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九州電力の太陽光発電に対する出力抑制に関する事業者アンケート結果と提言(速報)

当研究所は、九州本土エリアの太陽光発電の出力抑制の現状と実態を把握することを目的として、太陽光発電事業者へのアンケート調査を実施し、その結果の速報と提言をまとめました。

要旨

  • 九州電力管内での太陽光発電事業者は2021年4月以降、2か月間で最大20%もの出力抑制を受けており、これほど大きな出力抑制を放置すれば、他電力管内に類似運用が波及し、新規投資も低迷することで2030年46%削減目標が達成できないため早急な改善策が待ったなしである。
  • 需給調整に必要な出力抑制であるなら、経済補償をすることが妥当である。石炭火力のさらなる抑制・関門連系線の最大限活用など優先給電ルール徹底と、系統全体の柔軟性の拡充も必須である。

九州電力の太陽光発電に対する出力抑制に関する事業者アンケート結果と提言

九州電力(2020年4月より九州電力送配電)は、2018年10月より太陽光発電および風力発電に対する出力抑制(制御)を実施しているが、2021年4月よりそのルールが変更され、オンライン制御が可能な指定ルールの太陽光発電所については、全事業者を一律に「%制御」している。これに伴い、「無制限・無補償」の指定ルールの太陽光発電所においては、2021年4月以降、4月中に19回、5月中に13回の出力抑制が行われ、前年(2020年)と比べて大幅に増加している。そこでその実態を調査するために九州電力本土エリアの太陽光発電事業者へのアンケート調査を実施した。九州本土エリアの太陽光発電の出力抑制の現状と、このアンケート結果の速報を以下に示す。

1. 九州本土エリアでの太陽光発電の出力抑制の状況

九州本土エリアにおける太陽光発電の出力抑制について、九州電力送配電が公表している需給データにより、2018年10月から2021年5月までの発電電力量の抑制率を図1に示す。2020年4~5月の平均の抑制率は9.7%だったが、2021年4~5月には14.0%に増加している(2021年4月の抑制率14.4%は過去最高)。一方、抑制前の太陽光の発電電力量について2021年と2020年の4~5月を比較すると11%減少しており、この期間の全天日射量が九州全域で約12%減少している影響が大きい。

2. 太陽光発電事業者アンケート結果

九州本土の太陽光発電事業者へのアンケートの結果、56件の太陽光発電所に関する回答を得ることができた。発電所の規模(パネル容量)は低圧から高圧まで多岐に渡るが、平均のパネル容量は1,090kWだった(連系容量は935kW)。アンケートへの回答の内訳を表2および図2に示す。出力制御の回数(日数)は、全体的には8回から16回と2倍になっており、30日ルールが適用される旧ルールのうち、制御方式がオフラインの場合、制御回数は11回から13回にわずかに増加しているが、オンライン化されている場合には10回から6回に制御回数が減少している。

一方、4月から出力抑制ルールが大幅に変更された指定ルールの発電所では制御回数が3回から32回と10倍以上になっている。その結果、日射量の変化率を考慮した上で、出力抑制が寄与した発電電力量の減少率は発電所全体の平均が12.6%減少に対して、指定ルールの発電所では19.4%の減少となった。

3. 緊急再提言

ISEPは、2020年10月に本件に関して提言している[1]。そのうち以下の5点を緊急に再提言する。

  • [提言4] 石炭火力発電の停止を含めて、最小限に絞り込むこと
  • [提言5] 原発稼働スケジュールを見直すこと
  • [提言7] 優先給電(出力抑制)ルールを見直すこと(原子力との入れ替え)
  • [提言8] 出力抑制に対して経済的に補償すること
  • [提言9] 地域間連系線ルールの見直しと拡充を図ること

[1] ISEP「九州電力の自然エネルギー出力抑制への9の提言」(2020年10月5日)

このプレスリリースに関するお問い合わせ

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 担当:松原・飯田
お問い合わせフォーム: https://isep.or.jp/about/contact
TEL: 03-3355-2200 FAX:03-3355-2205