発電量の0.2%程度に留まっている。

図4.5 日本国内の自然エネルギー(大規模水力を除く)による発電量の推計(ISEP調査)

表4.2 2016年度の日本国内の自然エネルギーによる発電設備容量と発電量の推計値(ISEP調査)

種別 年間設備導入量 [万kW] 増加率 [%] 累積設備容量 [万kW] 推計発電量 [GWh] 発電量比率 [%] 発電量全体比率 [%]
太陽光 623.1 19.0% 3,909 50,003 52.9% 4.79%
風力 30.0 9.7% 338 5,879 6.2% 0.56%
地熱 0.5 0.9% 53 2,250 2.4% 0.22%
小水力 7.9 2.4% 341 18,199 19.2% 1.74%
バイオマス 33.3 8.8% 414 18,269 19.3% 1.75%
合計 694.8 15.9% 5,054 94,600 100% 9.06%

一方、日本国内の全発電量(2016年度の推計値は約1兆442億kWh、自家発電を含む)に対しては、大規模水力発電を除く自然エネルギーによる発電の割合は約9.1%程度にまで増加してきており、2010年度の3.5%程度から約6ポイント程度増加した。この発電量の推計の前提条件は、表4.3のとおりである。国内の発電量全体には、一般電気事業者、その他発電事業者および自家用発電を含む。その結果、2016年度の日本国内の全発電量(自家発電を含む)に占める自然エネルギー(大規模水力を含む)の割合は14.8%と推計される(図4.6)。

表4.3  国内自然エネルギーの発電量の推計方法

種別 発電量の推計方法
太陽光 2014年度以降は電力調査統計。2012年度・2013年度はFIT運転開始および移行認定の設備容量、2011年度まではJPEA国内向け出荷量から累積の設備容量を推計。2013年度までは年間発電量は設備利用率(12%)から推計したが、2014年度以降は電力調査統計に住宅用自家消費を加算(自家消費率を30%と仮定)
風力 2014年度以降は電力調査統計。2012年度・2013年度は「電気事業便覧」の実績値。2003~2011年度はRPSでの供給量。2012年以前は設備容量から、設備利用率(20%)による推計
地熱 2013年度以降は電力調査統計の発電実績から計算。2011年度までは火力原子力発電技術協会「地熱発電の現状と動向」の実績値
小水力  (社)電力土木技術協会が公表している「水力発電所データベース」より最大出力1万kW以下の水路式でかつ流れ込み式あるいは調整池方式の発電所およびRPS対象設備から設備利用率(61%)を利用して推計。
バイオマス 2014年度以降は電力調査統計の発電実績から計算。2013年度まではRPS対象設備よりバイオマス比率がおよそ60%以上のものの設備容量から設備利用率70%、バイオマス比率60%で推計

図4.6 日本国内の2016年度の年間発電量の内訳|出所:電力調査統計などからISEP作成

図4.7には月別の自然エネルギーによる発電量の変化を示す。自然エネルギーによる発電量が最も大きい月は8月だが、割合が最も高くなるのは5月で20%以上に達する。

図4.6 日本国内の2016年度の年間発電量の内訳|出所:電力調査統計などからISEP作成

表4.2に示す様に太陽光発電は2016年度末までに累積の設備容量が3,900万kW以上に増加した。2009年度に新たな余剰電力の買取制度が、2012年度には本格的な全量全種のFIT制度が始まり、制度開始後3年目の2014年度の年間導入量は940万kWに達したが、2016年度には約620万kWに減少した[1]。2016年は引き続き中国、米国に次ぐ世界第三位の太陽光発電の年間導入量となったが、累積導入量は中国に次ぐ世界第二位となっている。

風力発電は、2016年度末で累積設備容量338万kWとなった。年間の導入量は2015年度には約16万kWだったが、2016年度には年間30万kWと増加傾向にある。風力発電は、FIT制度がスタートした2012年度以降も、法的な環境アセスメント手続きの長期化や電力系統の制約などで本格的な導入にはなお時間がかかる状況となっている。2016年度末の時点で、FIT制度の設備認定を受けていて運転を開始していない設備は、約600万kWある。さらに、環境アセスメントの手続きに入っている設備は、FIT設備認定を受けた設備を含めて1,560万kW程度あると言われている(JWPA調査)。

地熱発電は2000年以降の新規設備導入が無い状況が続いていたが、FIT制度の開始に伴い、2016年度には前年度に引き続き約5,000kWの地熱発電設備が導入された。全国で多くの地熱の資源調査や開発計画がスタートしており、自然公園内での規制緩和や温泉事業者との合意形成などの課題解決が進められている。

小水力発電(出力1万kW以下)については、1990年度以降の新規導入設備が少ない状況が続いていたが、出力3万kW未満の規模の中小水力発電設備がFIT制度の対象となり、全国各地で調査や事業の開発がスタートしている。FIT制度による中小水力発電の2016年度の年間導入量は約8万kWだが、そのうち1,000kW未満の小水力発電の2015年度の導入量は約1.5万kWであり、78か所程度の発電所が運転を開始している。

バイオマス発電については、FIT制度開始以前は一般廃棄物や産業廃棄物を中心とした廃棄物発電の普及により設備容量が増えてきたが、FIT制度開始以降は、国内の豊富な森林資源を活用する木質バイオマス発電の設備が増え始めている。特にFIT制度で高い買取価格の対象となる間伐材などの「未利用木材」については、これまでその多くがコスト面で利用が困難だったが、原料調達のためのサプライチェーンの構築と共に、全国各地で出力5MWを超える比較的大型のバイオマス発電の導入が始まっている。

しかし、実際には現状では未利用木材の調達はコストの面から難しいケースも多くあり、海外からの木材(PKSも含む)などの「一般木材」を燃料とするバイオマス発電設備の設備認定が増加している。2016年度は未利用木材を原料とするバイオマス発電設備が新たに約9万kW(11施設)導入され、前年度の3割減の年間導入量となったが、一般木材については19.2万kW(9施設)と前年度から2倍に増加した。その他、2016年度には一般廃棄物を処理するバイオマス発電設備が3.9万kW(17施設)導入されたほか、バイオガス発電設備が1.2万kW(30施設)導入されている。

太陽光発電

2012年7月からスタートしたFIT制度により、日本国内の太陽光発電市場は一気に拡大し、国内の太陽光発電設備の累積導入量は2016年度末までに3910万kW(ISEP推計)に達した。2016年度の1年間で約620万kWが導入されたが、2014年度と2015年度の900万kWを超える年間導入量と比べると3割程減少している。

一方、JPEA(太陽光発電協会)による調査では、太陽電池モジュールの2016年度の国内出荷量は約347万kWで、これは前年度比50%以上の減少だった(年間導入量の半分程度であり、調査対象外の太陽電池モジュールの出荷量がかなりあると考えられる)。2016年度は前年度に対して非住宅用の市場も55%程度減少している。

一方、2011年度まで日本の太陽光発電の市場をリードしてきた住宅用の太陽光は2013年度には240万kWに達したが、2016年度には約100万kWにまで減少している。この規模の国内市場に対して、国内のモジュール生産だけでは追いつかず、海外生産モジュールの輸入が引き続き行われているが、前年度の450万kWからは大幅に減少した。2016年度は136万kWが海外生産品として国内向けに輸入されているが、国内出荷量の全体の約39%に縮小した。

2012年7月にスタートした固定価格買取制度では、10kW未満については従来の余剰電力の固定価格買取制度が継承されている。一方、出力10kW以上については、基準となるコストデータで規模別の違いがあるにも関わらず一律の調達価格が設定され、特に1,000kWを超える大規模なメガソーラーの計画が全国で一気に加速した。2016年度末までの設備認定の実績では、FIT制度開始後に新たに設備認定を受けた全設備容量1億1,384万kWの79%にあたる8,949万kWが太陽光発電となっていたが、改正FIT法により接続契約が義務化され事業認定に移行した結果、1,463万kWの非住宅用太陽光の設備認定が失効した(2016年6月末までの設備認定分)。

風力発電

地域別では風況の良い北海道、東北、九州での風力発電の導入量が多いが、各地域内での電力需給の制約により電力会社毎に「接続可能量(30日等出力制御枠)」が設定されており、すでに設備認定量はその枠を上回っている。北海道の北部や東北地方の日本海側では従来から地域の電力系統の容量が不足しており、地域内送電網の整備が政府の支援により民間の事業として進められている。2016年度より電事法の改正により系統への接続が全ての電源について先着優先のオープンアクセスになったこともあり、電力系統の空容量の算定がゼロとなり、系統接続が困難になり、接続のために変電所や基幹系統の増強が必要となり工事負担金が膨大になる問題が発生している。東北北部では、電源接続募集プロセスが広域に実施されているが、募集枠280万kWに対して接続を希望している事業者の設備容量は1,500万kWを超え、そのうち約8割程度が風力発電(5割が洋上風力)となっている。

2016年度の年間導入量は30万kWとなり、2016年度末までの累積導入量は338万kWとなった。新たな設備認定も、2016年度末までに約680万kWとなり、RPS制度からの移行認定分253万kWを含めれば910万kWに達する。しかし、立地への各種制約や2008年の建築基準法の改正、および世界的な風力発電設備への需要の増加などにより、発電事業の開発のハードルが高くなり、単年度導入量は低迷している。

2012年7月からFIT制度がスタートし、出力20kW以上の事業用の風力発電に対して比較的高い調達価格が設定され、適地において新たな導入計画が増えている。しかし、2013年度の年間導入量は約6.5万kWまで減少し、2012年から施行された環境アセスや補助金制度の見直しの影響等も出ている。2012年10月から一定規模(1万kW)以上の風力発電が国の環境影響評価(法アセス)の対象となり、新規の風力発電の計画から運転開始までには3~4年近くかかる状況となっているため、手続き期間の短縮ための制度の見直し等が行われ始めている。2017年11月末の時点で総出力1500万kW以上の風力発電設備がこの環境影響評価の手続きを行っている(JWPA調査、その中に設備認定を受けた風力発電設備も含まれる)。

洋上風力発電の買取価格が2015年度から新たな区分として高めに設定(陸上風力22円に対して、洋上風力は36円/kWh)され、全国の10か所程度の沿岸地域(一般海域、港湾区域)で洋上風力の事業計画が公表されている[2]。港湾区域については、2016年7月に洋上風力発電の占用公募制度のガイドラインが公表され、その運用が開始されている[3]。さらに、一般海域については、洋上風力を含む海洋再生可能エネルギーについて海域の利用を促進する法案が閣議決定されている[4]

着床式の洋上風力発電については、NEDOによる実証試験が千葉県銚子沖と福岡県北九州沖で2012年度から実施された[5]。さらに、長崎県五島沖では浮体式の洋上風力発電の実証試験が2012年10月から始まり、2MW級の洋上風車の実証試験が2015年度末まで実施された[6]。福島県沖でも大規模な実証事業が2012年11月から始まっており、2013年11月には2MW級の浮体式洋上風車「ふくしま未来」が運転を開始し、2015年12月には出力7MWの世界最大級の浮体式洋上風車「ふくしま新風」が運転を開始した。2016年8月には出力5MWの風車「ふくしま浜風」が設置され、合計14MWの世界最大級の浮体式洋上発電の実証サイトとなっている[7]

小水力発電

日本国内の水力発電設備は、その大半が1990年以前に導入されたものである。2016年度末の出力1万kW以下の小水力発電の設備容量は推計で338万kW(約1,500基)であり、これは、国内すべての水力発電の設備容量の約7%にあたる(出力1,000kW未満の小水力発電設備は、約22万kW)。2016年度に新規に導入された1万kW以下の小水力発電の設備容量は約5.1万kWで、設備数93基となっており、1件あたりの設備容量は約550kWとなっている。

FIT制度では、出力3万kW未満の中小水力発電設備が対象となっており、3区分(200kW未満、200kW以上1,000kW未満、1,000kW以上30,000kW未満)の規模別に買取価格が設定されてきたが、2017年度以降は、新たに5,000kW以上30,000kW未満の区分が設けられ、4区分となった。

2016年度末までの中小水力発電の設備認定は112万kWになっているが、そのうち設備容量1,000kW以上の合計が101万kWと約9割を占めている。一方、1,000kW未満の設備認定は、10.6万kWに留まるが、件数は475件に上る(平均の設備容量は223kW/件)。ただし、このうち運転を開始している水力発電設備は、2016年度末時点で22.4万kWに留まり、1,000kW以上が18.7万kWと8割を超えている。FIT制度のもとで新たに運転を開始している1,000kW未満の小水力発電は3.6万kWに留まるが、設備数は219基である(平均の出力は168kW/基)。

地熱発電

1966年に国内初の地熱発電所が運転を開始してから、1999年までに国内の地熱発電所の設備容量は53万kWに達したが、2000年以降、2011年度までに導入された地熱発電所はほとんどなく、既存設備の修正などで設備容量は54万kW程度に留まっていた。2012年度に一部の発電設備で認可出力の2.5万kW低減が行われ、累積設備容量は51万kWにまで低下した。その後、2015年度に引き続き2016年度も5,000kW(10基)の小規模な地熱発電の設備が運転を開始し、認可出力は53万kWを上回った。一方、年間の発電量は2003年をピークに減少しており、2010年度以降は下げ止まって、2016年度の発電量は前年度から1割程度も減少した。

1970年代のオイルショック後に地熱開発の機運が高まり、民間主導で地熱発電設備が導入された。その後、1990年からは国の主導する各種補助金による政策で発電設備の導入が進んだが、1999年の八丈島への導入を最後に設備の導入が進まず、「失われた10年」と呼ばれるような状況となった。大部分の地熱発電は、運用上、新エネルギーとして位置づけられておらず、RPS法の対象にもなっていなかった。

2012年からのFIT制度では、地熱の事業リスクの高さを考慮した買取価格が規模別(1.5万kW未満、1.5万kW以上)に設定され、2016年度末までの設備認定は8.9万kW(110件)となったが、そのうち約1.6万kW(29基)が運転を開始している。

大規模な地熱発電の開発には10年程度を要すると言われているが、自然公園などでの地熱発電への規制の見直しと共に新たな開発計画が有望地域で始まっており、その大きな資源ポテンシャルと国内産業育成の観点から注目されている。さらに、温泉地等での開発にあたっては地域との合意形成のプロセスが重要になっており、合意形成のための取り組みが行われている。別府市では、自治体として小規模な温泉発電等の合意形成を図る条例を2016年5月に施行している[8]

バイオマス発電

バイオマス発電の燃料となるバイオマス資源の種類は多岐にわたる。森林を起源とする木質バイオマス、食料や畜産系のバイオマス、建築廃材などの産業廃棄物系バイオマス、生ゴミなどの一般廃棄物系バイオマスなどがある。これらのバイオマス資源を直接燃焼、あるいはガス化やメタン発酵させ、その熱エネルギーにより発電が行われている。2016年度末の国内の累積設備容量は約414万kWとなっており、2000年比で約2.7倍に増加している。設備容量では一般廃棄物発電が約202万kW(49%)、産業廃棄物発電が116万kW(28%)と全体の約8割を占めており、その大部分がRPS認定設備だった(2012年7月以降、約3割にあたる106万kWの設備はFIT制度へ移行)。

木質バイオマス資源を活用した発電は約90万kW(22%)と増加傾向にあり、林業の活性化や国産材の積極的な利用による森林バイオマス資源のカスケード利用が強く望まれているが、海外のバイオマス資源(PKSなど)を利用したバイオマス発電所も導入が始まっている。

また、バイオマスについてはエネルギー効率の観点から熱利用が推奨されているが、大きな熱需要のある製紙工場や製材工場での利用などに留まっている。さらに、バイオマス発電については、利用するバイオマス資源の種類に応じてCO2削減効果やその持続可能性についての評価が難しく、排出量取引制度などの関連でもより公正な評価が求められている。

FIT制度では、発電方式や使用する燃料の種類に応じて調達価格が設定されており、メタン発酵によるバイオガス発電や間伐材などの未利用材を使った木質バイオマス発電が比較的高い調達価格に設定されている。ただし、電熱併給(コジェネレーション)への優遇などは制度上考慮されておらず、これまであまり活用されてこなかった未利用木材(間伐材など)や輸入材(PKSなどの農業残さを含む)を大量に利用する比較的大規模(出力5,000kW以上)なバイオマス発電が全国的に導入が進んでいる。

2016年度末の時点で1242万kW(845件)のバイオマス発電が設備認定(移行認定は含まず)されているが、1147万kW(363件)が一般木材(主に輸入バイオマス)を燃料としており、前年度から大幅に増加した。これは改正FIT法に伴う事業認定において事業計画策定ガイドラインへの順守が求められ、バイオマスの合法性や持続可能性などのチェックが厳しくなったための駆け込みと考えられる。特に海外のパーム椰子由来のパーム油やパーム椰子殻(PKS)を燃料とするバイオマス発電設備の設備認定が急増して全体の7割近くを占めるようになったため、合法性や持続可能性のチェック等の対応が迫られている。

一方、未利用木質の設備認定は50万kW(122件)だが、その中で出力2,000kW未満の小規模設備については7.6万kW(109基)に留まっている。その他、メタン発酵が10.2万kW(257件)、産業廃棄物が8.7万kW(6件)、一般廃棄物が26.1万kW(97件)となっている。なお、これらの設備容量は燃料のバイオマス比率を考慮してバイオマス分のみを対象にしたものである。このうち2016年度末までに運転を開始したバイオマス発電設備は、設備認定(移行認定を含まず)の21%にあたる85万kWに留まっており、一般廃棄物18.6万kW、未利用木質が29.7万kW、一般木材が33.0万kW、メタン発酵が約2.8万kWとなっている。


[1] 太陽光発電の設備容量は太陽電池パネルの容量(DCベース)と連系容量(ACベース)があるが、ここではパワーコンディショナーの出力である連系容量で示している。ただし、世界的なデータでは、DCベースで示されることが一般的である。

[2] 第25回調達価格等算定委員会資料1「洋上風力発電のコストデータ」

[3] 国交省「港湾における洋上風力発電の占用公募制度の運用指針の公表について

[4] 経産省「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案

[5] NEDO 洋上風力発電プロジェクト

[6] 環境省 浮体式洋上風力発電実証事業

[7] 福島洋上風力コンソーシアム

[8] 別府市「別府市温泉発電等の地域共生を図る条例