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【プレスリリース】「電力システム改革専門委員会報告書」への意見書

 

■ 概要

経済産業省「電力システム改革専門委員会」(以下、委員会という)において議論されてきた「電力システム改革専門委員会報告書」(以下、報告書という)が2月15日に公表された[1]
報告書は電力システム改革に関する重要な方針とその工程表を示している。特に大きな改革とその実施時期目途は以下のとおりである。

・広域系統運用機関設立 :2015年目途
・小売全面自由化          :参入自由化2016年目途
・送配電部門の法的分離 :2018~2020年目途

我々は、これらの改革の確実な実施と一層の前倒し、可能な部分から速やかに実行に移すことを要望する。これら実施時期の妥当性については公開の場で透明で中立的な議論がなされる必要がある。ほか、報告書に対する意見は以下のとおりである。

 

1.送配電部門の絶対的「公平性・中立性」の確保
2012年7月23日に公表された「電力システム改革の基本方針」[2](以下、基本方針という)では、「公共財としての送配電部門の絶対的中立性・公平性が求められる」と記されていたのに対して、報告書ではそのような記述は見当たらない。報告書は基本方針が大前提となっており、今後も送配電部門の絶対的中立性・公平性の確保は電力システム改革の要であることを再度強調すべきである。
送配電部門の一層の中立化策として示された法的分離については、これが決して最終形態ではなく、改革の効果が十分に現れない場合には速やかに所有権分離に移行することを強く確認すべきである。改革の効果測定は抽象的な指標を用いてはならず、可能な限り定量的に測定可能な指標を用いるべきである。具体的には、旧・一般電気事業者以外の市場シェアが特定年までに特定比率以上実現しない場合には、実質的な競争制限が生じていることと判断し、強制的な所有権分離を行うべきである。

2.中長期の供給力確保策と需要側の対策
基本方針では、「節電は電力選択の一つであり、節電が新たな供給力として市場に出て行く」と記されていたように、節電やデマンドレスポンスなど需要側の制度化が必要不可欠であるにも関わらず、報告書では十分踏み込んだ検討がなされていない。ネガワット取引やデマンドレスポンスなど、短期的、実需給断面に近い部分での取り組み、制度化については触れられているが、供給計画といった長期的な視点が欠けている。中長期的な安定供給力確保策として報告書では、容量市場や電源入札制度の創設等が示されている[3]が、視点が旧来の供給側に偏ったものとなっている。
例えば米国カリフォルニア州ではローディング・オーダー制度により、供給資源として、まず省エネやデマンドレスポンスによる需要抑制を計画した後に、再生可能エネルギー、分散型電源への投資を行うという優先順位を定めている。日本でも需要抑制を優先的に供給計画に盛り込むことを義務付けるべきである。

3.再生可能エネルギー電力の拡大を支える系統計画
「革新的エネルギー・環境戦略」で示された、再生可能エネルギー発電量を2030年までに3000億kWh以上、という数値目標は非常に控えめではあるが、少なくともこれを安定的に実現する制度や流通設備が必要である。
「地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会」中間報告書は委員会ではオーソライズされておらず、地域間連系線や地内系統の増強計画が充分ではない。広域系統運用機関の設立を待つことなく、早急に具体的な広域的系統計画策定に着手すべきである。

4.電力分野における競争状態の厳格な監視
電力分野でこれまで競争が著しく不十分であった理由の分析、検証が不十分である。
小口需要への小売参入規制、卸電力市場での電力取引の流動性の低さ、送配電網へのアクセスの中立性確保に疑義があること、新電力の電源の不足、それらはすべて一因である[4]が、これらだけでは一般電気事業者間で競争が皆無であったことを何も説明していない。競争が皆無であった真の理由は一般電気事業者の経営意識であることを念頭に置いたうえ、競争インセンティブが働くよう適切な制度設計が必要である。

5.発電部門と小売部門の分離
報告書では、発電事業、送配電事業、小売事業といった事業類型ごとに、新たにライセンスを付与する制度を創設することを述べている[5]。報告書では、送配電事業のみを兼業禁止としているが、3分野いずれも兼業禁止とすべきである。報告書では法的分離が示されているので、まずは発電事業と小売事業も法的分離を行い、競争が十分でない場合には速やかにこれら2部門の所有権分離を行うべきである。

6.スマートメーターの所有と費用負担
報告書では、今後、スマートメーターの所有者および管理責任者が誰になるのか明らかではない(例えば、送配電会社、小売会社、電力需要家、サービス会社等の第三者、などが考えられる)。また報告書では、供給者の変更を希望する低圧需要家から先行的にスマートメーターを設置する[6]とあるが、その設置費用負担の在り方、費用回収方法の在り方も明らかではないため、所有・管理・費用負担を総合的に検討する必要がある。

7.計画値同時同量制度の導入
報告書では、計画値同時同量をいつまでに導入することを求めるかが明らかではない。報告書では本件はⅡ章の小売全面自由化の第5節として記されているが、インバランス概念が一般電気事業者と新電力の間で均衡が図られていない[7]ことは、小売部分自由化の現時点でも大きな問題となっている。よって本件は内容としては送配電利用の中立化・公平化に大きく関連する課題であり、速やかに解決を図るべきである。

8.卸電力取引所の更なる活用
報告書の参考図8で示された一般電気事業者9社による自主的な取組(370億kWhの売り入札)は、電力需要の4%弱を占めるに過ぎず、欧米では2割~3割が取引所経由となっていることと比較すると著しく低いものである。今後は自主的取組のみならず、具体的数値目標をもった義務的な措置も検討すべきである。(一般電気事業者が卸電力市場に電源を供出しても、全体としては供給力が減少することにはならない)
なお取引所は、現在は休業日である土日にも取引を行うなど、利用者の利便性を向上させる小さな改善策は幾つもある。

9.日本卸電力取引所の法定化
現在の日本卸電力取引所(JEPX)は、私設任意に設立された取引所であり根拠法を持たない。私設任意の取引所が存在すること自体は問題ではないが、JEPXは報告書でも「ガバナンスの中立性等に課題があり、卸電力取引所のガバナンス等の見直しが期待される」と指摘されている[8]。速やかに商品先物取引法を改正するなどしてJEPXの根拠法を定め、中立性を確保すべきである。

10.新電力のベース電源確保の速やかな実現
報告書では、先渡商品の拡充を含む先渡市場の活性化や、卸電気事業者の電源の売電先の多様化を求めているが、新電力のベース電源確保のためには十分とは言い難い。
圧倒的なベース電源規模を持つ一般電気事業者と新電力の競争環境改善のためには、以下の施策が求められる。
(1) 発電部門と小売部門の法的分離。事業類型ごとのライセンス制度を導入する場合には、兼業の禁止。
(2) 特定の発電会社が独占的な一定規模のシェアを持つ場合には、他の発電会社との競争条件を整えるため、一定程度規模まで発電所の強制売却を求める。
(3) VPP制度(virtual power plant:発電所の仮想的売却)の導入。
VPP制度には、当初の設備所有者から所有権を移転することなく(よって民間企業の財産権を侵害することなく)、発電技術移転も必要とせず、速やかに大規模に発電能力を他者に売却することが可能となる特長がある。

11.広域系統運用機関と各エリア系統運用者の責任分担
系統の広域的な運用のため、広域系統運用機関は各エリアの系統運用者と協力して需給調整・周波数調整に当たる[9]とのことであるが、最終的な責任がどこにあるのか今後明らかにする必要がある。仮に各エリア系統運用者の責任が過大である場合、エリア系統運用者は従来通り自社エリアの安定供給を過剰に優先し、広域運用のメリットが損なわれるおそれがある。

12.給電指令等の協調のあり方
報告書では、送配電部門の中立性確保として法的分離/機能分離いずれの方式においても発電部門と送配電部門(給電指令等)の協調のあり方が重要となることが示されている[10]が、今後の安定供給、経済合理性向上のためには、小売部門さらには需要家をも取り込んだ総合的な協調のあり方が一層重要となる。発電部門に偏重した給電指令の在り方を見直すべきである。

13.旧・一般電気事業者グループによる一括資金調達の禁止
報告書では、競争部門での対等な競争条件確保に影響を及ぼさないという条件付ではあるが、親会社(旧・一般電気事業者の持株会社等)による一括の資金調達、送配電子会社への貸付けは規制対象としないことが示されている[11]。送配電会社は公的インフラとしての規制料金事業を行うためデフォルトリスクが著しく低く、高格付けを得ることにより低金利での資金調達が可能である。仮に親会社が現状同様に企業グループとしての一括資金調達を行うならば、それは送配電子会社を持たない他の新電力等と対等な競争条件が確保されているとは言えない。

14.送電線等の流通設備の整備
報告書では、中長期的な安定供給力確保策として容量市場や電源入札制度の創設等が示されている[12]が、安定供給に万全を期すためには発電設備だけではなく、送電線等の流通設備の整備が不可欠である。全国的に十分な発電容量があるにも関わらず送電制約が存在する場合、送電権市場や送電線等建設入札制度の創設を行う必要がある。
将来の送電容量が絶対的に不足すると見込まれる場合は、送電権市場の価格が高騰するため、市場が適切に機能すれば価格メカニズムを通じて送電線等開発投資が促される。しかしながら、何らかの理由で送電線等開発投資が行われない場合に備え、将来的な送電容量不足を回避する最終手段として、広域系統運用機関が送電線等建設者を公募入札する仕組みを設けるべきである。

15.新しい規制機関
健全な電力事業政策を担う経済産業省の外部に、独立した、①電力規制機関、②電力市場監視機関、③電力供給信頼度機関、を速やかに設けるべきである。
公正取引委員会の機能、権限の強化を図り、これら新しい規制機関との連携を強化すべきである。

(補論.電力品質懸念への反論)
一般電気事業者からは、発送電分離を行うと電力品質の低下、安定供給確保の困難さ等の懸念が示されている。しかしながら仮に現状の仕組みのままで新電力シェアが拡大した場合には、インバランス調整が困難となり電力品質低下のおそれがある。つまり一般電気事業者の主張は、一般電気事業者が今後も独占的シェアを持つことを大前提としている。電力品質を損なうものは、発送電分離でもなく、再エネ電力でもなく、現状の仕組みそのものである。
今後、多様な事業者や多様な電源が電力システムに加わることを押し戻すことはできない。そのような状態であっても安定供給、経済性を確保できる柔軟で強靭な電力システムの実現が今求められている。

以上

 

■ 参照

[1] http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/report_002.html

[2] http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/report_001.html

[3] 報告書44ページ4行目

[4] 報告書6ページ18行以降

[5] 報告書10ページ6行目以降

[6] 報告書16ページ1行目

[7] 報告書16ページ13行目

[8] 報告書20ページ5行目

[9] 報告書30ページ1行目および40ページ14行目

[10] 報告書33ページ9行目

[11] 報告書39ページ6行目

[12] 報告書44ページ4行目

 

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