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【イベント】公開シンポジウム 風力発電の社会的受容性

■ 趣旨
風力発電は再生可能エネルギーの主力として世界的に普及拡大が進められる一方で、地域住民や自然保護団体の合意が得られず、反対運動などに発展するケースも世界的に増えています。このことは、風力発電プロジェクトが停滞する要因の一つとなっていますが、その一方で地域の人々が積極的に関わりながら持続的開発を実現している例も数多く存在します。こうした相反する事例が存在する背景には、事業の進め方・主体のあり方・利益の配分といった多様な要因があり、社会的受容性という課題として世界各国で議論が行われています。

こうした取り組みの一つに IEA(国際エネルギー機関) Wind Task28 があり、2009 年から風力発電の社会受容性について調査研究を進めてきました。スイスやドイツなど 11 ヶ国の社会科学研究者・ 行政・中間支援組織がメンバーとなっており、多様な立場と国毎の事情を踏まえた上で、望ましい風力発電事業のあり方について議論してきました。これまでの成果として事業に伴う社会的要因の特定や地域社会に受け入れられやすい住民参加型の風力発電プロジェクトに関する知見を蓄積しています。

本シンポジウムでは、日本での Task28 会議に併せて最新動向を紹介する機会として開催します。各国の風力発電の導入問題やその対応策などについての報告の他、海外の事例を参考にしながら今後の日本における風力発電の取り組みについて議論したいと考えています。

■ 開催概要
共催:「持続可能な風力利用のための統合的ガイドラインと支援ツール」研究グループ
一般社団法人日本 電機工業会(JEMA)
認定NPO 法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
日時:2013年5月31日(金)14時~18時
場所:一般社団法人日本電機工業会(JEMA) (千代田区一番町17番地4) 6 階会議室
交通案内:地図はこちら
地下鉄半蔵門線 >> 半蔵門駅下車 4番出口徒歩3分
地下鉄有楽町線 >> 麹町駅下車 3番出口徒歩7分

■ 参加申込み

※ 定員に達しましたので参加申込み受付けは締め切りました。後日、Ustream配信を予定しておりますので、そちらをご視聴下さい。

■ プログラム
第一部:IEA Wind Task28 報告
Task28の最新動向と、ドイツとアイルランドにおける風力発電の導入問題や社会的受容のための取り組みを紹介します。

ロバート・ホバティー IEA Wind Task28(スイス)
「IEA Wind Task28最新報告書の紹介」
IEA Wind Task28事務局長、ENCO Energie-Consulting AG(スイスのエネルギーコンサルティング会社)の設立者、代表取締役。スイスにおける風力発電のパイオニアであり、スイス連邦政府エネルギー局で風力エネルギーのR&Dプログラムに従事した経験がある。市民エネルギー政策にも注力しており、自治体によるエネルギーと環境管理のための「Energy City」の設立に貢献。

グンドラ・ヒュブナー ハレ大学(ドイツ)
「風力発電の騒音問題と地域住民」
ハレ大学心理学科准教授、IEA Wind Task28ドイツ代表。ドイツ連邦政府の委託研究として、ドイツ国内の風力発電の受容性に関する研究を多く手がける。省エネや再生可能エネルギー利用の消費者行動に関する研究にも従事しており、環境心理学的側面から持続可能な社会の構築に向けた研究を行っている。

ギャラン・エリス クイーンズ大学ベルファスト(アイルランド)
「アイルランドの市民出資による風力発電の社会的受容性への取り組み」
クイーンズ大学ベルファスト上級講師。空間計画を専門とし、エネルギーと関連した町づくりに携わっている。 環境団体等での活動や、南アフリカのレソト王国の地域開発アドバイザーなどを経て現職に至る。アイルランド 北部で NGO 活動を積極的に行っており、持続可能な教育のための研究所の設立や、英国の持続可能な開発の委員会メンバーとしても活動している。

第二部:日本における現状と解決に向けた取り組み

日本の風力発電の導入状況や、導入問題、その解決の糸口を日本の事例から紹介します。

石原茂雄 一般社団法人日本風力発電協会(JWPA)
「風力発電事業の社会的制約(仮)」
一般社団法人日本風力発電協会(JWPA)環境部会副部会長、電源開発株式会社環境エネルギー事業部風力事業 室調査役。JWPAでは国際部会長を任務するなど、国内外の風力発電の導入状況や動向に詳しい。現在は電源開発株式会社で風力発電事業の開発業務を担当しており、事業プランニング、地元調整など現場での経験を豊富に有している。

島田泰夫 一般財団法人日本気象協会
「風力発電と鳥類の共存を図るための順応的管理について」
一般財団法人日本気象協会環境事業部技師。順応的管理を取り入れた鳥衝突リスク管理モデルを提案している。 個体群サイズと風車への衝突数のモニタリング、および、保護増殖施策の導入により、個体群の管理をめざしている。生態リスクが専門で、風力発電のバードストライク問題に精通している。

鈴木亨 NPO法人北海道グリーンファンド
「市民風力発電」
NPO法人北海道グリーンファンド理事長、一般社団法人自然エネルギー市民基金代表取締役。自治体職員、生活クラブ生活協同組合北海道職員を経て現在に至る。「グリーン電気料金制度」を開始し日本初の市民出資型の風力発電事業を行う。市民風車のパイオニアとして、各地の取り組みを支援している。

飯田哲也 NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
「自然エネルギーコンセンサス」
NPO 法人環境エネルギー政策研究所所長。原子力産業や原子力安全規制などに従事した後、北欧での研究活動や非営利活動を経て ISEP を設立。自然エネルギーの市民出資やグリーン電力のスキームなどの研究と実践を手がけるとともに、政策提言を行い地方自治体のエネルギー政策に大きな影響力を与えている。

第三部:総合討論

風力発電開発、野鳥保全、エネルギー政策の立場などから意見交換を行い、今後の風力発電の取り組みについて議論します。

司会:丸山康司 名古屋大学
名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻准教授。環境社会学を専門とし、環境保全と地域社会の関係を中心とした課題に取り組んでいる。大学での研究の傍ら、NPO法人グリーンエネルギー青森の理事長として市民風 車「わんず」を建設した。

※ 本シンポジウムは、三井物産環境基金研究助成による成果の一部です。