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【プレスリリース】新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた意見提出

環境エネルギー政策研究所(ISEP)では、2013年12月6日付の新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた意見募集に対して以下の意見を提出しました。これは、「エネルギー基本計画」の見直しについて、4段階の問題点から成る「構造的欠陥」にそって、現政権が策定しようとしている新しい「エネルギー基本計画」の問題点を指摘しつつ、現実的で本来あるべき日本のエネルギー政策の方向性を提言した「エネルギー基本計画への政策提言」の要約版で、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に対して2013年12月5日に詳細版を提出しています(2013年12月13日の基本政策分科会参考資料「国民からの御意見」として掲載済)。

【1】エネルギー基本計画の「基本問題」〜福島原発事故から何を学んだのか?

– 「エネルギー・環境会議」の意義と政府全体のガバナンスの崩壊

それまで経済産業省が専管していた国のエネルギー政策を官邸主導で横断的に見直す体制へと変更。これまでのエネルギー政策を主導してきた省庁・官僚人事を改めた上で、新たな政策検討の議題設定、検討の場の設定

– 正統性なき経産省審議会

福島第一原発事故の政治的・社会的・道義的責任を問われるべき組織・個人であるにもかかわらず、何の責も追わないまま、総合資源エネルギー調査会のもとで、311後の原子力・エネルギー政策を所管することは、明らかに正統性を欠いている。

– 討議型世論調査など国民参加型の議論の不在

エネルギー基本計画の見直しには、政策検討ガバナンスの再構築に加え、国民参加型の議論を可能にするプロセスの再構築が必要

 

【2】「リアリティと危機感」の欠落〜今なお続く福島原発事故の危機を見据えて

– 福島第一原発事故の原因を究明した上で、規制基準を再検討すること

事故原因の多くは置き去りにされたまま、現行の規制基準が決められたことに問題の根源がある。国と地方自治体の原子力防災体制も、何ら改善されていない。

– 福島原発事故を踏まえた、原子力損害賠償基準の見直し

原子力事業者が無限責任を負うための保険に加入することが大原則となるが、現実には国が最終保証。その場合、最低限、想定されうる損害額に対して、保険や積立によって有意の費用措置(数兆円〜数十兆円)

– 今なお続く福島原発事故処理と汚染水への対応

メルトダウンした核燃料の現場封じ込めなど、原発事故の真の収束のメドを立てることが優先

– 持続可能で公正な「ポスト東電体制」へ

国民負担を最小化し、原発事故収束を成し遂げ、損害賠償や電力供給を安定的に行うために、東京電力を法的整理して、それらの役割ごとに「三分割」。併せて、高速増殖原型炉もんじゅと六カ所再処理工場の廃止措置

 

【3】混乱・混沌の「今」から「原発ゼロ」の未来へ〜「移行管理」(トランジション・マネジメント)の不在

– 再稼動モラトリアム〜再稼動を議論できる段階ではない

「移行管理」(トランジション・マネジメント)の方針を示し、「原発ゼロ」の未来を示す。

– 電力需給対策〜「電気が足りる・足りない」を超えて

「原発稼働ゼロ」の状況における電力需給対策として、この2年半以上の経験やノウハウを踏まえ、いっそうの節電・省エネの深掘りを前提に、需要側管理(DSM)、再生可能エネルギー導入の加速化

– 化石燃料のコスト負担低減策〜企業経営と温暖化対策の一挙両得へ

原発の再稼働を前提とした場合の社会全体へのリスクとコスト負担は膨大。省エネルギー、再生可能エネルギー普及を本格的にエネルギー政策の中心に

– 電力会社の経営問題〜「値上げか倒産か」ではない「第三の道」

電力経営への一時的な国費支援を行い、将来的に発送電分離後の託送料金で回収する仕組みを構築し、各電力会社の原発については、廃炉に関する粉飾会計を止めて、廃炉国営事業へ移管

– 過渡的な原発利用の前提条件

福島原発事故を踏まえた新規制基準のクリアと追加安全対策の完全実施、周辺地域の防災対策の再構築と実効化、福島原発事故を踏まえた原子力損害賠償基準と枠組みの見直し、使用済み核燃料の総量規制合意とその暫定保管場所(数百年程度)の合意と確保、さらに、国民および周辺地域住民による熟議をふまえた同意が前提

– 国民的合意と各地域での合意

国レベルの国民的な合意形成と共に、各地域での合意形成を行うことにより、多くの国民が参加した真に民主的なプロセスでの「原発ゼロ」社会の実現に向けた様々な政策決定

 

【4】持続可能なエネルギー社会像

– 持続可能なエネルギーシフト

資源的・環境的・経済的・社会的に持続可能な社会を確立し、エネルギー面では自然エネルギー・エネルギー効率化などを柱に、明確な目標値を設定し、バックキャスティングアプローチ

– 地域分権型でオープンなエネルギー社会

地域分権・自律型でオープンなエネルギー体制を構築し、コミュニティパワー原則に従った社会的合意に基づいた自然エネルギーの普及

– 新しいエネルギー市場で、国際的に競争力のあるエネルギー産業を構築

グローバルな自然エネルギー産業で競争優位を確立。新たな自然エネルギービジネスモデルを開発し、途上国への自然エネルギーを活用したビジネス

– 気候変動問題への対応

先進国として、国際社会に対する歴史的な誇りある責任を果たし、2050年80%削減目標を堅持

【意見の詳細】

エネルギー基本計画への政策提言〜構造的欠陥を踏まえた現実的な政策提言〜

https://www.isep.or.jp/library/5708