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自然エネルギーが『パリの希望の灯』となった

2015年12月12日、パリで開催されたCOP21で、2020年以降の気候変動対策の新たな法的枠組み「パリ協定」が採択されました。これに対する当研究所の声明を下記の通り発表いたします。(PDFはこちら


自然エネルギーが『パリの希望の灯』となった ~COP21「パリ協定」採択を受けて~

2015年11月30日より12月12日までパリ(フランス)で開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)では、人類の社会経済活動から排出される二酸化炭素等の温室効果ガスによる破局的な気候変動を阻止するために、世界各国が参加する2020年以降の気候変動対策の新たな法的枠組みとして「パリ協定」が、196の国・地域の代表団が出席したCOP21において満場一致で合意・採択された[1]

この「パリ協定」では、21世紀末までの地球の平均気温上昇を産業革命以前と比べて少なくとも2℃未満に抑え、さらに1.5℃未満を目指すためには、21世紀後半までに化石燃料などからの温室効果ガスの排出量をゼロに近づけることが長期目標として求められている。特に「パリ協定」ではアフリカ諸国等でのエネルギーアクセスについて自然エネルギーの重要性が初めて言及された。

しかし、これまで各国から提出された国別目標案を足し合わせると、気温上昇が2℃を大幅に超えることになり、今後5年毎の目標の見直しと各国国内での取り組みの強化が重要となっている。エネルギー大量消費社会から低エネルギー社会へと根本的に改革すると同時に、化石燃料や原発に依存したエネルギーの供給構造から、「脱炭素」社会を実現するため自然エネルギー100%に転換していくことが必要である。

COP21で表明された数々の団体、自治体や企業などのイニシアチブにより自然エネルギー100%への動きは世界中で大きなうねりとなっている。世界各地から1000人近く集まったパリ市を含む自治体のリーダーが2050年までに80%のCO2排出削減や長期目標として100%自然エネルギーを目指すことを宣言した[2]。さらに、グーグルやIKEAを始め53もの国際企業も自然エネルギー100%の実現をすでに目指している[3]。一方、地熱資源が豊富な欧米やアフリカ諸国36カ国が「世界地熱連合」[4]を設立して、先進国と途上国が共同で地熱開発に取り組むなど、多くの国際的な自然エネルギー関連のイニシアチブが立ち上がっている。

自然エネルギー先進国のみならず途上国を含めて、世界各国はこれまでの化石燃料に依存した社会を根本的に転換するため自然エネルギーを主役にして、この困難な気候変動問題に立ち向かおうとしている。日本は、いまこそ立ち遅れたエネルギー政策を見直し、自然エネルギー100%の「持続可能なエネルギー」への転換の先頭に立ち、この世界規模の気候変動問題の解決に向けて進むべきである。

このCOP21「パリ協定」の採択を受けて、環境エネルギー政策研究所(ISEP)は自然エネルギー100%を目指して以下の提言をする。

1. 自然エネルギーを主役に

気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出削減には、エネルギー供給システムへの根本的な対応が必要であることは論を待たない。その気候変動対策の主役は、エネルギー効率化や省エネルギーはもちろんだが、それに加えて自然エネルギーを主役に据える必要がある。

太陽エネルギーや風力、バイオマスなどを源とする自然エネルギーは、世界中で公平に利用できること、誰もが参加出来る民主的なエネルギーであること、地域や国のエネルギー自立や経済の自立に資すること、現実に飛躍的に導入拡大が進んでいること、永続可能でクリーンな資源であり、唯一の持続可能エネルギーであることから、自然エネルギーを主役とすべきである。

2. 実現性の乏しい原発とCCSに頼らない

一部の国で気候変動対策のひとつとして考えられている原子力発電には、重大なリスク(過酷事故、核廃棄物、核拡散など)があることが3.11の福島第一原発事故で明確になっている。また、二酸化炭素回収・貯留(CCS)は実現がいまだ困難な巨大技術であり、電力自由化に伴い日本国内や海外で検討されている石炭火力発電所は削減の必要こそあれ、新規の導入は気候変動政策の実現性を明らかに損なうものである。これらのエネルギー源はその投資リスクと非民主性から現実的には進まず、また進めるべきではないエネルギーである。

3. 地域主導・住民参加のボトムアップで自然エネルギー100%を目指す

長期的な気候変動対策として、100%自然エネルギーを各国や地域で目指すべきである。環境エネルギー政策研究所(ISEP)では、唯一持続可能なエネルギー源である自然エネルギーについて様々な地域で100%を目指す取組みを支援し、拡大する国際キャンペーン「自然エネルギー100%世界キャンペーン[5]の創設パートナーとなり、様々な活動に取り組んでいる。

とりわけ、地域主導・住民参加によるボトムアップが重要である。すでに県レベルで自然エネルギー100%を目指している福島県や長野県をはじめ、全国各地で地域が主体となった自然エネルギーへの取組み「コミュニティパワー」が広がりを見せている[6]

4. さらに野心的な気候変動対策の目標を示し行動を

IPCCの第5次評価報告書は、気候変動への脅威への危機感を明確に示し、その対応が全世界各国で急務であることを明確に示している。まず日本政府や地方自治体は、長期目標として閣議決定されている2050年までに温室効果ガス80%削減を実現する道筋を明確に示し、2015年7月に各国目標案(INDC)として示された不十分な排出削減目標26.0%(2030年度、2013年度比)を、各国政府と共に国際的に合意されている「2℃未満」を達成し、さらに世界各国が「1.5℃未満」を目指すことのできる公平かつ野心的な目標(少なくとも1990年比40%以上)に引き上げる必要がある[7]

その上で、日本は地球温暖化対策の具体的なロードマップを明確にし、国および地方自治体のエネルギー政策全般を根本的に見直し、全てのステークホルダーが具体的な行動をする必要がある。さらに、2020年以降の気候変動対策への取り組みのため、各国政府や自治体・企業がさらに高い削減目標を策定し、具体的な気候変動対策を全てのステークホルダーが参加して着実に実施することを強く要望する。

参考資料

[1] COP21 UNFCCC(気候変動枠組条約)ホームページ http://unfccc.int/2860.php
[2] World Future Council “Despite a weak outcome: Paris was first “renewables COP
[3] RE100, 2014 http://there100.org/companies
[4] Global Geothermal Alliance, 2015 “Joint Communiqué on the Global Geothermal Alliance
[5] 自然エネルギー100%世界キャンペーン http://go100re.net/?lang=ja
[6] 飯田哲也+ISEP編著「コミュニティパワー エネルギーで地域を豊かにする」学芸出版,2014年11月
[7] CAN-Japan「新しい日本の気候目標への提言(改訂)」 http://www.can-japan.org/advocacy/1795

このプレスリリースに関するお問い合わせ

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
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