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【提言】 固定価格買取制度(FIT)への提言~平成26年度調達価格および制度運用の課題~

固定価格買取制度(FIT)への提言

~平成26年度調達価格および制度運用の課題~

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所
2014年3月19日

2012年7月1日に施行された固定価格買取制度(以下、FIT制度という)が、運用開始から2年目を迎え、大きな成果と共に様々な課題が見えて来た。その中で、制度開始から3年目となる平成26年度の調達価格等の見直しの検討のため、調達価格等算定委員会が1月からスタートし、4回の審議を経て3月7日に「平成26年度調達価格及び調達期間に関する意見」を公表した。その後、わずか10日間という非常に短い期間のパブコメを経て、平成26年度調達価格が3月末までに決定される。ISEPではすでに、本FIT制度を取り巻く様々な課題を踏まえた上で、「自然エネルギー政策・固定価格買取制度(FIT)への提言」を2014年1月22日に発表し、FIT制度を含め自然エネルギー政策への様々な提言をしている。これらを踏まえ、平成26年度調達価格に関して、以下の5つの提言をし、意見として資源エネルギー庁へ提出した。

  • 10kW以上の太陽光では、出力規模により発電のコスト構造が明らかに異なるため、新たな調達価格の区分を設けるべきである。

[理由] 10kW以上の非住宅用太陽光については、表【参考9】で、その出力規模により異なるシステム費用となっていることが運転開始設備のデータから明確になってきており、平成25年10-12月期において1000kW以上のシステム費用27.5万円/kWに対して、50kW未満では36.9万円/kWと10万円程度のシステム費用の差があることが分かっている。このシステム費用の差は、1年前の平成24年10-12月期には、約15万円もあったため本来は平成25年度調達価格の段階での見直しが必要だった。すでに2000kW以上の太陽光の設備認定が1000万kW以上に達している一方で、50kW~500kWの設備認定は150万kWしかなく、大きな偏りを見せている(買取制度運用WG資料)。

  • 使用する燃料の種別やコストが大きく影響するバイオマス発電については、規模や燃料種別等によるきめ細かい条件を定め、それごとに調達価格の設定が必要。特に、木質バイオマスについては、設備費用や燃料調達コストを含む運転費用などを踏まえた上で、発電規模の上限(例えば2万kW程度)を設定とすることや、発電規模に応じた調達価格を定めるべき。燃料調達の実態を把握すると共に、地域の森林資源を適切に活用できる2000kW未満の中小規模の木質バイオマス発電については、その市場動向を調査した上で調達価格の区分を設定すべき。また、比較的コストが低く、事業採算性の高い大規模な石炭混焼発電については、FIT制度の対象外とするか、新たな区分を設け、そのコストを反映した調達価格を定めるべき。さらに、熱電併給や燃料のカスケード利用を前提とした買取価格の設定を行う必要もある。

[理由] 全国で、平均1万kWを超えるバイオマス発電の計画が全国で50か所以上あり、60万kWを超えている。特に東北、九州、中部に計画が多く、未利用材や一般木材の利用を計画している。すでに燃料の安定供給に対する懸念が生じており、木質バイオマス資源の特性から、地域の森林資源の活用が前提となることため、大量の燃料を必要とする大規模な設備に対しては、一定の制限が必要である。

  • 認定設備や運転開始設備の一覧等も定期的(4半期に一回程度)に公開するべきである。RPSから本制度への移行した設備も含め、事業者のノウハウを活かしつつ、新たな設備導入へのインセンティブを生み出す仕組みとするためにも、既存設備を認定する際には、今後の新規事業の参考にもなるように、これまでの運転データ(発電量など)を蓄積してできるだけ公開する必要がある。特に、これまで設備認定された設備については、これまでの実績データを整理し、必要に応じて発電事業者や研究者が実績データを活用できる仕組み(データベース)を作るべきである。設備認定や運転開始状況、運転データ(発電量)などを集計して、できるだけ詳細な統計データを整備して公開すべき。

[理由] 本制度に関するデータは、本来、毎月更新されるはずであるが、2013年11月末のデータは2014年2月になって公表された。それ以前は、2013年末までは2013年7月末までの情報しか公開されていなかったなど、多くの国民が費用負担を含めて関わりを持つ制度として情報公開の課題は多い。さらに再生可能エネルギーの統計データは、これまで系統的に整備されておらず、ドイツのAGEE-statの様な体制整備が必要である。

  • 特に太陽光の普及に伴う導入コストの低減に伴い、原則年度毎に設定される新規の発電設備に対する調達価格を、予見性をもって低減していく必要がある。予め翌年度の調達価格の逓減率を定める方法が望ましいが、予見が可能な様にコストデータなどを積極的に集計し、情報公開すべき。そのためには、調達区分や調達価格を定めるその際のコストデータを着実に集積し、できるだけ頻繁に公表(ホームページ等)・活用する仕組み(データベース等)を整えるべきである。さらに設備認定や運転開始に伴うコストデータだけではく、それ以外の市場データについても集計・分析を行う仕組みを整備する必要がある。

[理由] 発電事業者や電力会社(系統運用者)、制度運用者の予見性を高め、適切な制度運用をおこなう。

  • 10kW未満の住宅用の太陽光発電についても全量買取に移行すべきである。

[理由] 住宅用の太陽光発電(出力10kW未満)については、現状の余剰電力の買取制度を継続することがこれまでの経緯に配慮した形としてスタートした。しかし、実際に10kW以上の非住宅用の急速な導入増加に比べ、10kW未満の住宅用についてはFIT制度開始前のペースでの導入に留まっているのが現状である。全量買取に移行すべき理由は以下のとおり。

  • 家庭毎に電力の余剰率には10〜90%程度と大きな差があり、不公平を内在している。全量であれば、本質的に公平な制度となる。
  • 余剰のみ比べて飛躍的な普及が可能となり、導入量の拡大による技術学習効果によってコスト低下が早まり、長期的にはむしろ有利である。
  • 「余剰の方が省エネ効果」との指摘もあるが、一時的かつ限定的な効果に過ぎず、省エネはそれを目的とした施策や技術により対応することが本筋である。同じく「余剰の方が賦課金負担が小さい」との指摘もあるが、これは買取単価設定との見合いであるため、全量方式にしたうえで、適切な単価を設定すべきである。
  • なお、全量買取は既存の余剰制度との選択制にすること、全量買取は屋内配線を変えなくても「見なし」として扱うことにより施工費も低減できるため、既存制度からスムーズに移行できる。

さらに、国民に開かれた場でのFIT制度の見直しやさらなる情報公開が必要である。本FIT制度の開始から1年半が経過し、制度上の様々な課題が見えてくる中、調達価格に関する審議を行う調達価格等算定委員会とは別に制度運用に関するワーキンググループ(買取制度運用ワーキンググループ)が、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会の下に2014年2月から設立された。FIT制度に関して審議する正式な第三者機関として、調達価格等算定委員会がすでにあるにもかかわらず、それとは無関係に新たな検討組織が経産省主導で設立されたことになる。調達価格における新たな買取区分と制度運用の見直しのため、FIT制度に関する省令を改正するパブコメが3月18日より行われているが、FIT制度の本来の目的と実態を踏まえた制度運用のさらなる改善が望まれる。

【このプレスリリースに関するお問い合わせ】
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
お問い合わせ:  https://www.isep.or.jp/about_contact
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担当:松原