3.4 地熱発電

3.4.1 市場動向

政府の助成策(経済産業省関係)

政府は地熱発電を再生可能エネルギーの重要な柱として位置付けており、導入見込み量を公表している(表3.4)。これによると、2030年までに現状の地熱発電出力(52万kW)を2~3倍に増やすとしている。

表3.4 2030年における地熱発電の導入見込量

大規模開発について、現行の環境規制の下での開発を見込み、中・小規模開発について、現在把握されている案件の開発を見込む場合 大規模開発について、現行の環境規制の下での開発を見込み、中・小規模開発について、今後も開発が順調に進行すると想定した場合 大規模開発について、環境規制の緩和を想定した開発を見込み、中・小規模開発について、今後も開発が順調に進行すると想定した場合
大規模開発 約32万kW 約32万kW 約61万kW
中・小規模開発 約6万kW 約24万kW 約24万kW
既存発電所 約52万kW 約52万kW 約52万kW
合計 約90万kW(63億kWh) 約108万kW(76億kWh) 約140万kW(98億kWh)

出典:総合資源エネルギー調査会 長期エネルギー需給見通し小委員会[2014年度第4回会合]資料2

この導入目標を実現すべく、地熱開発プロセスに応じた助成策が施されている(図3.5)。

図3.5 地熱開発プロセスに応じた国の支援策|出典:資源エネルギー庁地熱発電メールマガジン第8号

その内、特筆すべき助成策として、(1)地熱発電開発理解促進関連事業支援補助金制度と、(2)地熱資源開発調査事業助成金、出資・債務保証制度が有り、各地方の経済産業局が前者(1)の事務を、JOGMECが後者(2)の事務を主管している。

「地熱発電開発理解促進関連事業支援補助金制度」については、制度開始以来コンスタントに応募・採択がなされてきたが(表3.5)、2017年度は第2次募集までで14件の採択であり、過去4年間の同時期37件、43件、37件、33件と比べるとやや息切れの感が窺われる。この表では、同一地域の同一事業者が複数年度にわたって応募・採択されているので、総数203件は延べ数となる。採択事業の数を地域別に見ると、北海道、九州、東北の事業数が卓越し、火山が無く高温の温泉に恵まれない四国には当然実績が無い。

表3.5 地熱発電開発理解促進関連事業支援補助金

年度

募集次 件数 北海道 東北 関東 中部 北陸 近畿 中国 四国 九州
2013 1 25 6 6 2 2 0 1 0 0 8
2 12 2 1 1 1 0 0 0 0 7
3 5 1 0 2 0 0 1 0 0 1
42 9 7 5 3 0 2 0 0 16
2014 1 28 11 6 3 1 3 0 0 0 4
2 15 3 2 1 0 1 3 0 0 5
3 9 1 4 0 1 0 0 1 0 2
52 15 12 4 2 4 3 1 0 11
2015 1 28 10 7 2 2 2 0 1 0 4
2 9 2 3 1 0 0 0 0 0 3
3 11 3 1 0 1 0 0 0 0 6
48 15 11 3 3 2 0 1 0 13
2016 1 26 12 9 0 2 0 1 0 0 2
2 7 0 3 1 1 1 0 0 0 1
3 14 4 1 1 2 0 0 1 0 5
47 16 13 2 5 1 1 1 0 1
2017 1 12 4 6 1 0 0 0 0 0 1
2 2 1 0 0 0 0 0 0 0 1
3 0
14 5 6 1 0 0 0 0 0 2
203 60 49 15 13 7 6 3 0 50

出典:資源エネルギー庁

次に、表3.6に実施地域と事業者名の一覧を示す。前述の応募・採択述べ件数203件はこの表では同一地域の同一事業者複数年度採択が1件に数えられるため107事業者数となる。

この制度は、大規模地熱発電から小規模・温泉発電まで大小を問わず、地熱発電開発のための調査や開発が進行している地域、および、既に地熱発電所の存在する地域の住民が、地熱発電開発に対する理解を深めることを目的としているので、講演会、見学会、熱水有効利用などソフト、ハード両面にわたる事業を助成している。

表3.6 地熱発電開発理解促進事業採択事業者

実施地域 事業者名 2013 2014 2015 2016 2017
1 北海道 全域 北海道温泉協会、㈱北海道二十―世紀総合研究所 1 1 1 1
2 全域 北海道 1 1 1
3 羅臼町 オリックス㈱、羅臼町、㈱北海道二十一世紀総合研究所 3 1
4 斜里町 ウトロ温泉事業協同組合 3
5 標津町 標津町 1 1 1
6 中標津町養老牛 中標津町、(合)ほっかいどう新エネルギー事業組合 2 3
7 弟子屈町 弟子屈町 3 1 1
8 弟子屈町 ㈱国書刊行会 1
9 弟子屈町川湯 医療法人共生会、㈱GB産業化設計 2 3
10 釧路市 (NPO)阿寒観光協会まちづくり推進機構、(一財)前田一歩園財団、釧路市、北電総合設計㈱ 1 1
11 足寄町 足寄町 1 3
12 足寄町 小川建設工業㈱ 3
13 新得町 新得町 1
14 上川町 上川町 1 1 1 1
15 真狩村 真狩村 1
16 洞爺湖町 洞爺湖温泉利用協同組合 2 1
17 洞爺湖町西山 洞爺湖町、北電総合設計㈱ 1
18 壮瞥町 壮瞥町、北電総合設計㈱ 1 1
19 伊達市大滝区 伊達市、北電総合設計㈱ 1 1
20 登別市 登別市、㈱道銀地域総合研究所 2 1
21 赤井川村 赤井川村 1 1
22 ニセコ町・蘭越町 鶴雅観光開発㈱、北電総合設計㈱ 1 1 1
23 八雲町熊石 八雲町、デナジー㈱ 2 1 2
24 八雲町鉛川 八雲町、一社)北海道再生可能エネルギー振興機構 1
25 森町 森町、北電総合設計㈱ 1 1
26 奥尻町 奥尻町 2 1 1
27 鹿部町 ㈱道銀地域総合研究所、鹿部地中熱事業化検討協議会 2
28 不明 日本重化学工業㈱ 3
29 青森県 全域 青森県 1
30 風間浦村下風呂 風間浦村 1 2
31 むつ市燧岳 むつ市 1 1 2 1
32 青森市ハ甲田 青森市 1 2 2 1
33 弘前市岩木山麓 弘前市 1 1 1 1
34 岩手県 岩手県 岩手県 1
35 八幡平市 八幡平市 1 1
36 八幡平市 ㈱ハラショー 2
37 ハ幡平市 企業組合八幡平地熱活用プロジェクト 1 1
38 雫石町 地熱エンジニアリング㈱ 1
39 盛岡市つなぎ温泉 つなぎ源泉管理㈲、盛岡市 3 1 2
40 西和賀町巣郷温泉 西和賀町 2 1 1
41 秋田県 全域 秋田県 1 1
42 湯沢市 湯沢市 1 1 1 1 1
43 宮城県 栗駒山両蓋地域 ㈱白鳥建設 3
44 大崎市鳴子温泉 大崎市 2 1 1
45 福島県 福島市土湯温泉 JFEエンジニアリング㈱、元気アップつちゆ 3 1
46 柳津町 柳津町 3 2 3
47 川内村 (一財)電源地域振興センター 3
48 栃木県 日光湯元、塩原、那須大丸 シナネン㈱(コンソーシアム形式) 1
49 群馬県 前橋市赤城山麓 ㈱ピュー環境計画研究所、㈱パスポート 2 2
50 中之条町四万温泉 ㈱パスポート 2
51 嬬恋村鹿沢 嬬恋村 3
52 新潟県 新潟県内 (財)新潟経済社会リサーチセンター 1
53 十日町市 十日町市 1 1
54 東京都 東京都神津島村 八千代エンジニアリング㈱ 1
55 東京都ハ丈町 八丈町商工会コンソーシアム形式による申請 1 1
56 東京都青ケ島村 (NPO)ハ丈島産業育成会、㈱レノバ 1
57 静岡県 東伊豆町熱川・片瀬温泉 (NPO)REDS湘南 1,3
58 南伊豆町下賀茂温泉 南伊豆町 1 1 3
59 松崎町 ㈱サンビーム 2
60 長野県 下高井郡山ノ内町 ㈱WAKUWAKUやまのうち 1
61 下高井郡山ノ内町 ㈱クリーンエナジーマネージメント 3
62 大町市 大町市温泉開発㈱ 1 1 3
63 松本市上高地 ㈱シーエナジー 3
64 諏訪市 (株)小松製作所 1
65 富山県 黒部市宇奈月温泉 宇奈月温泉地域地熱開発理解促進コンソーシアム幹事法人:大高建設㈱ 1 1
66 立山山麓 大山観光開発㈱ 1
67 南砺市 (NPO)なんと元気、中越興業㈱ 2 1 1
68 岐阜県 高山市奥飛騨温泉郷 奥飛騨温泉郷源泉所有者協同組合 3 1 2
69 石川県 石川県七尾市 ㈱戸田組 1
70 石川県白山市 ㈱山崎組 2 1 2
71 和歌山県 田辺市本宮町、白浜町 和歌山県、八千代エンジニアリング㈱ 1 2
72 兵庫県 新温泉町 新温泉町湯財産区 3 2
73 鳥取県 湯架浜町 湯架浜町 1
74 米子市 皆生温泉㈱、中電技術コンサルタント㈱ 3
75 島根県 江津市有福温泉町 有福振興㈱ 3
76 大分県 全域 大分県 1,2 2
77 別府市 大分県 1 1
78 別府市 ㈲ビーフラット 1
79 別府市鉄輪 ㈲辻田建機 2 2
80 別府市 ㈱豊後クリーンエナジー 3
81 別府市 ㈱アドニス 3
82 由布市 ㈱ハーブガーデン 1
83 由布市 ㈱ディナー 1
84 由布市 九州電力㈱、合)湯平エネルギー開発 2
85 湯布院 大分ベンチャーキャピタル㈱ 2
86 湯布市湯布院町湯平温泉 (合)湯平エネルギー開発 1
87 九重町宝泉寺温泉 ㈱エディット、(合)宝泉寺温泉組合 1 2
88 九重町 ㈱タカヒコアグロビジネス、九大産業㈱ 1 1
89 九重町 九重町 3
90 日田市天ケ瀬温泉 双日九州㈱
91 竹田市 ㈲エスアンドカンパニー
92 熊本県 小国町岳の湯 (合)小国まつや発電所、㈱ケイ・エル・アイ 2
93 小国町岳の湯 (合)わいた会 2 1
94 小国町 京葉ブラントエンジニアリング㈱ 2
95 小国町西里、北里 スズカ電工(株) 1
96 小国町 ローカル・パワー㈱ 3
97 南阿蘇村 南阿蘇村 2 1
98 長崎県 雲仙市小浜 (―社)小浜温泉エネルギー、㈱オリエンタルコンサルタンツ 1 3 3
99 宮崎県 えびの市 えびの市 3
100 えびの市尾八重野 アストマックス・トレーディング㈱、デナジー㈱ 2 3
101 鹿児島県 霧島市 霧島市 1 1 3
102 霧島市 日鉄鉱業㈱ 1
103 指宿市山川伏目 指宿市 3 3
104 指宿市 九州電力㈱、㈲モスオウキッド 2
105 指宿市 ㈱新日本科学 1
106 指宿市南迫田 燈影新エネルギー開発㈱ 3
107 三島村薩摩硫黄島 ㈱大林組 3 2
37 47 47 45 14

出典:資源エネルギー庁

次に、「JOGMEC地熱資源開発調査事業助成金、出資・債務保証制度」が適用されたプロジェクトを表3.7に、位置図を図3.6と図3.7に示す。地熱資源開発調査事業助成金の交付を受けた事業数は64地域・事業者である。その内訳は、延べ数で地熱開発事業者が37事業者で、地元の地熱関係法人が27事業者である。

地熱開発事業者には環境アセスメントが実質義務付けられている7千5百kW以上の規模を目指すものと、短期開発を実現する為に1,000~2,000kW程度の小規模地熱発電を目指すものがある。更に、資本力の小さい地元の地熱関係法人には数10~数100kW程度の温泉発電を目指すものが多い。小規模地熱開発は一面で地域の活性化と理解に貢献するものの、経験や技術の不足と地元対応能力・姿勢の不足から乱開発に繋がる事が危惧されるものも有り、経産省としても複雑な木目細かい対応が取られている。

調査段階が終了して次の開発段階に移行してJOGMEC出資まで進んだ案件が1事業者、建設に当たって債務保証を受けている案件が4事業者ある。

表3.7 JOGMEC助成事業

1. 地熱資源開発調査事業

地域名称 分類 公布決定年度 事業者
1 北海道 羅臼 地熱資源開発事業者 29 オリックス㈱
2 武佐岳 地熱資源開発事業者 24 25 26 27 28 石油資源開発㈱、三菱マテリアル㈱、三菱化学㈱
3 湯沼-アトサヌプリ 地元の地熱関係法人 29 弟子屈町他1社
4 足寄 地元の地熱関係法人 24 25 エスエスコンサル㈱
5 上川 地熱資源開発事業者 25 26 丸紅㈱
6 美瑛 地熱資源開発事業者 24 王子グリーンリソース㈱、㈱大林組
7 壮瞥町黄渓 地元の地熱関係法人 壮瞥町
8 壮瞥町蟠渓 地元の地熱関係法人 壮瞥町
9 洞爺湖温泉 地元の地熱関係法人 25 洞爺湖温泉利用協同組合
10 豊羽 地熱資源開発事業者 24 25 27 JX日鉱日石金属㈱、豊羽鉱山㈱
11 阿女鱒岳 地熱資源開発事業者 24 25 26 27 28 29 出光興産㈱、国際石油開発㈱、三井石油開発㈱
12 京極北部 地熱資源開発事業者 29 ㈱大林組
13 留寿都 地熱資源開発事業者 29 ㈱大林組
14 ニセコ 地熱資源開発事業者 28 29 日本重化学工業㈱、三井石油開発㈱
15 八雲町鉛川 地熱資源開発事業者 27 28 29 三井不動産㈱(H28)、デナジー㈱(H27・28)、アストマックス・トレーディング㈱(H27)
16 八雲町黒石 地熱資源開発事業者 29 前田建設工業㈱
17 鹿部 地熱資源開発事業者 29 SBエナジー㈱
18 南茅部 地熱資源開発事業者 26 27 28 29 オリックス㈱
19 恵山 地熱資源開発事業者 27 ㈱レノバ、デナジー㈱
20 青森県 下風呂 地熱資源開発事業者 25 26 オリックス㈱
21 むつ市燧岳 地元の地熱関係法人 27 青森県むつ市
22 八甲田北西 地熱資源開発事業者 25 26 27 29 ㈱大林組、川崎重工業㈱、東日本旅客鉄道㈱
23 八甲田西部城ヶ倉 地熱資源開発事業者 26 27 オリックス㈱、㈱城ヶ倉観光
24 黒石市沖浦・青荷川 地熱資源開発事業者 29 三井不動産㈱他1社
25 岩木山 地熱資源開発事業者 24 基礎地盤コンサルタンツ㈱、JENホールディングス㈱、㈱大林組、川崎重工業㈱
26 岩木山嶽 地元の地熱関係法人 25 26 27 29 青森県弘前市、中部電力㈱他2社(29)
27 岩手県 松尾八幡平 地熱資源開発事業者 24 25 26 岩手地熱㈱、日本重化学工業㈱
28 東八幡平 地熱資源開発事業者 26 27 オリックス㈱
29 網張 地元の地熱関係法人 25 26 地熱エンジニアリング㈱、岩手県岩手郡雫石町
30 大松倉山南部 地熱資源開発事業者 29 東日本旅客鉄道㈱他3社
31 つなぎ温泉 地元の地熱関係法人 26 つなぎ源泉管理(有)、岩手県盛岡市
32 秋田県 木地山・下の岱 地熱資源開発事業者 24 25 26 27 28 29 東北自然エネルギー㈱
33 小安 地熱資源開発事業者 24 25 26 27 28 29 出光興産㈱、国際石油開発㈱、三井石油開発㈱
34 宮城県 鳴子温泉 地元の地熱関係法人 27 宮城県大崎市
35 福島県 磐梯 地熱資源開発事業者 25 26 27 28 出光興産㈱ほか10社
36 栃木県 川俣及び周辺 地熱資源開発事業者 29 東京電力ホールディングス㈱
37 静岡県 東伊豆町熱川温泉 地元の地熱関係法人 24 ㈳地域エネルギー開発、NPO法人REDS湘南
38 下加茂 地元の地熱関係法人 26 27 静岡県賀茂郡南伊豆町
39 新潟県 フスブリ山 地熱資源開発事業者 29 日本重化学工業㈱他1社
40 糸魚川大野 地元の地熱関係法人 26 27 新潟県糸魚川市
41 長野県 志賀高原 地熱資源開発事業者 29 中部電力㈱
42 坂巻温泉 地熱資源開発事業者 27 ㈱シーエナジー
43 富山県 宇奈月温泉 地元の地熱関係法人 24 25 ジオエナジー㈱、大高建設㈱
44 立山山麓 地元の地熱関係法人 25 大山観光開発㈱
45 立山温泉 地元の地熱関係法人 28 29 富山県
46 石川県 白山山麓 地元の地熱関係法人 29 山崎組他2社
47 和歌山県 田辺市本宮 地元の地熱関係法人 24 ㈶和歌山社会経済研究所、紀峰産業㈱、浦島観光ホテル㈱、山水館川湯みどりや
48 島根県 皆生温泉 地元の地熱関係法人 27 28 皆生温泉観光株式会社
49 有福温泉 地元の地熱関係法人 24 有福振興㈱
50 大分県 野矢 地熱資源開発事業者 25 ㈱タカフジ
51 小平谷 地熱資源開発事業者 25 26 浦安電設㈱、㈱水分のさと
52 野矢堀田 地元の地熱関係法人 26 久大産業㈱
53 山下池南部 地熱資源開発事業者 29 九州電力㈱
54 涌蓋山東部 地熱資源開発事業者 29 九州電力㈱
55 法泉寺温泉 地元の地熱関係法人 27 合同会社法泉寺温泉旅館組合
56 平治岳北部 地熱資源開発事業者 25 26 27 九州電力㈱
57 熊本県 小国町豊礼の湯 地元の地熱関係法人 24 ㈱豊礼
58 小国町石松農園 地元の地熱関係法人 24 25 ㈲石松農園
59 小国町西里・北里 地元の地熱関係法人 29 スズカ電工㈱
60 南阿蘇村阿蘇山西部 地熱資源開発事業者 27 29 九州電力㈱、三菱商事㈱
61 湯の谷 地熱資源開発事業者 27 29 ㈱フォーカスキャピタルマネジメント、㈱レノバ、デナジー㈱
62 宮崎県 小八重野 地熱資源開発事業者 26 28 29 アストマックス・トレーディング㈱
63 鹿児島県 指宿市東方 地元の地熱関係法人 27 ㈱メディポリスエナジー
64 指宿ヘルシーランド周辺 地元の地熱関係法人 27 指宿市
地熱資源開発事業者 37 15 20 21 25 11 27
地元の地熱関係法人 27

2. 出資期間

地域名称 出資期間 事業者
1 岩手県 松尾八幡平地域地熱資源探査事業 27 28 29 岩手地熱㈱

3. 債務保証

地域名称 債務保証期間 事業者
1 岩手県 松尾八幡平 29 岩手地熱㈱
2 秋田県 山葵沢地熱発電所建設事業 26 27 28 29 湯沢地熱㈱
3 福島県 土湯温泉バイナリー地熱発電事業 27 28 29 つちゆエナジー㈱
4 大分県 菅原バイナリー地熱発電事業 25 26 27 28 29 九電みらいエナジー㈱
0 1 2 3 3 4

出典:JOGMECホームページ

図3.6:平成24-28年度採択事業|出典:JOGMECホームページ


図3.7 平成29年度採択事業|出典:JOGMECホームページ

上記の助成策に加えて、FIT法改正法が2016年5月25日に成立、6月3日に公布され、2017年4月1日から施行された。地熱については、(1)買い取り価格の中長期的目標を設定して事業の予見性を高める、(2)当初の法では毎年または半年ごとに見直されていた買い取り価格を数年先まで予め決める事を可能にする、の2点が改正点である。改正FIT法に加え、地熱の導入拡大施策として以下のような施策が掲げられている。

  1. 掘削調査や開発プロセスへの支援拡充(JOGMECヒートホール掘削、JOGMEC出資制度の拡充)
  2. 円滑な事業実施を図るための事業環境整備(JOGMEC内アドバイザリー委員会設置、自治体間のネットワーキング構築のための連絡会開催と経産省メルマガ発行、市町村が判断する開発是非の判断基準明確化)
  3. 低コスト化・リスク低減に向けた技術開発

技術開発としては、JOGMECによる地下構造三次元可視化、PDCビット開発、シリカ回収技術開発など、NEDOによる硫化水素着地濃度シミュレーター開発、エコロジカルランドスケープ手法の開発、超臨界地熱発電実現可能性調査、等が進められている。

規制および規制緩和(環境省関係)

平成27年10月2日付け環境省自然環境局長通知が発出され、第1種特別地域の外から傾斜掘削で第1種特別地域の地下に進入する事が許可され、また、13mを超える建築物の規制が実質的に取り払われた。更に、平成24年3月27日付け環境省自然環境局長通知で許可条件とされた「優良事例」とは如何なるものか、「通知の解説」が必要であるとの事から、2015年3月から4回の委員会が開催され、そこでの審議を経て、「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて(平成27 年10 月2 日 環境省自然環境局長通知)及び同通知の解説(平成28 年6 月23 日 環境省自然環境局国立公園課)冊子版」が公表された。

「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」(平成24年3月)の5年毎改訂に向けた委員会が2016年度中に開催され、2017年4月に改定案が公表され、パブリックコメント募集が行われた[1]

その他の動向

超党派地熱発電普及推進議員連盟の活動に関連し、JOGMEC主催による地熱シンポジウムが毎年行われているが、2017年度は10月16日に地熱学会学術講演会の前日に函館市で開催された。

2016年10月8日は日本最初の地熱発電所である松川地熱発電所の運開50周年に当たるため、この日を「地熱発電の日」とする事となり、毎年、記念行事を行う事が企画された。2017年は北海道森町森小学校、秋田県湯沢市翔北高校、熊本県小国市の小国中学校への出前特別授業がJOGMECと日本地熱協会、産総研の協働で行われた。

日本地熱協会は2017年11月1日時点で正会員64社、特別会員7団体となった。2017年度の政策要望書は以下の12項目からなる(日本地熱協会ホームページ参照)。

  1. 「固定価格買取制度」の長期的な運用と現行価格の据え置き
  2. JOGMEC およびNEDO による地熱資源開発助成等の継続と拡充
  3. 「地熱発電に対する理解促進事業費補助金」の拡充と継続による住民合意形成支援と乱開発防止策の導入
  4. 系統連系に係る支援
  5. 再生可能エネルギーの導入拡大のための税制の措置
  6. 再生可能エネルギーの発電設備に係る固定資産税の軽減税制の継続
  7. 「軽油引取税の課税免除の特例措置(地熱資源開発事業)」の継続
  8. 規制緩和の趣旨に沿った国立・国定公園内の地熱開発に係る優良事例の考え方の運用
  9. 「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」の作成趣旨に則った運用
  10. 環境影響評価手続きの効率化など
  11. 国有林野等に関する許認可手続きの効率化
  12. 大規模地熱発電を支える小規模地熱発電の普及

3.4.2 産業動向

大型地熱発電は山間地に建設されるものが一般的であるため、地方の経済に貢献する産業として位置付けられるが、2016年3月に横浜国立大学の本藤研究室より、「再生可能エネルギー部門拡張産業連関表 REFIO Ver.1.0が発表された。その解説書から再エネ発電設備の運用(発電)にともなう波及効果の技術間比較を図3.8に示す。大規模地熱発電では建設、対事業所サービス、鉄鋼、金融・保険の項目のコスト比率が高いことが示されていて、初期建設コストが高い産業であることを反映している。

この種の研究は他に別府大学、京都大学、立命館大学などの研究者によっても行われている。

図3.8 地熱発電の経済的波及効果|出典:横浜国立大学 本藤研究室

地熱発電開発の動向に関する情報入手先は以下の通りである。

  • 経済産業省 資源エネルギー庁 資源燃料部 政策課
  • 経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課
  • 経済産業省 資源エネルギー庁 総合政策課 戦略企画室
  • 環境省 地球環境局 地球温暖化対策課
  • 環境省 自然環境局 国立公園課
  • 環境省 自然環境整備課 温泉地保護利用推進室
  • 独立行政法人 石油天然ガス・鉱物資源機構(JOGMEC)
  • 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
  • 独立行政法人 産業技術総合研究所(AIST)
  • 独立行政法人 国際協力機構(JICA)
  • 日本地熱学会(GRSJ)
  • 日本地熱協会(JGA)(日本地熱開発企業協議会の業務の一部を引き継ぎ)
  • 一般財団法人 新エネルギー財団(NEF)
  • 一般社団法人 火力原子力発電技術協会(日本地熱調査会の業務の一部を引き継ぎ)
  • 一般財団法人 エンジニアリング協会
  • 地熱発電開発ディベロッパーのプレスリリース
  • 地熱発電開発推進県市町村のホームページ
  • 超党派地熱発電普及推進議員連盟

(日本地熱協会 安達正畝)


[1]環境省「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」改訂(案)に対する意見の募集https://www.env.go.jp/press/103810.html