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【声明】『低炭素エネルギー』から『持続可能エネルギー』への転換を

『低炭素エネルギー』から『持続可能エネルギー』への転換を
~IPCC第5次評価報告書「気候変動の緩和」への声明~

2014年4月18日
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が7年ぶりに発表する第5次評価報告書のうち、昨年9月の第1作業部会報告書「自然科学的根拠」[1]、今年3月の第2作業部会報告書「影響・適応・脆弱性」[2]に続き、第3作業部会報告書「気候変動の緩和」[3]が4月13日に発表された。すでに気候変動の自然科学的根拠は明白であり、人為的な温室効果ガスが原因となり人類は気候変動の影響を受け始めており、明らかになってきた脆弱性に対しては適応策が必要な状況となってきている。今回発表されたこの「気候変動の緩和」を受け、環境エネルギー政策研究所(ISEP)として以下の声明を発表する。

(1)  【危機感への同意】IPCCのこれらの報告書は、気候変動への脅威への危機感を示し、その対応が急務であることを明確に示している。日本政府や地方自治体は、これらの報告書の趣旨に基づき、地球温暖化対策の目標を明確にした上で、その政策を根本的に見直す必要がある。

(2)  【低炭素エネルギーから持続可能エネルギーへ】気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出削減には、エネルギー供給システムへの根本的な対応が必要であることは論を待たない。しかし、民主的で地域自立を促す唯一の持続可能なエネルギー源であり、しかも近年爆発的に普及している自然エネルギーと、持続可能ではなく非民主的な原子力発電や事実上は石炭火力免罪符となっているCCSを「低炭素エネルギー」として同列に並べることは認められない。

(3)  【シナリオの現実性を損なう】排出削減対策として挙げられている原子力発電には、重大なリスク(過酷事故、核廃棄物、核拡散など)があることが福島原発事故で明確になっており、二酸化炭素回収・貯留(CCS)は実現がいまだ困難な巨大技術である。その投資リスクと非民主性から現実的には進まず、また進めるべきではないエネルギーであり、報告書の「シナリオ」どおりには、けっして進まないであろう。

(4)  【自然エネルギー100%シナリオへ】環境エネルギー政策研究所では、唯一持続可能なエネルギー源である自然エネルギーについて様々な地域で100%を目指す取組みを支援し、拡大する国際キャンペーン「自然エネルギー100%世界キャンペーン」[4]の創設パートナーとなり、様々な活動に取り組んでいる。すでに県レベルで自然エネルギー100%を目指している福島県や長野県をはじめ、全国各地で地域が主体となった自然エネルギーへの取組み「コミュニティパワー」が広がりを見せている。

今回発表された報告書「気候変動の緩和」では、気候変動の原因となっている温室効果ガス排出の抑制・削減のための政策が評価され、基礎となる排出シナリオの分析や経済的評価が行われている。これまでの40年間で排出された温室効果ガスのうち78%が化石燃料を起源とする二酸化炭素(CO2)が占めており、石炭の使用量の増加と共に、経済成長と人口増加が最も重要な推進力となってきている。このまま追加的な緩和策のないベースラインシナリオでは、今世紀末(2100年)における世界平均地上気温が、産業革命前と比べ最大8度まで上昇する可能性があると指摘されている。

評価されたシナリオの中で、今世紀末の2100年において大気中の温室効果ガス濃度がCO2換算で約450ppmになる緩和シナリオであれば気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えられる可能性が高い。この緩和シナリオを実現するには、エネルギーシステムと潜在的な土地利用を大規模に変化させることを通して、2010年と比べて世界の温室効果ガス排出量を2050年には40~70%にする必要があり、2100年にはほぼゼロ又はマイナスに至る必要があると指摘されている。

そのための根本的な対策として自然エネルギーなどのゼロカーボン及び低炭素エネルギーの供給比率を2050年までに2010年の3倍から4倍近くにする必要があると指摘されている。原子力エネルギーについては、発電シャアが1993年以降低下しており、福島原発事故や使用済核燃料などにより各種の障壁やリスクが存在することがすでに指摘されている。化石燃料による火力発電については、掘削と供給に伴う温室効果ガス漏出が小さいことを前提に天然ガスを「つなぎ」として利用する必要があるが、二酸化炭素回収・貯留(CCS)についてはその安全性や経済性に多くの懸念がある。

【参考資料】

[1] IPCC第5次評価報告書「自然科学的根拠」http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17176
[2] IPCC第5次評価報告書「影響・適応・脆弱性」 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17966
[3] IPCC第5次評価報告書「気候変動の緩和」http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18040
[4] 自然エネルギー100%世界キャンペーン http://www.isep.or.jp/news/5933

【この声明に関するお問い合わせはこちら】

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
お問い合わせ:  https://www.isep.or.jp/about_contact
TEL: 03-5942-8937,  FAX:03-5942-8938
担当:松原