文字サイズ
標準
拡大

2020年の自然エネルギー電力の割合(暦年速報)

当研究所は、2020年の日本国内の全発電電力量(自家消費を含む)の電源別割合を推計しました。その結果、2020年の日本国内の自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は前年の18.5%からおよそ2ポイント増加し、20.8%となりました。

要旨

  1. 2020年 (暦年)の日本国内の全発電電力量(自家消費含む)に占める自然エネルギーの割合は前年の18.5%から20.8%に増加したと推計される。
  2. 日本国内の太陽光発電の年間発電電力量の割合は、2020年には前年の7.4%から8.5%に増加し、VRE(変動する自然エネルギー:太陽光および風力)の割合は8.2%から9.4%に増加した。
  3. バイオマス発電(3.2%)の年間発電電力量は前年から約2割、風力発電(0.86%)も1割程度増加しており、地熱(0.25%)および水力(7.9%)も前年からわずかに増加している。
  4. 化石燃料による火力発電の年間発電電力量の割合は前年から横ばいで74.9%と依然高いレベルであるが、石炭(27.6%)およびLNG(35.4%)は減少傾向にある。原子力発電は前年の6.5%から4.3%に減少した。
  5. 欧州では、すでに自然エネルギーの年間発電電力量の割合が40%を超える国が多くあり、欧州全体の平均でも38.6%に達して、化石燃料による発電の割合37.3%を始めて上回った。VRE(変動する自然エネルギー)の割合もデンマークの55%を筆頭に20%を超える国が多くある。
  6. 2020年(暦年)の電力需給データにおいて、北陸電力、東北電力、四国電力エリアでは自然エネルギーの割合が年間電力需要量の30%を超えた。1時間の最大値では日本全体で70%近くに達しており、VREは最大57%だった。1時間の最大値で四国電力、東北電力および九州電力エリアにおいて自然エネルギーの電力需要に対する割合が100%を超えた。

国内の全発電電力量に対する自然エネルギーの割合

電力調査統計[1]や全国の電力需給データなどより2020年の日本国内の全発電電力量(自家消費を含む)の電源別割合を推計した[2]。その結果、2020年(暦年)の日本国内の自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は前年(2019年)の18.5%からおよそ2ポイント増加し20.8%に増加した(表1、図1)。

2014年には約12%だった自然エネルギーの割合が、毎年1ポイント程度ずつの増加で20%以上に達したことになる(図2)。その中で、太陽光発電の発電電力量は、前年(2019年)の7.4%から8.5%へと増加しており、第5次エネルギー基本計画(2018年7月閣議決定)が2030年度の電源構成で想定している導入割合(7%)をすでに達成している。風力発電の割合0.86%と合わせると、VRE(変動する自然エネルギー)の割合は、前年(2019年)の8.2%から9.4%に増加した。太陽光発電以外の自然エネルギーについては、バイオマス発電(3.2%)が前年から2割程度、風力発電(0.86%)が前年から1割程度増加したが、地熱(0.25%)および水力発電(7.9%)も前年からわずかに増加している。

月別にみると5月の自然エネルギーの割合が最も高く、29.8%に達している(図3)。この年の5月は出水量の関係で水力発電の割合も11.5%と例年より高く、太陽光の割合が13.6%と高くなり、変動する自然エネルギー(VRE)の割合も14.5%に達している(前年は12.4%)。

なお、風力発電については、電力調査統計のデータ(電気事業者送電量と受電電力量)ではなく、電力会社が公表している電力需給データによる送電量を用いている。また、太陽光発電の発電電力量については、電力調査統計のデータを採用しているが、電力需給データと比較すると年間送電量で1割程度大きいため太陽光発電の割合については推計の幅があることに留意が必要である。具体的には、電力調査統計では、太陽光発電の年間発電電力量は85.1TWhだったが、電力需給データによる送電量では70.2TWhだった。住宅用太陽光(10kW未満)の推計値が3.5TWhのため、それと合わせて73.7TWhとなり、1割程度小さいため、太陽光発電の割合は7.5%となる。電力調査統計からの発電電力量の推計値は、電気事業者(小売電気事業者および一定規模以上の発電事業者)からの発電実績の報告と、電気事業者以外の事業者からの受電電力量を合計した数値のため、ダブルカウントなどにより大きめの数字になっている可能性はある。

火力発電の発電電力量は減少傾向にあり、2020年は前年の75.0%から74.9%に減少し、2014年からは約13ポイント減少したが依然として高いレベルである。石炭火力については、2016年の30.2%から2020年は27.6%まで減少しており、LNGについても2016年の38.9%から2020年の35.4%まで減少傾向にある。一方、原子力発電は、2014年にゼロになってから、2015年以降、毎年発電電力量が増加していたが、2020年には4.3%となって、前年の6.5%から減少し、太陽光の発電電力量の割合8.5%の半分程度のレベルである。

表1: 日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電源調査統計などよりISEP作成)

電源 2014年 2015年

2016年

2017年 2018年 2019年 2020年 備考
水力 8.0%

8.6%

7.6% 7.6% 7.8% 7.4% 7.9% 大規模含む
バイオマス 1.5%

1.5%

1.9% 2.0% 2.2% 2.7% 3,2% 自家消費含む
地熱 0.24% 0.25% 0.22% 0.21% 0.22% 0.24% 0.25%
風力 0.47% 0.50% 0.54% 0.61% 0.69% 0.76% 0.86% 電力需給データ
太陽光 1.9% 3.0% 4.4% 5.7% 6.5% 7.4% 8.5% 自家消費含む
自然エネルギー 12.1% 13.8% 14.7% 16.4% 17.4% 18.5% 20.8%
VRE 2.3% 3.5% 5.0% 6.3% 7.2% 8.2% 9.4%
火力 87.9% 85.7% 83.6% 80.8% 77.9% 75.0% 74.9% 石炭、LNG、石油ほか
石炭 30.2% 30.2% 28.2% 27.8% 27.6%
LNG 38.9% 38.4% 37.4% 36.0% 35.4%
原子力 0.0% 0.4% 1.7% 2.8% 4.7% 6.5% 4.3%

 

図1:日本全体の電源構成(2020年速報) 出所:電力調査統計などよりISEP作成

図2:日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

図3:日本国内の全発電電力量に占める月別の自然エネルギーの割合(2020年速報)
(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

図4: 日本国内の年間発電電力量と電源構成の推移

(出所:電力調査統計などよりISEP作成)

海外各国との自然エネルギーの割合の比較

自然エネルギーの電力分野の導入では、1990年代以降、欧州(EU)での取り組みが世界的に先行して進んでおり、欧州28カ国全体(英国を含む)での割合も2017年には30%を超え2020年には約38.6%に達して、化石燃料による発電の割合37.3%を始めて上回った[3]。これは日本国内の自然エネルギー電力の割合の2倍近くに達する。太陽光発電および風力発電といった変動する自然エネルギー(VRE)の割合も欧州全体で20.5%と、日本国内の9.4%の2倍以上に達している。

主要な欧州各国の自然エネルギーによる2020年の年間発電電力量の割合の内訳を図5に示す。この図はドイツのシンクタンクAgora Energiewendeが推計した欧州28カ国の電力部門に関する2020年の最新データに基づいている。オーストリアでは、水力発電の割合が60%以上あり、風力10%やバイオマス6%と合わせて自然エネルギーの割合が80%近くに達している。変動する自然エネルギー(風力および太陽光)VREの割合がすでに55%に達しているデンマークでは年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合が約76%に達している。スウェーデンでは68%、ポルトガルでは58%に達し、すでにイタリア、ドイツ、イギリス、スペインにおいても自然エネルギーの割合が40%以上に達して、欧州の平均を上回っている。VREの比率も欧州全体で20%に達しているが、ドイツでは30%を超えており、イギリスやスペインも30%近くになっている。一方、原発の比率が70%近くに達するフランスでは自然エネルギーの割合は20%程度と日本と同じレベルで、VRE比率も10%に留まりである。バイオマス発電の割合が高い国としては、デンマークで17%、イギリスで12%程度だが、減少傾向にあり、2030年に向けたEU指令(RED II)では、バイオマスの持続可能性の基準がより厳しくなってきている。

2020年にスタートしたパリ協定に対してEU全体では2030年までに温室効果ガスを40%削減(1990年比)する気候変動&エネルギー枠組みを2014年に策定し、2030年までの自然エネルギー割合(最終エネルギー消費)の目標を32%以上に、エネルギー効率化の改善目標を32.5%とする政策決定を2018年に行った[4]。EUでは、2050年までに気候中立(Climate-neutral)を目指すため温室効果ガス排出を実質ゼロとすることを宣言しており[5]、2030年の削減目標についても55%以上に引き上げる検討をしている。EU各国は2021年以降2030年までのエネルギー・気候変動対策計画(NECPs)を策定している[6]。さらにEU委員会は欧州グリーンディール構想(European Green Deal)を2019年12月に発表している[7]

1990年代から2020年までの欧州各国と日本の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移を比べてみると、欧州各国では2020年に向けて1990年代から着実に自然エネルギーの割合を増やしてきたことがわかる。例えばデンマークでは、2000年の時点ですでに17%だったが、2010年の時点で30%を超え、2020年には75%に達しており、2030年までには100%を超えることを目指している(図6)。ドイツは2000年には7%程度だったが、その後、2010年には20%近くにまで増加し、2020年には45%に達し、2030年には65%以上、2050年には80%以上を目指している。ドイツは2000年の時点ではわずか6%だった割合が2020年には44%と7倍以上になった(図7)[8]。一方で、原発の割合は29%から11%まで低下しており、原発ゼロとなる2022年に向けて着実に減少している。ドイツ国内で産出される褐炭を含む石炭の割合は、2000年には50%を占めていたが、2020年には排出量取引(EU ETS)での炭素価格の上昇などが要因となって23.4%まで減少し、風力発電の23.4%と同じレベルとなった。

水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進んだ中国では、2020年には風力発電の年間発電電力量の割合が6.1%、太陽光発電が3.4%でVRE比率がすでに9.5%に達している[9]。水力も含めた自然エネルギーの全発電電力量に対する割合は28.5%に達する。

図5:欧州各国および中国・日本の発電電力量に占める自然エネルギー等の割合の比較(2020年)
出所:Agora Energiewende, China Energy Potal, 電力調査統計などのデータよりISEP作成

図6: 欧州各国および日本の自然エネルギー電力の導入実績・目標
(出所:EU統計局、Agora EnergiewendeデータなどからISEP作成)

図7: ドイツ国内での自然エネルギーの発電電力量と全発電電力量に占める比率の推移
(出典:AGEBデータより作成)

日本国内の電力需給における自然エネルギーの割合

日本全国のエリア毎に一般送配電事業者10社により毎月公開されている電力需給データに基づき系統電力需要に対する自然エネルギーの割合などを中心に2020年(暦年)の一年間のデータを集計した。日本国内の電力需給データについてはISEPのEnergy Chartでは公表されたデータから様々なグラフでインタラクティブに分かり易くデータを分析できる[10]

日本全体の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合は2020年(暦年)の平均値では19.1%となり、2019年(暦年)の年平均17.1%から大幅に増加した。内訳としては太陽光発電と水力発電が両方とも8.1%となり、最も割合が大きくなった。太陽光は前年の7.2%から増加しており、水力発電も前年の7.6%から増加している。バイオマス発電も前年の1.2%から1.6%に増加し、風力発電も0.9%から1.0%に増加した。ちなみに2016年度の時点では自然エネルギーの割合は13.8%で、太陽光発電はまだ4.4%程度だった。一方、2020年の原発の割合は5.0%だったが、前年の7.4%から大幅に減少した。

日本全体の自然エネルギーの電力需要に対する割合の月別の平均値では、2020年5月が27.5%と最も高くなっており、前年の24.2%から大幅に増加している(図8)。この中でVRE(変動する自然エネルギー)の割合は13.7%となり、前年の12.6%から増加した。その内訳は、太陽光発電が12.7%、風力発電が1.0%となっている。1日の平均値では2020年5月2日と4日に34.0%に達したが、VREについては5月2日の20.1%が最大で、前年の最大値17.8%から増加した。1時間値では同じ5月4日11時から12時台の69.6%が1年間のピークで、太陽光が56.4%に達しており、風力発電の1.1%と合わせてVREのピーク値は57.4%になっている。これは前年の太陽光発電のピーク値50.6%から大幅に増加している。ちなみに風力発電のピーク値は2020年11月9日未明の3.3%だった。

電力会社(一般送配電事業者)のエリア別では、2020年(暦年)の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合の平均値が最も高かったのは北陸電力エリアの35.2%だったが、太陽光が4.4%、風力が0.8%に対して水力発電が28.0%と大きな割合を占めている(図9)。自然エネルギーの割合が第2位の東北電力エリアでも、2020年には34.0%に達しており、太陽光が前年の8.3%から9.0%に増加している。風力の割合も4.3%と前年の3.4%から増加し、全国の中でも北海道と並んで高くなっている。バイオマス発電の割合も4.5%と高く、地熱発電も1.3%ある。

東日本全体の平均では自然エネルギーの割合が17.7%と全国平均を下回っている。これは東京電力エリアが12.3%に留まっていることが大きな要因となっている。この東京電力エリアでは太陽光が6.2%と水力の4.7%を上回っているという特徴がある。北海道電力エリアでは自然エネルギーの割合は23.9%でしたが、太陽光の8.0%に対して、風力の割合も高く4.0%に達している。

中西日本全体の自然エネルギーの割合は、20.2%と全国平均の19.1%を上回っているが、太陽光9.1%と風力0.6%を合わせてVREの割合が9.7%と高くなっている。一方、東日本では稼働ゼロの原発が、中西日本では関西電力エリアと九州電力エリアで稼働しており、その割合は太陽光と同じ9.1%だったが、前年の13.5%から減少している。自然エネルギーの割合が第3位の四国電力エリアでは、30.8%となり前年の24.8%からかなり増加しているが、原発の割合はゼロになった。太陽光13.2%、風力1.8%を合わせたVREの割合が15.1%と全国の中で最も高いレベルになり、前年の12.7%から増加した。太陽光発電の割合が全国でも最も高いエリアになっている九州電力エリアでは自然エネルギーの割合は26.3%となり、前年の23.0%から大幅に増加した。特に九州電力エリアでは水力5.6%に対して太陽光が14.3%に達しており、変動する自然エネルギー(VRE)の割合も風力の0.8%とあわせて15.1%と四国電力エリアと共に全国で最も高いレベルになっている。

前年の2019年は1時間値で自然エネルギーが100%を超えるエリアは無かったが、2020年には四国電力、東北電力および九州電力において100%を超える時間帯があった。四国電力では、2020年10月25日11時台に自然エネルギーの電力需要に対する割合が113.7%%に達した(図10)。このピーク時に太陽光発電が84.5%、風力発電が2.2%でVREの割合が86.7%だった。東北電力エリアでは、1時間値で自然エネルギーの割合がピーク時に最大108.8%に達した(2020年5月5日11時台)。このとき太陽光が72.8%、風力が5.5%とVRE比率が78.3%に達している。

図8: 月別の日本全国の電力需給における自然エネルギーおよび原発の割合(2020年)
出所:一般送配電事業社の電力需給データより作成


図9: エリア別の電力需給における自然エネルギーの割合(2020年)
出所:一般送配電事業社の電力需給データより作成


図10: 四国電力エリアの電力需給(2020年10月25日)
出所:四国電力の電力需給データより作成

参考資料

[1] 電力調査統計 http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/

[2] 推計では2020年10月以降の自家発、家庭用太陽光の自家消費量推計については前年値を用いているが、影響は小さいと考えられる。

[3] Agora Energiewende “The European Power Sector in 2020” https://www.agora-energiewende.de/en/

[4] EU委員会 “2030 Climate & Energy Framework” https://ec.europa.eu/clima/policies/strategies/2030_en

[5] EU委員会 “2050 long-term strategy” https://ec.europa.eu/clima/policies/strategies/2050_en

[6] EU委員会 “National energy and climate plans (NECPs)” https://ec.europa.eu/energy/topics/energy-strategy/national-energy-climate-plans_en

[7] EU委員会 “A European Green Deal” https://ec.europa.eu/info/strategy/priorities-2019-2024/european-green-deal_en

[8] AGEB “STORMMIX 1990-2020” https://ag-energiebilanzen.de/

[9] China Energy Portal https://chinaenergyportal.org/en/

[10] ISEP Energy Chart http://www.isep.or.jp/chart/