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自然エネルギー100%の『持続可能なエネルギー』への転換を

2015年11月30日から12月11日まで、フランス・パリで、COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)が開催されます。京都議定書に続く、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みを模索する今回の会議の開催に対して、下記の通り、当研究所の声明を発表いたします。(PDFはこちら


自然エネルギー100%の『持続可能なエネルギー』への転換を 〜COP21への声明〜

2015年11月30日よりパリ(フランス)で開催されるCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)では、人類の社会経済活動から排出される二酸化炭素等の温室効果ガスによる破局的な気候変動を阻止するために、世界各国が参加する「京都議定書」後の法的枠組みの合意が期待されている。21世紀末までの地球の平均気温上昇を少なくとも2℃未満に抑えるためには、エネルギー大量消費社会から低エネルギー社会へと根本的に改革すると同時に、化石燃料や原発に依存したエネルギーの供給構造から、自然エネルギー100%に転換していく必要がある。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が7年ぶりに発表した第5次評価報告書[1]では、CO2など人為的な温室効果ガスが原因で人類は気候変動の影響を受け始めている科学的根拠はすでに明白であり、影響が出始めている脆弱性に対しては適応策が必要な状況となっている。

以下、COP21に向けて、環境エネルギー政策研究所(ISEP)として以下の声明を発表する。

1. 自然エネルギーを主役に

気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出削減には、エネルギー供給システムへの根本的な対応が必要であることは論を待たない。その気候変動対策の主役は、エネルギー効率化や省エネルギーはもちろんだが、それに加えて自然エネルギーを主役に据える必要がある。

太陽エネルギーや風力、バイオマスなどを源とする自然エネルギーは、世界中で公平に利用できること、誰もが参加出来る民主的なエネルギーであること、地域や国のエネルギー自立経済の自立に資すること、現実に飛躍的に導入拡大が進んでいること、永続可能でクリーンな資源であり、唯一の持続可能エネルギーであることから、自然エネルギーを主役とすべきである。

2. 実現性の乏しい原発とCCSに頼らない

一部の国で気候変動対策のひとつとして考えられている原子力発電には、重大なリスク(過酷事故、核廃棄物、核拡散など)があることが3.11の福島第一原発事故で明確になっている。また、二酸化炭素回収・貯留(CCS)は実現がいまだ困難な巨大技術であり、電力自由化に伴い日本国内や海外で検討されている石炭火力発電所は削減の必要こそあれ、新規の導入は気候変動政策の実現性を明らかに損なうものである。これらのエネルギー源はその投資リスクと非民主性から現実的には進まず、また進めるべきではないエネルギーである。

3. 地域主導・住民参加のボトムアップで自然エネルギー100%を目指す

長期的な気候変動対策として、100%自然エネルギーを各国や地域で目指すべきである。環境エネルギー政策研究所(ISEP)では、唯一持続可能なエネルギー源である自然エネルギーについて様々な地域で100%を目指す取組みを支援し、拡大する国際キャンペーン「自然エネルギー100%世界キャンペーン[2]の創設パートナーとなり、様々な活動に取り組んでいる。

とりわけ、地域主導・住民参加によるボトムアップが重要である。すでに県レベルで自然エネルギー100%を目指している福島県や長野県をはじめ、全国各地で地域が主体となった自然エネルギーへの取組み「コミュニティパワー」が広がりを見せている[3]

4. 野心的な気候変動対策目標の合意へ

IPCCの第5次評価報告書は、気候変動への脅威への危機感を明確に示し、その対応が全世界各国で急務であることを明確に示している。まず日本政府や地方自治体は、長期目標として閣議決定されている2050年までに温室効果ガス80%削減を実現する道筋を明確に示し、2015年7月に約束草案(INDC)として示された不十分な排出削減目標26.0%(2030年度、2013年度比)を各国政府と共に国際的に合意されている「2℃未満」を達成できる公平かつ野心的な目標(少なくとも1990年比40%以上)に引き上げる必要がある[4]

その上で、地球温暖化対策の具体的なロードマップを明確にし、国および地方自治体のエネルギー政策全般を根本的に見直す必要がある。その上で、各国政府が高い削減目標を策定し、具体的な地球温暖化対策を全てのステークホルダーが参加して着実に実施することを強く要望する。

参考資料

[1] IPCC第5次評価報告書 http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/
[2] 自然エネルギー100%世界キャンペーン http://go100re.net/?lang=ja
[3] 飯田哲也+ISEP編著『コミュニティパワー エネルギーで地域を豊かにする』学芸出版 2014年11月
[4] CAN-Japan「新しい日本の気候目標への提言(改訂)」 http://www.can-japan.org/advocacy/1795

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認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
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担当:松原、飯田