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ISEP所長メッセージ「フクシマが世界史的な大変革の起点へ」

3.11東日本大震災・福島第一原発事故から6周年にあたって

あの「3.11」から本日で6年となります。東日本大震災および福島第一原発事故の犠牲になり失われた人々とその遺族の方々に対して、まずはあらためて深く哀悼の意を表します。

とりわけ世界史的な原発事故の影響をもっとも大きく受けた福島は、表面上は多くのところで日常を取り戻し復興が進んでいるように見えるものの、全体を見れば、より複雑で困難な状況に陥り、混迷を深めているようにも見えます。

  • 福島第一原発2号機の格納容器内で600シーベルトという即死レベルの放射線量が計測され、メルトダウンした核燃料デブリの取り出しの見通しや増え続ける一方の汚染水など、「40年廃炉」は、誰の目にも「絵に描いた餅」がはっきりしたこと。
  • 4月には県外避難者への支援が打ち切られ、飯舘村や富岡町、南相馬市小高地区などの帰還準備地域での帰還が開始されるが、外部被ばくの線量レベルだけでも「放射線管理区域」を越え(年5ミリシーベルト)、さらに放射性ダストによる内部被ばくを考えれば「グローブボックス」(非密封線源を取り扱う密閉された空間)の中への帰還であること。
  • 福島県中に野積みされている除染ゴミのフレコンバックは、飯舘村だけでも中間貯蔵所への運搬が100年超のペースであり、中間貯蔵所からの「30年で県外搬出」など空誓文であること。
  • 福島県内だけでも184名の子ども達が甲状腺がんを発症しているという現実に向き合わず、原発事故の影響ではないという真逆の結論を先行させ、検査の縮小や放射線の影響そのものを否定する言説がまかり通り、いっそう混迷を深めていること。
  • 福島第一原発事故に伴う事故処理(廃炉)や除染、損害賠償などの費用が22兆円超まで急増し、今後も間違いなく膨れあがることが確実な中、東京電力が負担すべきその費用を、密室での拙速な議論で国民に転嫁することが強行されようとしていること。

目を世界に向けると、6年前の福島第一原発事故の時には、兆候に過ぎなかったエネルギーの世界史的な大構造転換が誰の目にもはっきりと見えるようになってきました。原発を推し進めてきた東芝が、その原発の底なし沼のような崩壊に引きずり込まれ、不正会計から債務超過へ、そしてほとんど倒産へと転落している姿が、その象徴の一つです。他方、2015年には風力発電が世界の原発の設備容量を追い越し、今年中には太陽光発電が原発を追い越そうとし、数年前までコスト高の電源だった太陽光発電は、この5年で5分の1にコストが下がり、ついに昨年はあらゆる電源の中で最も安い電源となりました。

エネルギーのこの世界史的な大構造転換は、同時に分散エネルギー革命でもあり、これまでの「パワーエリート」からエネルギーと権力を人々が取り戻す「パワー・トゥー・ザ・ピープル」の動きでもあります。そして福島がその大変革の起点の一つになろうとしています。

  • 当研究所が全国ご当地エネルギー協会・世界風力エネルギー協会とともに主催して福島市で開催した「第1回世界ご当地エネルギー会議」を昨年11月に成功裏に終え、フクシマが世界のご当地エネルギーの起点となり、次回のマリ会議(2018年予定)へとバトンを繋ぎました。
  • 会津電力全国ご当地エネルギー協会ふくしま自然エネルギー基金の代表である佐藤彌右衛門氏は、福島から人々の手によるエネルギー大変革を象徴する人物として、国内外で注目を集めています。
  • 飯舘村で立ち上がった飯舘電力は、小型分散型の太陽光発電事業から着手して、営農型発電を初めとする50カ所もの事業へと急拡大しつつあり、地元の信用金庫や城南信用金庫との協働が始まりつつあります。
  • 原発からわずか7km地点の富岡町で避難者・地権者主導の33MW・約90億円もの日本最大級のご当地電力「富岡復興ソーラー」が、幾多の困難を乗り越え、来年3月11日の竣工式を目指して、昨年11月に起工しました。
  • いわき市でもご当地エネルギー立上げの動きが始まるなど、福島中でこうした取り組みへの関心や動きが高まってきています。当研究所も2015年から福島事務所を設けて、福島県内でのご当地エネルギーへの取り組みを支援しています。

日本中・世界中で始まっているこうした大変革を知っていただくためには、ISEP所長飯田哲也が企画・監修を務めた学習映画『日本と再生〜光と風のギガワット作戦』(河合弘之監督)を、ぜひご覧下さい。本日3月11日から、全国で自主上映が解禁されましたので、自主上映をご企画下さい。多くの映画サイトや評論家の方々に高い評価をいただいているとおり、ご覧いただいた方に、世界で加速している現実と日本の立ち後れ、そして皆さん自身に未来への希望を持っていただける映画です。

なお、当研究所は、4月から研究所を四ッ谷に移転し、そこは日本中・世界中のご当地エネルギーの人たちが集い、語り、協働することのできる開かれた場としてデザインいたしました。お近くにお越しのさいには、どなたでもぜひお立ち寄り下さい。

2017年3月11日
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長 飯田哲也

(2017年4月1日より下記に移転します)
〒160-0008 東京都新宿区三栄町3−9
電話 03-3355-2200